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Himeyuri ―魔法嫌いの元学園最強と、幼馴染の約束から始まる魔法学園譚ー  作者: 小鳥遊 千夜
第一章 幽霊少女編

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第16想  虹のカケラ

前回までのあらすじ


謎の少女・ななの未練は、生前にたった一度だけ交わした、姉との取り返しのつかない喧嘩だった。

謝ることも、想いを伝えることもできないまま命を終えた彼女は、その後悔を胸にこの世を彷徨っていた。


不知火燈也は、彼女の話を聞き、言葉では届かない想いがあることを知る。

そして燈也は提案する――音楽で気持ちを伝えよう、と。


ななの姉がかつて音楽を愛していたことを知った燈也は、彼女の心に届く音を奏でるため、バンドを結成する。メンバーが集まり、未完成なバンドは少しずつ形を成していく。



 陽光(ようこう)がゆるく差し込む教室。窓枠の向こうに小鳥の鳴き声さえ聞こえる静かな時間——

 そこへ、カッカッカと下駄(げた)を鳴らしながら妖狐(ようこ)神奈(かんな)先生がやって来た。


「今日は16年前の第二次魔法大戦についての授業じゃ」


 いつも通り古風な口調だが、授業となると声の張りが違う。

 金色の狐耳が美しい教師は、時折4本の尻尾をゆらしながら黒板に図を描いていく。


「わっち達が住む王国『ルーンレイア』は小さい国ながら、精霊と魔法によって豊かで平和な日々を過ごしておった。しかしその平和も東の強国である帝国軍が魔王軍と組んだことにより戦火に巻き込まれてしまうのじゃ」



 教室の空気が少しだけ重くなる。

 皆、魔法大戦の話は知っている。けれど、神奈先生の語り口はどこか生々しくて、耳を傾けずにはいられなかった。


「この戦いは更にエルフや人魚、竜、天使といった種族までも巻き込む前代未聞の大きな戦いじゃった」


 窓の外の風さえ止まったような静けさ。

 …ただし、ひとりを除いて。


(おっ、レア装備じゃねえか…!)

 燈也(ともや)は机の下でこっそりゲーム。完全に授業の内容が頭に入っていない。


「圧倒的な武力と科学の力を持つ帝国連合軍は破竹(はちく)の勢いで次々と国を滅ぼし、王国もまた窮地(きゅうち)に追い込まれていった。」


 神奈がチラ、と視線を流したとき——

(よし!必殺スキル発動ッ!)

 ゲーム機を激しく連打する。


「この絶体絶命(ぜったいぜつめい)の状況下で王国を勝利に導いた者達を――“七英雄(ななえいゆう)”と呼び…っと、何を遊んでおるのじゃ!!不知火!!」


「うぉっ!?——あちちちっ!!」


 バシュッ!!!


 机の下から赤い狐火(きつねび)が勢いよく()き上がり、

 燈也は慌てて椅子ごとひっくり返った。


「まったく…おぬしときたら……。授業中くらい真面目に聞かんか」


 神奈は深くため息をつく。

 狐の尻尾が呆れを体現するように、ふにゃりと()れた。


 ちょうどそのとき——

 キーンコーンカーンコーン。


「おや……?そろそろ時間じゃの。今日はここまでじゃ」


 先生は4本の尻尾を優雅に振りながら教室をあとにした。


 ***


 中庭。

 木漏(こも)れ日の中、燈也はベンチに倒れこむように座る。


「くそ~ひどい目に遭ったぜ…あの狐ババア……」


「もう!授業中にゲームなんてしてるからでしょ!」

 リエラが腰に手を当てて叱る。パステルグリーンの髪が太陽に照らされてきらめく。


「だってよー、あの戦争の話、眠くなんだよなぁ…」


「言い訳しない!」


 その横で、なながケタケタ笑いながら跳ねる。


「燈也は子供なのだ~」


「うるせ!お前にだけは言われたくねーよ!」


「なんだとー!?」


 ななは頬を膨らませ、両手を腰にあて仁王立ち。

 そのちっちゃな体で精一杯威嚇(いかく)してくるのがなんとも可愛かった。


 そんな騒ぎの最中、リエラがふと耳をそばだてた。


「ねぇちょっと待って。なんか向こうが騒がしくない?」


 三人が顔を向けると、校舎の奥のほうから人だかりとざわめきが聞こえる。

 風がぴりっと冷たくなった気がした。


(…なんだ?嫌な予感がする)



 校舎の奥——魔法実験室前。

 普段は静かなこの場所が、今日は異様なほど騒がしい。


「きゃあああ!」「やめろおお!」


 生徒たちが雪崩(ゆきなだれ)のように廊下へ飛び出し、右往左往(うおうさおう)していた。

 その中心で白衣姿の少女——如月愛紗(きさらぎあいしゃ)が半泣きになりながら走り回っていた。


「わわわわわっ、大変、大変です!! 本当に想定外の事態なんですーーーっ!!」


 いつもは冷静な彼女が、ツインテールを振り乱し悲鳴を上げている。


「おい、どうなってんだあれ…」

 燈也が眉を寄せて近づこうとすると——


「うわー助けてくれ!!」

「ひぃぃ!!離れてぇぇ!!」


 実験室の扉をぶち破り、黒い煙をまとった獣型のモンスターが何十体と姿を現した。

 赤い目を光らせ、地面を爪で引っかきながら生徒を追い回している。


「モ、モンスターがいっぱいなのだっ!?」

 ななが燈也の腕にしがみついた。


 リエラが険しい表情で前に出る。

「どうするの?このままじゃ怪我人が出るわ」


「厄介事はごめんなんだがな……」

 燈也はため息をつきながらも、前に歩き出した。


 それは、彼が結局いつも人を見捨てられない性分だからだ。


「グルルル……」


 一体のモンスターが怯える女子生徒を角へ追い詰め、牙をむいた。


「きゃああああ!!」


 次の瞬間——

 ズバァッ!!


 燈也の魔法で強化された蹴りがモンスターの側頭部(そくとうぶ)炸裂(さくれつ)し、壁へ叩きつけた。


「大丈夫か?」

「は、はいっ……!ありがとうございます……!」


 女子生徒は涙ぐんでお礼を言った。


 だがモンスターは息をつく間もなく、次々に実験室から湧き出してくる。


「くそっ……増えてきやがった……!」


「仕方ないな…」

 燈也は振り返り、二人に言った。


「お前らは下がってろ。危ねぇから」


「ななも戦えるのだ!」

 胸を張って答える。



「この数は一人じゃ危ないわ。皆で力を合わせましょう」

 リエラも魔導書を構え、燈也の隣へ。


 燈也は小さく笑った。

「……しょうがねえな。けど無茶だけはすんなよ」


 三人は息を合わせて前へ出た。


強化魔法(マジック・ブースト)


 燈也の周りに淡い青の光が集まり、筋肉の感覚が一段階跳ね上がる。

 身体が軽くなり、視界が鮮明になる。


「行くぞ……!」

 強化された蹴りと拳でモンスターを()ぎ払う。


『照らせ!』

≪初級光魔法 ルクス!≫

 なながひらりと手を振ると、指先から光の矢が連射されモンスターの足を貫いた。


『揺るぎなき誓いよ、雷光(らいこう)となって降り注げ。

 我が前に聖域を築き、悪しきものを退けよ。!』

幻雷の聖盾(ファントム・ヴェール)

 リエラの前に巨大な盾が生まれ、突っ込んできたモンスターを一気にはじき飛ばす。


 三人の攻撃がリズムのように交互に重なる。


「よし……雑魚は大体倒せたな」

 燈也がモンスターを殴り飛ばしながら息を整える。


「後は……あれだけね」


 リエラの視線の先。

 黒い瘴気(しょうき)をまとった、教室の天井に届くほど巨大な獣——

 おそらく実験事故の“核”となったボスモンスターがゆっくり姿を現した。


「ええいっ!!いくわよ!」


 リエラが魔導書を構え叫ぶ。


『祈りは光、誓いは刃。

 私の願いよ、その姿を槍として結べ。穿て――!』

神魔の(ディヴァイン・)幻槍(ミラージュスピア)

 光と雷が融合した巨大な槍が発現し、一直線にモンスターへ突き刺さる。


「行くのだぁっ!!白金(しろがね)先輩直伝…」

 ななは小さな体で地を蹴り、拳に光を集める。


≪白金流格闘術 伊吹(いぶき)!!≫

 光の爆発を伴う打撃がモンスターの腹をえぐった。


「トドメだっ……≪魔斬(マギ・ブレイク)≫!!」


 燈也が両手で魔力の刃を作り、一気に斬り上げる。『夢幻の断斬(マギア・ブレイカ―)』の簡易版だがその威力は十分だ。

 黒い巨体が悲鳴を上げて崩れ落ちた。


「やったわね!」

 リエラがほっと息をつく。


「見たか!これが修行の成果なのだ!!」

 ななが胸を張ってピョンと跳ねる。


「白金の技か……。流石、良い技だ」

 燈也が少し笑い返す。


「えっへん!なのだ!」

 ななのドヤ顔。可愛さで場の空気が緩む。


「さて、引き上げるかな」


 そう言って背を向けた——その瞬間。


「気を付けて!まだ終わっていないわ!」

 リエラの叫び。


 振り返ると、倒れたモンスターたちの黒い体が溶け合い、

 粘りつくような胎動(たいどう)をしながら巨大な異形へと合体を始める。


「こいつら……合体しやがった……」


 そして、新たな巨体の触手がうねり——


「ななぁ!!避けろ!!」

 燈也が叫ぶ。


 だが一瞬遅かった。


 《ズバッ!!》


 触手の渦がななの小さな体を吸い込むように巻き取ろうとする。


「燈也くん!!」

 リエラが手を伸ばす。


「くそっ……! うわああああっ!!」


 燈也とリエラも、ななを助けようと同時に飛び込んだ——

 だがその瞬間、怪物の中心に開いた渦のような歪みが三人を飲み込んでいく。


 空間が反転し、光が捻じ曲がり——

 世界が裏返るような感覚とともに、三人の姿は完全に消えた。


 残されたのは、破壊された廊下と、呆然(ぼうぜん)と立ち尽くす愛紗だけだった。


***


 ――柔らかい土の感触と、ほんのり甘い草の匂い。


 燈也はゆっくり(まぶた)を開き、思わず眉をひそめた。

「……いってて。……皆、無事か?」


 頭を押さえながら周囲を見回すと、近くでななとリエラが身を起こしていた。


「ななは大丈夫なのだ……。ちょっとびっくりしたけど」


 ななは葉っぱを頭につけたまま、ぽりぽりと(ほほ)をかく。

 その横でリエラが慎重に周囲を見渡す。


「私は平気。でも……ここは一体どこ?」


 そこは森のようで……だがよく見ると、木々の形も色も歪んでいた。

 葉は薄く光り、(みき)は脈打つようにゆらめいている。

 “自然のふりをした何か”――そんな印象だ。


 燈也は眉をひそめ、手のひらに残る魔力の揺れから状況を読む。


「あのデカいヤツに吸い込まれた時の感覚……たぶんここは“異空間”だな」


「異空間……」


「うぇぇ、また厄介なところに来たのだ……」


 ななが心細げに燈也の袖をつまむ。


「どうすればここから出られるのだ?」


「わからん。けど、じっとしててもしょうがねぇ。

 辺りを調べて、出口のヒントでも探すしかないな」


「そうね。変な気配もするし、まずは情報集めよ」


 三人は森の奥へ歩きはじめた。



 風景は静かだが、どこかで常に誰かが見ているような気配が(ただよ)う。

 葉擦(はず)れの音すら、意志を持って動いているようだった。


「ん……あれ見て!変な影がいるわ!」


 リエラが指さす先――

 黒い“丸い影”のような生き物が、木の陰からちらりと(のぞ)いた。


 目が合うと、その影はビクリと震え、慌てて逃げ出した。


「あっ……逃げたのだ!」


「追いかけるぞ!」


 燈也は反射的に走り出した。

 その横でななが呼吸を整えながら追いすがる。


 だが走っている最中、ななは燈也の腕を軽く掴む。


「なぁ、燈也……」


「ん?なんだよ」


「……さっき、どうして助けてくれたのだ?」


 息が少しだけ震えている。

 さっきの戦闘で、自分が吸い込まれそうになった瞬間――

 燈也が迷わず飛び込んでくれたことを、ななはずっと気にしていた。


「ななを助けなかったら、燈也までここに吸い込まれることはなかったのに……」


 燈也は一瞬走る足を緩め、視線だけをそらす。


「……決まってんだろ」


 少しだけ照れた声。


「仲間だからな」


「仲間……」


 ななの頬が薄く染まり、胸がじんわりと熱くなる。


 その空気に自分でも気づいたのか、燈也は耳まで赤くなりながら言葉を続けた。


「ほら、そんなことより。とっととこんなところから脱出しようぜ」


 照れ隠しの声に、リエラがくすっと笑う。


「はいはい。じゃあ急ぎましょう」



「……うん、分かったのだ」


 ななは小さく微笑む。

 少しだけ距離が近くなった気がした。



 前方を先に飛んで探索していたリエラが地面を指差し、振り返った。


「ねぇ、燈也くん。こっちに痕跡(こんせき)があるわ。

 たぶん黒い影……洞窟の方へ向かったみたい」


 燈也は頷き、表情を引き締める。


「油断せずにいくぞ」


 三人は慎重に足を進めた。

 森の奥には、ぽっかりと口を開けた洞窟が黒い穴のように広がっていた。


 洞窟の奥は広い空間になっていた。

 祭壇(さいだん)のような台座が中央にあり、その前で――黒い影が震えながら(たたず)んでいる。


 燈也が前に出る。


「よし、追い詰めたぜ」


 しかし次の瞬間。

 黒い影はふわりと浮かび、祭壇の上に(まつ)られていた“古びた石像”へ吸い込まれた。


 石像の目が、不気味な紅色(べにいろ)に輝く。


 ゴゴゴゴゴ……ッ!


 石が砕ける音と共に、巨大な腕が動き出す。

 黒い霧をまといながら、ゆっくりと三人に向き直った。


「石像が……動いた!?」

「まさか、憑依(ひょうい)して力を増幅させたのだわ……!」


 燈也は拳を握りしめ、にやりと笑う。


「向こうもやる気みてぇだな。

 ――なら、こっちも本気を見せてやろうぜ!」


「ええ! 存分に暴れさせてもらうわ!」

「いつでもOKなのだ!」


 異空間の奥で、三人は息を合わせて構えた。



「リエラは防御を、ななは少しでいい、足止めを頼む!」

 燈也が短く指示を飛ばす。


「分かったのだ!」

 ななが一歩踏み出し、構えた。


「無理はしないでね」

 リエラも優しい声をかけるながら魔導書を構える。


『照らせ!』

≪初級光魔法 ルクス!≫


 ななの放った光の矢が、一直線に巨大石像の脚へ突き刺さり、

 鈍い音と共に巨体の動きを一瞬止めた。



『揺るぎなき誓いよ、雷光となって降り注げ。

 我が前に聖域を築き、悪しきものを退けよ。!』

幻雷の(ファントム・)聖盾(ヴェール)

 巨大な盾が花のように咲き、今度は三人の周りを包み込む。


「サンキュー!」

 燈也は拳に魔力を集め、地面を蹴った。


「――あとは俺が!」


 魔力を(まと)った強烈な拳が、石像の腕を砕き散らす。

 だが――

 砕けた破片が、直ぐに元の形へと戻っていく。


「くそ……再生しやがる!」


 燈也は舌打ちし、今度は脚部に狙いを定める。

 魔力を纏った手刀で石の脚を粉砕したが――


 それも一瞬で元通り。


 石像は再生した腕を振り抜き、燈也を弾き飛ばした。


「――っぐ!?」


「燈也くん!!」

 リエラが悲鳴に近い声をあげた。


 燈也は魔力の壁を張りながら、転がりつつ体勢を立て直す。


「大丈夫だ……けど、このままじゃ埒が明かねえ」


「どこかに……弱点、弱点……」

 リエラは震える息を整えながら、石像を凝視(ぎょうし)する。


 そして――その瞬間、彼女の瞳がわずかに光った。


「……あったわ! 胸のコアよ! 中心から魔力の流れが伸びてる!」


「なるほど……でかしたぞ。リエラ!」

 燈也は嬉しそうに頷く。


「なら、……もう一度頼む! なな!」


「分かってるのだ!」


『照らせ!』

≪初級光魔法 ルクス!≫


 ななは全力で光の矢を連射し、石像の関節(かんせつ)を撃ち抜いて動きを止める。


「今なのだ!」


「サンキュー!」

 燈也は一気に加速し、右拳へ魔力を纏わせた。


「――これでも食らえ!!」


 渾身(こんしん)の拳が石像の胸のコアを正確に叩き割る。


 ――バキィィン!!


 光の破片が四散し、コアは完全に粉砕された。


 石像の動きが停止し、ゆっくりと崩れ落ちていく。



「今度こそ……倒したみたいだな」


 燈也が大きく息を吐いたとき、崩れた石像の奥から光が弾け――

 そこに“宝箱”が現れた。


「わっ……宝箱なのだ! 開けてみるのだ!」

 ななは目を輝かせて駆け寄る。


「罠は無いみたいだが……気をつけろよ」

 ななが慎重に(ふた)を開ける。


 中には淡く光る、水晶のような結晶が入っていた。


「これは……何なのだ?」

「魔力を増幅させる結晶……みたいですね」

 リエラが手でそっと魔力を流し、判定する。


「お、ならありがたく貰っとくか。何かの役に立つかもしれねぇし、後で先生にでも聞いてみようぜ。」

 燈也はポケットに水晶を仕舞(しま)った。



「でも、ここからどうやって脱出しましよう?」

「何か……手がかりがあればいいんだが……」


「ん……この装置は?」

 宝箱のさらに奥に、奇妙な魔導装置があった。


 ななが興味本位でボタンを押すと――


『み、みなさんご無事ですか!?』


 突然、小さな声が響いた。


「この声……外か?」

「通信機みたいですね!」

 リエラが嬉しそうに言う。


「おーい! 俺達はここだー!」

 燈也が声を張る。


『今、空間を繋ぎます! そのまま待っててください!』


 愛紗の必死な声が響き、ほどなくして転送用の魔法陣が足元に展開される。


 まぶしい光が(ひらめ)き――

 三人は元の学園の廊下へ戻っていた。


「ふぅ……やっと戻れた……」

 燈也が疲れたように肩を落とす。


「ご迷惑をお掛けして……本当に申し訳ありませんでした……」

 愛紗が申し訳なさそうに縮こまる。


「何が原因だったんだ?」

「じ、実験の失敗で……異界からモンスターが召喚されてしまってみたいで……す、すみません……」


「全くだ……まぁ、みんな無事でよかったよ」

 燈也は苦笑した。


「はぁ……だから言ったでしょう? 研究するときは慎重にしなさいと…」

 駆けつけた帝亜のお説教が始まる。


「うぅ……ごめんなさいです……」

 愛紗は肩をすくめる。


「次は気を付けなさい。……分かったわね?」

「は、はいです……!」


 帝亜はそれから三人へ向き直り、ふっと柔らかく微笑んだ。


「あなた達のおかげで大事にならずに済んだわ。ありがとう。

 後始末は魔法執行部でやっておくから、あなた達はゆっくり休んで」


「行くわよ、愛紗」

「はっ、はいです!!」


 二人は慌てて去っていった。


「さて……俺達も戻――」


「――って、なな! 後ろに何かくっついてるぞ!?」


「えっ?」

 振り向こうとしたななの背中に、丸い何かが張り付いていた。


「ビッ!!」


「ぎゃあああああ!?!?」

 ななが飛び上がる。


「こ、こいつは一体……!?」

 燈也がそっと引きはがすと、影がもぞもぞと動く。。


 ――あの異空間で見た“影”だった。




 次回予告 『第17想  Resonansce』


新たなる仲間を迎え入れた不知火燈也達。

だが、音を鳴らす前に立ちはだかる最初の壁――それは「バンド名」だった。


まだバラバラなメンバーたちは、名前を巡って激突しながら、少しずつ本音をぶつけ合っていく。

果たして彼らは、ひとつの名前の下に結束できるのか。


音を奏でる前夜、絆が試される――。


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