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Himeyuri ―魔法嫌いの元学園最強と、幼馴染の約束から始まる魔法学園譚ー  作者: 小鳥遊 千夜
第一章 幽霊少女編

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第52想 第52想 奇跡のシンフォギア


 三人はその音色に(いざな)われるように駆け抜ける。

 廊下の人混みや喧騒は気にならない。

 まるで世界が三人だけのために開けているかのように、自然と体が前へ進む。



 ――その先に、俺達を呼ぶ何かが待っている――


 燈也の心に確かな確信が(とも)(とも)る。遠く、微かに音が聞こえた。




 ずっと1人で眠っていた、夢を見ていた

 届かない夢を見ていた ずっと

 明けない夜をどれほど越えただろう

 呼んでる気がした 見えた気がした

 微かに光る この道の先には皆が待っているそんな気がしたんだ






 その歌声に、燈也たちは息を呑む。まるで胸の奥の記憶に触れるかのような、懐かしくも暖かい旋律。


「…これは……」

 怜花が目を(うる)ませ、小さく息をつく。





 例えこの身が消えたとしても

 繋いでくれる仲間がいるから

 夢は終わらない

 魂は続いていく、想いは紡いでいく





 ――歌は、彼らの胸の奥に直接響いていた。忘れていた何か、埋もれていた記憶、そして――ななの存在を確かに感じさせるものだった。




 夢の最後まで共に奏でよう

 この世には叶わない夢なんてないから





 暗い闇の中、歌声はさらに強く、力強くなる。彼らを呼ぶように、希望を示すように。


 誘われるように足を進めた先にあるのはバンド仲間達と練習した空き教室であった。だがその部屋には当然待っている人などいなかった――


「…そうだよ…な。いるわけないよな…」

 そう思いつつも燈也は心の奥で、あいつ――ななの姿を探す。もう分かっているはずなのに、それでも足は自然とその方向へ向かっていた。


「燈也さん…」

 怜花の声が、少し震えて聞こえた。


「悪い…なんでもない。よし、会場に向かおうか…」

 燈也は自分を落ち着かせるように笑みを浮かべる。胸の奥で、確かにななの存在を感じながら。


「はい、ななちゃんの分まで頑張りましょう。」

 怜花が小さく微笑む。瞳には、燈也と同じ覚悟の光が宿っていた。あの子のために、最後まで諦めない――その意思が確かに伝わってくる。


「私も全力でサポートするわ。」

 リエラも頷く。三人は、無言のうちにあの子の想いを背負う決意を共有したかのようだった。


「ありがとう、二人とも…」

 燈也は自然と笑みを浮かべる。拳を握り、心の中で誓う。あいつのぶんまで、絶対にやり遂げてやる。


 だが、その思いを三人だけが抱いていたわけではなかった。


「おいおい……オレ様達も忘れてもらっちゃ困るぜ?」

 後ろから、聞き慣れた悪友の声が響く。振り返れば、そこには――


「風間!それにお前らも…どうしてここに?」

 目に映ったのは、郷夜(ごうや)だけではなかった。流水(るみ)癒水(ゆみ)、バンドのメンバー全員が、確かな笑みを浮かべて立っていた。



「今日はライブでしょ?メンバーのアタシ達が来るのは当たり前じゃない。」

 流水は力強く胸を張る。


「思い出したのか…」

 燈也は驚きと共に目を見開く。


「ええ、だから駆けつけなくちゃって思って…」

 癒水も、自然な笑みを浮かべて頷く。


「そういうことだ」

 郷夜も両手を広げ、仲間たちの輪に入ってきた。


「お前ら…ありがとう!」

 燈也は感謝の気持ちを胸に込めて叫ぶ。


「礼なんてよせよ。オレ様達だって、自分がやりたいことをやってるだけだ。お前と同じでな」

 郷夜が軽くウィンクをする。その余裕の笑みに、場の空気が一瞬で温かくなる。


「あの子の為に何かしてあげたいのは私達も同じよ。」

 流水が柔らかく微笑む。


「私達も仲間ですからね。」

 癒水も穏やかに笑う。


「おまえら……」

 燈也は胸の奥が熱くなるのを感じた。仲間たちの視線と笑顔、そのすべてが、ななの想いの延長線上にあるのだと気づく。


 ――なな、お前の想い、ちゃんと俺達に届いていたぞ――

 ――だから今度は、俺達がお前に届ける番だ――


「よし、皆で最高のライブにしようぜ!!」

「おー!!!」


 腕を掲げる仲間たちの声が重なり、教室に力強く響いた。



次回 『53想 奇跡の魔法 〜夜空に奏でる序章』


ななの記憶を失っていた燈也、怜花、リエラ。

帝亜の言葉を手がかりに、失われた想いを取り戻した三人は、

歌に導かれるように、かつて練習を重ねた空き教室へと向かう。


――だが、そこにやはり“なな”の姿はなかった。


失われたはずの絆。

それでも、同じように記憶を失っていた仲間たちが、ひとり、またひとりと集まり始める。


これは、運命に抗った者たちが起こした奇跡なのか。

それとも、想いが繋ぎ止めた必然なのか。


ななのために――

彼女の願いを音にするために、バンドは再びひとつになる





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