第118想 魔法の才能ゼロ、それでも学園最強に挑む理由
粉塵の向こう。
魔法執行部部長、高天原帝亜が搭乗する、漆黒の巨体――《ツクヨミ》。
その前へ真条聖妓が躍り出る。
「あんたにこれ以上好き勝手はさせないわ。」
観客席がどよめく。
『出たァァ!!演劇部部長!!
真正面から止めに入ったァ!!』
吉良の絶叫が響く。
「あら、逃げてれば良かったのに……でもおかげで手間が省けたわ。」
帝亜が余裕の笑みで答える。
「フン、余裕ぶるのも今のうちよ!」
聖妓はワイヤーを射出。
――《マジック・アンカー》!
岩場へ打ち込み、ホウキに乗った聖妓は一気に加速し
ツクヨミの懐へ潜り込む。
――更に
《スモーク・カーテン!!》
白煙が爆ぜ帝亜の視界を奪う。
だがツクヨミの補助機が即応し三基は扇状に展開。
赤い照準線が煙を透過する。
解説の愛紗が静かに告げる。
『熱源と魔力反応を同時捕捉します。ツクヨミに視界妨害は通じません。』
ワイヤーが即焼き切られ補助機が光弾を放つ。
――《ルナティック・ホーネット》。
攻撃の衝撃で激しい閃光が迸る。
『おおっと!演劇部、万事休すか!?』
「まだよっ!!」
間一髪直撃を免れた聖妓が横から飛び出す。
だがその次の瞬間。
ツクヨミの腕が振られる。
――《ルナティック・ブレード》。
衝撃波で聖妓の身体が弾き飛ばされ。乗っていたホウキごと地面に叩きつけられる。
『うわあああ!!直撃!!
演劇部、吹き飛んだァ!!』
観客席が悲鳴を上げる。
演劇部の小松が叫ぶ。
「部長っっ!!」
客席の怜花は手すりを握りしめる。
「真条さん……!」
同じく観客席の、元演劇部員の黒子は唇を噛む。
「だから言ったのに……魔法執行部相手に勝てるわけないじゃない。」
土煙の中。
聖妓は咳き込みながら、ゆっくりと立ち上がり再びホウキに乗る。
膝は震えているがそれでも、目は死んでいない。
「くっ……まだ終わってないわ……!」
帝亜の声が冷ややかに落ちる。
「何故そこまで立つの?」
聖妓は睨み返す。
「決まってるじゃない。このレースは皆、夢を背負って頑張ってる。
その邪魔をするなんて正義じゃないわ!」
会場が静まる。
帝亜は一瞬だけ目を細める。
「私はルールに則って戦っているだけよ?
それに――」
「簡単に折れる程度の夢なら、どのみち叶わない。
ここで潰しても同じよ。」
冷酷な現実論を突き付ける。
聖妓は血が滲む拳を握りしめ前を向く。
「だったら証明する。
魔法がなくても、力がなくても……
折れない夢は潰れないって!」
その瞬間。
彼女は腰のホルスターへ手を伸ばす。
魔力装填式魔導拳銃。「クロス・ライトニング」。
通常の魔法使いのように術式を展開することは出来ない。
だが。魔力を“込める”ことだけは可能。
聖妓は静かに照準を上げる。
空中には静止する三基のドローン。
赤い照準が彼女を捉えている。
聖妓が引き金に指をかけた。
《ツェデック・マゲン!!》
魔力弾が一直線に走る。
だが速度は遅い、通常の魔導弾より明らかに。
帝亜がそれを鼻で笑う。
「ふふ…そんな遅い弾でどう証明するつもり?」
「フン。余裕かましてるのも今のうちよ!」
《ジャスティス・リフレクション!!!》
光弾が連鎖するように最初に出した停滞弾、更には岩壁等にも跳ね返り
ながら補助機の下部装甲へ直撃。
補助機の一基が火花を散らしながら墜落した。
「これはっ……!?」
帝亜の目がわずかに見開かれる。
『効いたァァ!!
補助機一基、撃破しました!!』
吉良が絶叫。
愛紗が即座に解説する。
『ツクヨミの補助機は正面装甲が厚いですが下部は薄い。
そこへ回り込ませるのが狙い、加えて普通の直線では帝亜部長程の相手では容易に避けれてしまう。
ですが跳弾なら見切りにくい。そこまで計算した上での攻撃でしょう。』
帝亜の目がわずかに細まる。
「へぇ……少しはやるじゃない。。」
聖妓は更に続けざまに撃つ。
二発、三発。
弾丸がツクヨミの胸部装甲へ着弾。
衝撃とともに光が弾ける。
だが、装甲は破れない。
「流石に、本体は固いわね……。」
聖妓が冷静にチャンスを伺う。
「こっちも反撃いくわよ。」
ツクヨミが腕を振り下ろし衝撃波を放つ。
《ルナティック・ブレ―ド!!》
「させないわ!」
《ツェデック・マゲン!!》
聖妓が停滞弾を撃ち盾代わりにするが完全には防ぎきれず吹き飛ばされる。
だがそれでも彼女は退き下がらず、ワイヤーを張り
ツクヨミの脚に引っ掛ける。
『おおっと!?演劇部、工夫で食らいつく!!』
だが出力差は歴然。
ワイヤーが弾け飛ぶ。
帝亜が静かに言う。
「いい加減邪魔よ。」
次の一撃が迫る。
「私は…まだ諦めない。」
銃を握り直し再び構える。
一歩、前へ。
舞台の中央に立つように。
実況席の吉良が声を上げる。
『凄い根性だァァ!!
学園最強を前にまだ立ち上がっているゥゥ!!』
衝撃の瞬間――
まだ、勝敗は決していない。
夢と現実。
正義と力。
その答えは、まだ舞台の上にある。
次回予告 『第119想 最強の現実と、折れない夢』
最強の現実に叩き落とされ、
順位は最下位。
それでも――
彼女は主役を降りない。




