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Himeyuri ―魔法嫌いの元学園最強と、幼馴染の約束から始まる魔法学園譚ー  作者: 小鳥遊 千夜
第三章 演劇部再建編 

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第119想 最強の現実と、折れない夢

 コース中央。


 魔法執行部部長・高天原帝(たかまがはらてぃあ)搭乗する

 ≪ツクヨミ≫がゆっくりと振り向く。


 その視線の先には――


 演劇部部長・真条聖妓(しんじょうせいぎ)

 息は荒く、肩が上下している。


 帝亜が小さく肩をすくめる。


「まだやるの?」


 冷たい笑み。


「当たり前よ。正義は絶対に退かないんだから!」


「そう…なら……」


 ツクヨミの腕装甲がゆっくりと展開する。

 装甲がスライドし、内部から月光のような刃がせり出す。


「受けて立つわ。」


 聖妓は小さく息を吐き、照準を合わせる。


 《ベルダー・フスティシア!!》


 乾いた破裂音と共に弾丸が一直線に飛び――


 途中で軌道を曲げる。


 帝亜の死角へ回り込むように弧を描く弾。


 観客席がざわめく。


「曲がった!?」


 帝亜はわずかに眉を動かす。


「……小細工ね」


 ツクヨミの腕を一閃する。


≪ルナティック・ブレード!!≫


 弧を描いた弾丸を正確に切り裂き弾丸が爆ぜる。


 だが――


 その瞬間。


 聖妓の銃身が大きく展開し電磁加速コイルが青白く光る。


 帝亜の瞳が細くなる。


「……!」


 聖妓が静かに呟く。


「本命は――こっちよ」


 レール全体が発光し電流が走る。


 《ウェールス・ユースティティア!!》


 轟音と共に発射された一点集中の一撃。


 空気を裂きながら一直線に帝亜へ突き刺さる。


≪アストレア・フィールド!!≫


 ツクヨミがシールドを展開し攻撃を防ぐ。


 だが――


 聖妓の放った弾丸はシールドを突き破り、ツクヨミの肩を吹き飛ばす。


「くっ……!」


 その衝撃でバランスが崩れ帝亜の体が大きく弾かれる。


 ガードレール手前で強引に停止。


 観客席が一瞬静まり返る。


「帝亜が……押された?」


 煙が晴れる。


 ツクヨミは再び腕を構え


 ――次の瞬間。


 彼女の姿が消える。


「――え?」


 聖妓の視界から消え、その背後に迫る。


 低い声。


「惜しかったわね。でもこれで終幕。」


 聖妓が振り向くより早く、刃が振り下ろされる。


 《ルナティック・オーバーフェイズ!!》


 月光のような巨大な斬撃が聖妓の身体を吹き飛ばす。


 乗っていたホウキごとガードレールへ激突。


 実況席の吉良(きら)が絶叫する。


『決まったァァァァ!!演劇部ここまでなのかァァ!!?』


 観客席がざわめく。


「うわ…強すぎる……」


「やっぱり魔法執行部相手じゃ無理だろ…」


 帝亜が小さく息を吐く。


「演劇部のせいで余計な足止め食らってしまったわ…」


 残った補助機が静かに旋回する。


「でも、思ったより楽しめたし良い余興にはなったわね。」


 彼女は少しだけ口角を上げると、速度を上げ走り去っていく。


 そのコース脇で聖妓は膝を突いている。


「はぁ……はぁ……っ……」


 呼吸は乱れ、胸が焼けるように痛い。


 さっき受けた衝撃が、まだ体の奥に残っている。


 数字がゆっくりスクロールしていく。


 ……最下位付近。


 さっきまで必死に追い上げていた順位は、完全に崩れていた。


 観客席のざわめきが遠く聞こえる。


「演劇部もここまでか…」


「相手が悪すぎる、最初から勝てっこなかったんだよ……。」


 まるで水の中から聞くような、ぼやけた音。


 すべてが遠く、現実感がない。


 聖妓は小さく呟く。


「……ここまでなの…?」


 帝亜の姿が脳裏に浮かぶ。


 圧倒的な魔力。


 自分の攻撃は、確かに当たった。


 でも。


 それでも――


 倒せなかった。


 拳が震える。


 悔しさか、痛みか。


 それとも――


 諦めか。


 そのとき。


 スタジアムのスピーカーから声が響く。


「…部長!!」


 聖妓がゆっくり顔を上げる。


 メインモニターにはベンチで待つ演劇部のメンバーが

 身を乗り出すようにして、必死にこちらを見ている。


 そして――


 続く燈也(ともや)の声。


「何やってんだよ!!」


 その叫びが、まっすぐ胸に突き刺さる。


 聖妓の瞳が揺れる。


 燈也はフェンスを握りしめながら叫ぶ。


「舞台の真ん中に立つって言ったの、お前だろ!」


 言葉が刺さる。


 胸の奥の深いところに。


 聖妓の視界に、記憶がよぎる。


「……」


 今度は相沢(あいざわ)が叫ぶ。


「そうっスよ。俺たち、まだ幕下ろしてないじゃないですか!!」


 小松(こまつ)も続く。


「部長が立たなきゃ、演劇部は終わりです。こんな所で諦めていいんですか!!」


 観客席の中。


 仲間たちも必死に叫んでいる。


「主役が倒れてどうすんだ!!」


「聖妓さん、頑張って!」


 誰一人、諦めていない。


 燈也の声が、まっすぐ届く。


「勝てなくてもいい!!でも――」


 拳を握りしめながら叫ぶ。


「最後まで舞台に立てよ!!」


 スタジアムの空気が止まる。


 風の音だけが、コースを抜けていく。


 聖妓の瞳が揺れ

 震えていた拳が、ゆっくりと握られる。


「……そうね」


 聖妓は静かに立ち上がる。


 残っている装備は残り僅か…


 それでも――


 聖妓はふっと笑う。


「舞台は…」


 ホウキに乗り足の加速装置を起動させる。


「最後の一秒まで続くのよ。」


 実況席の吉良が驚く。


『立ったァ!真条選手、立ち上がったァァ!!』


 聖妓は小さく呟く。


 《ブースト・イグニッション!!》


 炎が爆発的に噴き出し地面を蹴り一気に加速。


 最下位から。


 それでも。


 それでも――


 真条聖妓は再び、走り出した!



次回 『第120想 最後の直線、譲れない夢!』


 第3走者のレースもついに終盤戦。

 各チームが最後の力を振り絞り、ゴールを目指して激突する。


 そして――終盤コーナー。


 諦めない演劇部が、順位を上げてくる。


 待ち受けるのは、魔法執行部にして主催者・高天原帝亜。

 最後の直線。

 再び意地と意地がぶつかる。


 舞台は――まだ終わらない。

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