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Himeyuri ―魔法嫌いの元学園最強と、幼馴染の約束から始まる魔法学園譚ー  作者: 小鳥遊 千夜
第三章 演劇部再建編 

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第113想 山頂決戦!第2走者の意地――!憧れの背中を追いかけて!

 岩場コース、最終勾配。


 急角度の上りと、その先に待つ鋭い急カーブ。


『ここが第二区間、最大の難所!

 ここを先に抜けるのはどのチームだ!!?』


 観客席が総立ちになる。



 先頭――

 魔法鉄道同好会・大井川炭彦(おおいがわすみひこ)


 コースに沿って敷設されたレールを、勢いよく進んでいる。


 そのすぐ後ろに魔法執行部・日向雄介(ひゅうがゆうすけ)


 雷を帯びた魔導トラックが唸りを上げる。


 さらに背後。

 魔法陸上部・真壁(まかべ)タケル。


 ただ一人、己の脚で食らいつく。


 まず動いたのは――魔法陸上部。


 真壁が深く息を吸う。


「……まだ、いける」


 足裏に力を込める。


『――持久の理よ、途切れるな。

 《エンドレス・ストライド》!』


 魔力が筋肉を包み込み、再加速。


 だが――


 岩場終盤まで安定を維持し続けた代償が、

 ここで牙を剥く。


 傾斜が増すにつれ、脚に鈍い負荷。


「っ……重い……!」


 足が岩に吸い付くように離れない。


 爆発的な加速力を持たない安定型。


 一歩、また一歩と踏み出すが、

 馬力勝負では分が悪い。


「悪いな、坂は馬力だ!」


 『――雷よ、駆動へ宿れ。!』

 《ボルト・エンジン》!!


 再び力強く、タイヤが岩を噛み砕きながら回転する。


 火花を散らし、強引に前へ押し出す。


 重量と馬力。純粋な出力差。


 ――魔法陸上部との距離が更に開いていく。


 観客席がどよめく。


「真壁、止まった!?」

「いや、粘ってる!」


 真壁は倒れない。


 だが呼吸は荒く、膝は震えている。


 それでも視線は頂上を捉えたまま。


 歩みは止まらない。


 最終勾配。


 ここからが、本当の意地比べだった。



 その、先頭チームが激しくぶつかる上空で

 一筋の影が滑り込む。


「――高度、安定。進路、クリア」


 無機質な声。


 鋭いエンジン音と共に

 フィギュア愛好会・土岐原(ときはら)ガンマの

 飛行機――アンノウンが駆ける。


 流線型の機体が、岩場上空を極低空で滑空する。



「最終勾配、対地高度三メートル」


 冷静に辺りを分析しながら操縦桿(そうじゅうかん)を倒す。


 最終勾配の“壁”が目前に迫る。


 地上勢は減速を強いられる角度。


 だが――空に勾配はない。


 土岐原が操縦桿を静かに倒す。


『――空域解放。』

 《スカイ・ライン》


 機体周囲の気流が整流される。


 乱れていた上昇気流が一本の“道”になり


 その道をアンノウンが滑らかに駆けていく。


 岩壁を無視して、直線上昇。


 まるで見えない坂を駆け上がるかのように。


 観客席がどよめく。


「飛んだぁ!?」

「いや、最初から飛んでるけど、あの岩場で加速とか操縦ヤバ過ぎだろ!」


 岩場最終勾配。


 地上勢が苦しむ角度を、


 アンノウンは、ただ越える。


 冷静に、正確に。


 そのまま頂上高度へ到達。


 順位表示が更新される。


 ――3位浮上。


 土岐原は表情一つ変えない。


「想定通りだ。」




 さらに中団から、静かに迫る影。


 占星術研究会・朝焼(あさやけ)セフィ。


 息を乱さず、星図盤(ホロスコープ)を胸元で軽く傾ける。


「……ほんの少しでいい」


 視線は空でも前走者でもない。


 “流れ”そのものを見ている。


『――揺らげ、確率の天秤。

 《リトル・フォーチュン》』


 上方の小石が、ほんの数センチ逸れ、

 崩れかけた足場が、わずかに持ちこたえる。


 劇的な奇跡ではない。


 だが――


 “微弱な幸運”が、連鎖する。


「いつの間に上がってる!?」

「セフィ、静かに怖い!」


 気づけば、順位を一つ、また一つと上げていた。


 そして――運命の最終カーブ。


 岩を削って作られた鋭角ターン。


 ほぼ直角。外へ膨らめば、そのまま岩壁に直撃だ。


 先頭は魔法鉄道同好会・大井川炭彦。


「減速は最小限だ!」


『――鋼よ、踏ん張れ!』

 《アイアン・レール》!!

 ML50が火花を散らす。


 重量級魔導機関車が

 加速を維持したまま突入。


 だが。


「く……っ、半径が足りねぇ!」


 車体が外へ大きく膨らむ。

 魔導機関車のボディが岩壁に擦れ、火花が爆ぜる。


「マズイ、加速し過ぎた。このままだとオーバーランだ!」


 外周の岩壁へ接触し、バランスが崩れる。


 そのすぐ背後。


 日向の魔導トラック。


「ちょっ、あのバカ野郎!?」


 だが膨らんだML50が進路を塞ぐ。


 回避スペースは、わずか。


「くそっ、避けきれねぇ――!」


 急いでハンドルを切るが避けきれず、

 互いの乗り物がぶつかり合う。


 バランスを崩した二台の車体は外へ弾き飛ばされ

 大きく減速する。


『な…なんと!?

 魔法鉄道同好会と魔法執行部まとめていったぞ!!』


 観客席が悲鳴混じりに沸く。


 その隙を――


 フィギュア愛好会・ガンマのアンノウンが

 内側を滑り抜ける。


「旋回、成功」


 流れるように1位浮上。


 さらに――

 占星術研究会、魔導工学クラブ、

 魔法山岳部、魔導料理研究会


 も次々とインを抜ける。


 そしてその後ろに

 演劇部・小松翔太(こまつしょうた)が中団後方で

 目の前で広がる大混乱に判断を迷っていた。


 一瞬、足が止まりかける。


(どうする……?)


 外は混雑。


 内は狭い。


 だが――


「僕に出来ることをするだけ。このバトンを絶対に部長まで繋げるんだ……!」


 ホウキを強く握る。


『――場面転換、守りを攻めへ!』

 《アース・バリア》


 先程のバリアを前方一点集中させる。


 周りの岩を固め、即席の安定ラインを作り

 自分だけが通れる幅をすり抜ける。


 失敗すればリタイア不可避の危険な賭け。


 だが、その作戦は功を奏し6位へ浮上。


 観客席から声が飛ぶ。


「小松も抜けた!?」

「演劇部、流れが来てるな!」


 小松の胸が激しく上下する。


 守りだけではない。


 一瞬の“演出”。


 それが、活路を開いた。



 バランスを崩した大井川が必死に歯を食いしばる。

「くそ、立て直せ、ML50!俺の相棒はまだ走れるんだ!」


 日向も雷を再点火し魔導トラックを立ち直させる。


「まだだ!ななみさんの前でカッコ悪い所見せられるかよ!

 ファンクラブ会長舐めんじゃねえ!!!」


 だが、失速は致命的。


 気づけば――


 2チームは中団後方へ。


 最終勾配を抜ける直前。


 暫定順位。


 1位 フィギュア愛好会(土岐原ガンマ)

 2位 占星術研究会(朝焼セフィ)

 3位 魔導工学クラブ(金城(かねしろ)ゴウキ)

 4位 魔法山岳部(岩道豪(いわみちごう)

 5位 魔導料理研究会(一柳一真(いちやなぎかずま)

 6位 演劇部(小松翔太)

 7位 魔法陸上部(真壁タケル)

 8位 魔法鉄道同好会(大井川炭彦)

 9位 魔法執行部(日向雄介)


 観客席が総立ち。


『大波乱!!トップ2チームが一気に落ちた!?

 これは試合が読めなくなってきました!!』




次回 『第114想 第3走者激突!部長対決、それぞれの正義を賭けて!』


岩場を越え、第2区間決着。


息を切らしながらも、それぞれがバトンを握る。


繋がれる想い、託される意地。


走者は――

第2走者から、第3走者へ。




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