第112想 第二走者・小松翔太、踏破せよ!絶望の岩壁エリア
森を抜けた瞬間――
視界が荒々しく開ける。
だが安堵する暇はない。
次なる舞台は、岩場地帯。
巨大な岩塊が乱立する正に天然の迷宮だ。
踏み外せば即減速、あるいは転倒。
速さよりも――
“踏破力”と“判断力”が試される区間。
実況・吉良の声が響く。
『各チーム、第2走者へバトン完了!
ここからは岩場エリアだ!!』
演劇部・小松翔太はホウキを慎重に傾ける。
「ここは守る区間……無理はしないようにしなきゃ……!」
『――堅牢なる土よ、盾となれ』
《土系防御魔法 アース・バリア!!》
落石を弾く防御障壁。
防御重視ゆえに進行速度は遅い。
一歩一歩、確認しながら進む。
焦りが胸を締め付ける。
「でも……このままじゃ前には出れない……!」
その横を豪快な声が裂く。
「ガッハハハ!!岩場なんて、俺たちの庭だぜ!」
声の主は魔法山岳部第2走者・岩道豪。
『――大地よ応えろ、傾斜を足場へと変えろ』
《クライム・グリップ》!
岩肌がせり出し、即席の足場が形成される。
ほぼ直角の岩壁を迷いなく直線で登っていく。
『凄いショートカットだ!魔法山岳部、これは強い!』
圧倒的、岩場適性。順位をどんどん上げていく。
そして――
低く、太い声が後ろで響く。
「……火加減は、強火一択だ」
魔導料理研究会・第2走者 一柳一真。
腕を組み、岩場を睨む姿はまるで年季の入ったラーメン屋の店主。
「半端な味は出さねぇ」
腰の鍋型触媒を叩く。
『――煮え立て、焦がせ、芯まで通せ!』
《ブレイズ・ボイル》!!
赤熱した蒸気が岩肌を包む。
湿った表面の水分を一気に蒸発。
滑りやすい箇所が乾き、踏み込みやすくなる。
同時に、熱気が揺らぎを生み、後続の視界を歪ませる。
「熱っ!?」
「なんで岩場が厨房みたいになってんだ!」
一真は眉一つ動かさない。
「足場は仕込みだ。
味を決めるのは踏み込みだろうが」
重心低く、無駄のない動き。
岩の凹凸を“刻む”ように進む。
魔導料理研究会は戸惑う周りの隙を突き、着実に順位を上げる。
前を行く演劇部を抜き、中団上位へ。
演劇部・翔太は魔法障壁で落石を防ぐが――
「くっ……全然進めない……!」
その横を一真が抜ける。
「守りだけの料理は売れねぇぞ?」
ぶっきらぼうに言い残し、前へ。
観客席が沸く。
「なんだあの店主感!?」
前方では――
そして現在トップで進むのは四チーム。
◆ 魔法執行部
◆ 魔法鉄道同好会
◆ 魔導工学クラブ
◆ 魔法陸上部
――――
先頭を押し上げるのは――
勿論優勝候補の魔法執行部・第2走者 日向雄介。
乗り物は――魔導トラック。
装甲厚め、車高高め。
最高速は並だが、馬力は段違い。
「細い道は苦手だが……押し通って見せる」
荷台の魔力炉が唸る。
『――雷よ、駆動へ宿れ。』
《ボルト・エンジン》!
青白い雷が車体を走る。
タイヤが岩を噛み砕くように回転。
ゴリ押し突破。
落石を弾き、段差を踏み潰し、
力任せに前へ出る。
「すげぇなんてパワーだ!」
観客がどよめく。
――その横。
汽笛のような音が響く。
「岩場だろうが鉄道は止まらない!」
魔法鉄道同好会・第2走者 大井川炭彦。
乗り物は小型魔導機関車――ML50。
赤黒い車体。分厚い装甲。
スピードはそこそこだが、とにかく頑丈。
「行くぞ、相棒!」
「――鋼の軌条よ、我が意志に応えろ!
《ロック・レール》!」
岩肌を縫うように短い光のレールが敷設される。
ML50が火花を散らしながら疾走。
段差を真正面から乗り越え、
岩を弾き、進路を強引に確保。
日向の魔導トラックと並走。
重量級同士のパワー対決だ。
その直ぐ後方には
魔導工学クラブ・第2走者 金城ゴウキ
乗り物は大型の多脚魔導機だ。
「出力、最大!」
「――駆動炉、臨界直前。
《フルパワー・アクチュエート》!」
機械脚が岩を踏み砕く。
精密さはないが、圧倒的な馬力。
岩場を“地形ごと制圧”して進む。
『先頭では激しいパワーのぶつかり合いだァァ!?まさに重量級バトルだ!』
一方。静かに、だが確実に追い上げる影が迫る。
魔法陸上部・第ニ走者 真壁タケル。
身体強化特化の耐久型だ。
「焦るな……崩れるな……」
「――持久の理よ、肉体を支え続けろ。
《エンドレス・ストライド》!」
爆発的な加速はないが守りを固め確実に進む。
跳び、踏み、登り、着地。
一切ブレないフォーム。
他チームが段差でわずかに減速する中、
真壁だけがリズムを崩さない。
岩場コースも中盤――
静かに、策士たちが動きを見せる。
「そろそろ“盤面”を動かすか」
ゲームクラブ・第2走者 小淵沢 リュウが呟く。
指先で空中に魔法陣を描く。
「――まずは牽制。↓↘→B。
《設置波動陣》」
岩場の一部が淡く発光。
先頭を走る日向のトラックが踏み込んだ瞬間――
地面がわずかに沈む。
「ちっ、ハンドルが取られる!?」
車体が跳ねる。
雷の出力が一瞬乱れる。
更にそこへ――
「準備、整った…」
魔法芸術部・第二走者 墨谷シン。
「――歪め、揺らせ、視界を欺け。
《フラグメント・ミラージュ》」
岩壁の影が変わる。
段差の位置が“ずれて”見える。
大井川のML50の進路にも影響が出るが強引に突破を試みる。
「視界不良!!だが俺の相棒は負けない!」
さらに――アイドルクラブ・第二走者 菅原アンズ。
「クールに決める。」
くるりと回り、植物魔法を放つ。
「――心拍上昇、視線集中!
植物系魔法!」
辺りの植物が根を伸ばし進行を妨害する。
観客も選手も視線を奪われる。
「相変わらずの塩対応。…だが美しい」
「ちっ……植物に足を取られる!」
先頭集団が続々と失速。
観客席がどよめく。
「あれは…卑怯だろ!」
順位が再び揺れる。
――――
その余波は中団にも及ぶ。
「さあ…次はお前らだ」
ゲームクラブのリュウが視線を向ける。
『――↓↑溜めB』
≪大地鼓動拳!!≫
しょうたの進路上に、設置技が展開。
「これを踏んだら終わりだぜ。」
同時に、シンの影が重なり視界が悪くなる。
「うわ……!」
だが、翔太は止まらない。
「――大地よ、守りを固めろ。
《アース・バルワーク》!」
土の盾が展開。
足元を厚く覆い、下からの設置技を遮断。
さらに盾を前方へ広げ、
幻影を破り“物理的に無視”して直進。
『おおっと演劇部!冷静に妨害を防いだ。見事順位を守りきっているぞ!』
翔太は歯を食いしばる。
「第一走者が繋いだんだ……絶対に倒れない!」
速度は出ない、でも崩れない。
他チームの妨害を耐え抜き、順位をなんとか維持する。
『現在の順位です!』
1位 魔法鉄道同好会 大井川炭彦
2位 魔法執行部 日向雄介
3位 魔法陸上部 真壁タケル
そして少し遅れて続く中団に
魔導工学クラブ 金城ゴウキ
魔法山岳部・岩道豪
魔導料理研究会・一柳一真
演劇部・小松翔太
召喚獣研究会・バルク
が並ぶ。
――――――――――
観客席がざわつく。
「鉄道トップだ!」
「執行部、まだ差はないぞ!」
「演劇部、守り切ったの熱い!」
岩場最終勾配。
上位三チームはほぼ横並び。
中団も僅差。
次の一手で、再び順位がひっくり返る可能性は十分にある。
そして――岩場コース、最終勾配と急カーブが迫る。
第二区間――クライマックスへ。
次回 『第113想 山頂決戦!第2走者の意地――!憧れの背中を追いかけて!』
岩場コース、最終局面。
立ちはだかるのは――
最終勾配と急カーブ。
攻めれば落ちる。
守れば抜かれる。
先頭では魔導トラック、機関車、多脚機が激突寸前。
そして小松も、覚悟を決める。
ここを越えなければ、
バトンは繋がらない――!
『第2区間クライマックス!!』
最後の壁を突破できるのは誰だ!?




