表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Himeyuri ―魔法嫌いの元学園最強と、幼馴染の約束から始まる魔法学園譚ー  作者: 小鳥遊 千夜
序章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/68

第1想 冷めない悪夢と運命の再会

          

  ここは科学よりも魔法が発達し


  魔法が当たり前になったもう一つの現代世界


  これは、魔法嫌いな主人公の夢と約束の物語

 

    ――俺は“魔法が嫌い”だ――




    ――もしもあの時…――




    ――俺が魔法なんて使わなければ――






 目を開いた瞬間、そこは白とも黒ともつかない無機質な世界だった。

 地平も空も曖昧(あいまい)で、命の気配は一切ない。


 神域。

 世界の根源に最も近いとされる場所。


 その中心で、巨大な扉が静かに(たたず)んでいる。

                                           

『……ありがとよォ。不知火(しらぬい)。テメェのおかげで“最後の扉”が開く……!』


 かつて友だと信じていた男が、地に()せた俺を見下しながら、歪んだ笑みを浮かべる。


 ――違う。

 ――こんなはずじゃなかった。


 叫ぼうとしても、喉から声は出ない。

 後悔だけが、胸の奥に沈殿していく。


 その時だ。一人の背中が立ちはだかった。


『今は無理でもキミの魔法はいつか沢山の人を護る力になる。……それまでは私が護るわ。』


 その言葉が、胸の奥の何かをえぐった。

 分かっている。届かない。届くはずがない。

 それでも俺は、必死に——腕を、伸ばした。


『先輩ッッーーー!!!!!!!!!』


 声が()き消えると同時に、世界がゆっくりと崩れ落ちていく。


 ――——かつての記憶は、今や“覚めることのない悪夢”となって俺を縛り続ける。

     この夢が終わる日は果たして来るのだろうか。―――




「……くん」


「――燈也(ともや)くん!!起きなさい!遅刻するわよ!」

 耳元で甲高い声が響き、俺は布団の中で顔をしかめた。


 季節は四月。桜の舞う朝。


 “不知火燈也(しらぬいともや)”。

 かつて“学園最強”と呼ばれ、Sランクにまで上り詰めた――元・天才。

 そして今は魔法を嫌い、授業をサボり、怠惰に生きるただの問題児だ。

 そんな彼を起こそうと、使い魔のリエラがせっせと声をかける。


「起きてってば!」


 しかし当の本人は布団の中で丸まったまま。

 リエラは小柄な20cmの身体で必死に揺らすが、びくともしない。


「はぁ……こうなったら仕方ないわね」


 ヤレヤレといった様子で溜息(ためいき)を吐きながら、魔導書を取り出し詠唱を始めるとリエラの身体から緑の光が溢れ出す。


天翔(あまか)ける星の精霊よ。私の呼び声に集い、具現化せよ』


幻想の聖鎚(ミラージュ・ハンマー)!≫


 眩い緑光(りょっこう)が溢れ、豪華な装飾の巨大ハンマーが生成されリエラが全力で振り上げる。


「さっさと……起きろぉぉぉぉーーー!!!」


 ドゴォォォォォン!!


 炸裂音とともにハンマーが命中した燈他が勢いよく飛び起きる。


「痛ってぇ…!何しやがる!?もう少しで永遠の眠りにつくところだったじゃねーかよ!!!」


「それぐらい元気なら大丈夫ね。さぁ文句言ってる暇は無いわよ!今何時だと思ってるの?」


 魔法を解除しながら、リエラは呆れ気味に言った。


「何時って……ゲッ!もうこんな時間かよ!?」


 腹部をさすりながら時計を見ると午前8時を過ぎている。

 このままでは完全に遅刻だ。


 燈也(ともや)は青龍学園に通う高校2年生であり現在はいとこの(さざなみ)家で世話になっている。目つきが悪く紺色の髪に赤のメッシュ。ブレザー型の制服の下にフード付きのジャージを着ている。


 その横に飛んでいるのが使い魔でありパートナーの”リエラ”だ。

 パステルグリーンの長髪、背中に背負った魔導書、頭のミニハットが特徴。


「ほら、早く」


「言われなくても分かってるってーの!」


 他愛(たあい)の無い口喧嘩をしながら学校へ急ぐ二人だが…


「きゃあぁぁぁ~どっ、どいてくださぁ~い!!!」


 朝の安穏(あんのん)を書き消すような女の子の悲鳴が突き抜ける。


「燈也くん、後ろ!!」


 リエラの切迫(せっぱく)した声に反射的に振り返ると、

 ホウキにしがみついた少女が、出鱈目(でたらめ)に飛び回りながら猛スピードで迫ってくる。


「んなっ!?」


 このままだと間違いなく直撃コースだ。


『くっ……衝撃吸収魔法(インパクト・ガード)!』


 反射で掌を突き出す。透明な膜のような魔法陣が瞬時に展開し、突っ込んできたホウキの勢いを鈍らせる。

 咄嗟(とっさ)だったこともあり完全に勢いを止めることまでは出来なかったが……


「ふぅ…」


 間一髪のタイミングで抱きとめるように受け止める。舞い上がった砂埃(すなぼこり)がゆっくりと地に落ちていく。


 燈也は砂を払いつつ、少女に手を差し出す。


「怪我はないか?」


 少女はハッとし、慌ててその手を取って立ち上がる。


「はい!あの……助けていただいてありがとうございます。ご迷惑をおかけしました」


 少女は申し訳なさそうに頭を下げる。

 少女は肩ぐらいまでの淡い赤色の髪に星型の髪飾りをつけており、着ている制服のデザインを見る限りどうやら同じ学園のようだ。


「気にすんな。お互い怪我も無かったわけだし……」


 すると丁度、学校の予鈴(よれい)が鳴り響く。


「おっと!のんびりしてる場合じゃねぇ…走るぞ。」


 燈也は慌てて少女の手を(つか)み走りだす。


「はっ……はい!」


 そんな二人の姿をリエラは目を細め見守っていた。


「おい!リエラも早く来いよ。」


 燈也に呼ばれリエラも後を追っていく。桜が舞い散る道を駆けてゆく三人の姿は物語の始まりを告げるかのようであった。



 

 

次回 『第2想 いとこの姉妹と愛すべき悪友』


かつて“学園最強”と呼ばれた少年・不知火燈也。

しかし今の彼は、魔法を嫌い、過去の悪夢から逃げる問題児だった。


そんな燈也はある夜、星空の下で幼なじみの少女・加ヶ瀬怜花と再会する。

止まっていた時間、交わされた約束、そして――もう一度向き合う夢。


これは、

魔法を嫌う元・最強と、星に夢を託す少女が紡ぐ学園恋愛ファンタジー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ