表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Himeyuri ―魔法嫌いの元学園最強と、幼馴染の約束から始まる魔法学園譚ー  作者: 小鳥遊 千夜
第一章 幽霊少女編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/120

第22想 幽霊との邂逅〈プレリュード〉

 


 A班メンバー:、不知火燈也(しらぬいともや)加ヶ瀬怜花(かがせれいか)風間郷夜(かざまごうや)、リエラ

 探索場所:3階 大図書室


 三階にある大図書室は、夜になるとまるで誰もいない別世界のように静まり返っていた。

 


「しかし……高校生にもなって、お化け探しとはなぁ……」

 しみじみとぼやく燈也に、リエラがクスッと笑う。


「いいじゃない。宝探しみたいで、私は結構楽しいと思うわよ?」


「宝探しって……あのなぁ……」


 燈也は肩を落とすが、リエラはまるで遠足に来たかのように軽やかな足取りだ。(正確には浮いているが……)


 怜花もきょろきょろと棚の上を見上げながら、少し楽しそうに微笑む。


「でも……ちょっとわくわくしますよね。私は上の方を探してみます」


「おい、あんまり遠くに行くなよ」


 燈也が声をかけるが、怜花はにこっと笑って頷いた。


 すると、すかさず郷夜が前に(おど)り出る。


「大丈夫さ! 怜花ちゃんは、この白馬の王子様であるオレ様が守るからね!」


「真面目にやれよ。不審者とかいるかもしれないんだろ?」


 燈也が(あき)れた声を上げると、風間は両手を上げて降参ポーズ。


「ヘイヘイ……分かってますよ〜」


 しばらく四人は各々の担当区域を調べ始めた。

 懐中魔灯の光だけが、古い本の背表紙(せびょうし)に淡く反射する。


「うーん……別に変わった所はないなー。」


 燈也は少し離れた場所で棚の間を(のぞ)き込みながら、怜花に声をかけた。



「おーい、怜花。そっちはどうだ?」


「こっちも特には何も…。わわっ──!」


 そして、次の瞬間。


「きゃー!!」


 小さな車輪付きの踏み台がわずかに(かたむ)き、

 上に乗っていた怜花の身体がぐらりと揺れた。


 本棚(ほんだな)の上に手を伸ばしたまま、バランスを完全に失ったその体は──


「危ない!!!!!」


 燈也がすかさず駆け寄り、反射的に彼女の腰に手を回して抱き止めた。

 その勢いのまま二人は床に倒れ込み──


 燈也が上、怜花が下。


 至近距離(しきんきょり)で見つめ合う形になってしまった。


「いっ……痛てて……大丈夫か?」


 燈也が(うめ)くと、怜花は真っ赤になりながらも困ったように微笑む。


「だ、だいじょうぶです……ただ……この態勢はちょっと……」


 燈也の脳が一瞬フリーズする。


「えっ……あ、ああああーーーっ!?!?」


 慌てて怜花から手を離し、バッと距離をとる燈也。


「すまん!!! わざとじゃないんだ!!」


「あはは……大丈夫ですよ。私の不注意が原因ですし」


 怜花は胸元を押さえながら、恥ずかしそうに笑う。


「ほんっっっとうに悪かった……怪我はないか?」


「はい、ありがとうございます」


 そこへ、反対側の棚から郷夜が顔を出した。


「おい!今すごい音がしたけど、大丈夫か?」


 燈也と怜花は揃って()ねた。


「なっ……なんでもねーよ!!」


「そっ……そうです! なんでもないです!!」


 郷夜は怪訝(けげん)な顔をしたが、あえて深追いはしなかった。


「お、おう……? そうか」


 郷夜が肩をすくめた、そのとき。


「みんな来てっ!!!!」


 図書室の入り口側から、リエラの緊迫(きんぱく)した声が響く。


「今の……リエラか!? 行くぞ!」


 燈也はすぐさま走り出し、三人も続く。



 リエラは廊下を指差したまま固まっていた。



「リエラ、どうした?」


「い、今……白い人影が……廊下の向こうを横切ったの……」


 怜花が息を呑む。


「まさか……本当に幽霊が……?」


 郷夜は拳を握りしめ、目を輝かせた。


「よっしゃ! 怪しいヤツなら追いかけようぜ!!」


 燈也達は懐中魔灯を手に、廊下の闇へと走り出した。


「リエラ、案内を頼む。風間と怜花は反対側から向かってくれ、挟み撃ちにするぞ」


「分かったぜ!」「任せてください。」


 リエラが先導しながら、燈也の前を飛ぶ。


「燈也くん、こっちよ!」


 不知火燈也は懐中魔灯を握りしめながら、通信機のボタンを押す。


「こちらA班。B班、C班聞こえるか?」


 すぐにノイズ混じりの応答が返ってきた。


『何かあった?』


「ああ、リエラが怪しい人影が廊下を走っていくのを見つけた。現在追跡(ついせき)中だ。」


『了解よ。私達もすぐに向かうわ。A班はそのまま追跡を続けてちょうだい』


 リエラが廊下の角を指し、ひそやかに告げる。


「燈也くん。人影はあっち側に行ったわ」


「よし、風間達も向かっている筈だ。このまま追い詰めてやろう」


 その時だった。


「――見つけたぜ!」


 郷夜の叫びが響き、全員の緊張が一気に高まる。


「へへっ…怜花ちゃんにカッコイイ所を見せてやるぜぇ!」


 郷夜が勢いよく飛び出す――が。


「ぐへっ!!!」


 鈍い衝撃音(しょうげきおん)と共に郷夜が後ろに吹っ飛んだ。


 燈也が()け寄る。


「大丈夫か?」


「ああ、なんとかな。アイツ只者(ただもの)じゃないぜ…」


 怜花が心配そうに(のぞ)き込むと、郷夜は痛む腹を押さえながら眉を寄せて(つぶや)いた。


「…だが一つだけ分かったことがある…」


「姿こそ暗くて見えなかったが…なんか柔らかい感触(かんしょく)がしたぜ」


「は…??」


 燈也が呆然(ぼうぜん)とした表情で答える。


 そこへ別班から通信が入る。


『おーい!こちらB班。例の人影は見つかったか?』


「すまん…逃した。だがまだ遠くには行ってないはずだ」


『下の階へと繋がる道も全て抑えてある!このまま追い詰めるぞ!』


 緊張が校舎全体を包みこむ中、今度は帝亜から通信が飛び込んだ。


『こちらC班。不知火クン聞こえる?人影が現れたわ』


「場所はどこだ?」


『旧音楽室の方よ』


「分かった。俺達も向かう。」


 燈也は班全体を振り返り、短く指示を飛ばす。


「人影は旧音楽室の方にいるらしい。一度分かれて挟み撃ちにしよう。」


 郷夜も前のめりで頷く。


「なら、オレ様は階段から向かうぜ。」


 再び帝亜の声が響く。


『不知火クン、人影がそっちに向かったわ』


 その直後――


「あっ…燈也くん!いたわ!あいつよ!」


 リエラが指さす先、薄闇の廊下の中央に、人のような白い影が立っていた。


「待ちやがれ!!」


 燈也が走り出す。

 影は怯えたように後ずさりし、別の廊下へ逃れようとした――が、そこには郷夜達が構えていた。


「へへっ……無駄だ。もう逃げれられないぞ!」


 包囲が完成する。


「さぁ、観念して正体を明かしやがれ!」


 だが影は静かに身構えた。戦意を露わにして。


「大人しくする気は無いみたいだな」


 郷夜が前に出て拳を握りしめた。


「ここはオレ様がやる!へへ……」

 勢いよく飛びかかった瞬間――


「ひでぶっ!?」


 逆に吹っ飛ばされ、床を転がる。


「風間っ!リエラ、怜花、援護を頼む!」


「任せて」「やってみます」


 リエラの光が集束し、怜花が短く詠唱する。


 ≪拘束魔法(マジック・バインド)


 床から青白い鎖が立ち上がり、影の動きを(とら)える。


「うおおおー!!!」


 影が暴れ狂うが――


 ≪初級結界魔法 縛光結界(フォトン・シール)


 怜花が結界を展開し、影の動きを一瞬だけ止めた。


「今です、燈也さん!」


 最後は燈也のタックルが決まり、影は壁へ押しつけられた。


「捕まえたぞ!!」


 郷夜もすかさず飛びつき、腕を押さえ込む。


「コラ!暴れんじゃねぇ!」


 影がもがき、声を漏らす。


「触るな!」


 郷夜が振りほどかれ吹っ飛ばされる。


「くっ…」


 その時――怜花が息を呑んで叫んだ。


「皆さん、あれを!」


 人影を覆っていた白い布が床に落ち、影の正体が懐中魔灯に照らされる――


「こいつが噂の…幽霊!?」




 次回予告 『第23想  出会いの円舞曲』


夜の校舎で遭遇した“白い影”――その正体は、記憶を失った一人の少女だった。

自分が誰なのか、なぜ学校にいるのかすら覚えていないという彼女は、何かを恐れるように口を閉ざす。


保護を任された燈也は、この怪しい彼女の正体と目的を暴くことを決意する。

―――これは運命の導きか、それとも新たな災厄の呼び声か。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ