第110想 波乱の第一走者!!暴走と補正、先頭は譲らない
コースは森エリアに突入し様相を変える。
鬱蒼と生い茂る樹林帯。 枝が複雑に絡み合い、天井のように覆う。
視界は最悪。
実況・十文字吉良が声を張る。
『さあ来た!!難関・森エリア!!』
『ここはスピードよりも判断力!!
一瞬の選択が命取りだァ!!』
現在、先頭を走るのは魔法執行部・鏡膤斗。
魔導バイクを正確に操り、氷で作った道を最短ラインで進む。
その背後に不穏な人影が迫る。
ホウキに乗った魔法研究会・ドロテアだ。
背部に装着された実験装置の管が脈打ち、赤い光が点滅する。
ドロテアが口角を上げる。
『――未完成の理よ、限界を超えよ』
《オーバードライブ・プロト》!
装置に魔力を流し込むと
圧縮された魔力が噴射し一気に加速する。
森の枝を無視するかのような直線突入だ。
『な、なんだこの加速!!』
実況が叫ぶ。
装置から放たれる衝撃波で枝を弾き飛ばしながら
一瞬で膤斗の横へ迫る。
『これは凄い、魔法研究会!
怪しい装置で一気に先頭に躍り出ました!!』
「へぇ…やるね。」
膤斗が横目でドロテアを見ながら呟く。
ドロテアが恍惚の笑みを浮かべながら答える。
「ふふふ……これが理論よ」
――だが。
森の魔力が揺らぐ。
赤い光と、森の魔力が干渉。
装置の出力計が震え、メーターが危険域へ。
森は“自然物”。人工増幅装置とは波長が合わなかったようだ。
「……あれ?」
警告音。ビービーと甲高く鳴り
背部装置が熱を帯び始める。
「……計算が、ずれた」
遂には煙が噴き出す。
「ちょ、ちょっと待って、待って」
出力計が、振り切れ火花が散る。
次の瞬間――
爆ぜる。
「やっぱりぃぃ!!」
激しい閃光と共に落下していくドロテア。
だが、結界が自動展開し
透明な球体がドロテアを包む。
『おおっと装置暴発!!走行不能!!』
『魔法研究会、ここで無念のリタイアだー!!』
実況の吉良の声が響き、森に静寂が戻る。
観客席から即座に声。
「予想通りすぎる!」
ツッコミの嵐。
ドロテア、結界の中で寝転がりながら空を見る。
「理論は正しかったのに……
環境変数が多すぎるのよぉ……」
担架魔法が展開され、コース外へ転送。
膤斗は振り返りもせず走る。
「フッ…まだまだ甘かったな…」
先ほどの暴発の影響で
黒く焼けた地面から、まだ白煙が立ちのぼっている。
その“空白”。
誰もが一瞬ためらうその隙間へ――
飛び込むのは、ホウキに乗る魔法小説部・黒瀬ユウト。
「これは物語的に、逆転の流れだな!」
自信満々の声で
ホウキを加速させ、焦げ跡へ突入。
『――筋書きは塗り替える、脇役は退き、主役は前へ…』
黒瀬の周囲に、淡い金色の文字列が浮かび上がる。
『世界よ、俺を中心に回れ!』
《主人公補正!!》
風向きが変わり、枝が偶然のように左右へしなり
大木の根が、奇跡的に避けられ視界が開いていく。
「おお、道が開いた!?すげえ!これが主人公の力なのか!!」
観客がどよめく。
『魔法小説部!一気に順位をあげていく!!』
黒瀬は森の狭間を縫うように、最短ラインを駆け抜ける。
まるで世界そのものが彼を通すかのように。
「来た来た来た!やっぱ俺が主役だろ!」
――だが。
「読めている」
そう静かに呟くのは 占星術研究会・夜見ルナ。
ルナは減速せず、静かに星盤を展開し
指先で空中に円を描く。
『――星の導き、未来を示せ』
《スター・プリディクト!!》
青白い星図が森の上空に広がり
未来の断片が彼女の瞳に映る。
「三秒後、森が乱れる」
淡々とした宣言。
『占星術研究会、これは予知宣言なのか!?』
実況の吉良が震える。
魔法小説部、占星術研究会の後ろで
魔法芸術部・ユイがくすりと笑う。
「前には行かせないよ」
筆のような魔導杖を振る。
『――歪め、重ね、錯覚を深めよ』
《色彩魔法!カラード・ミラージュ!!》
虹色の絵の具のような魔力が空間に広がり
森の景色が二重に揺らぐ。
木々が重なり、距離感が狂う。
「うわっ…視界が乱れる」
さらに――
夜見の予知通りに三秒後。
魔力が乱れる。
すると体制を崩した黒瀬の足元に展開された減速魔法陣が触れる。
ゲームクラブ・上沢の罠だ。
「チェックメイトだ。」
ホウキの制御が遅れる。
「な……補正が、上書きされる!」
ホウキが横回転しバランスは崩壊。
黒瀬の体がホウキから落ちる。
「主人公なのにぃぃぃ~!」
ドサッ
自動で展開した
透明な魔力膜が彼を受け止める。
黒瀬は空を見上げながら呟く。
「……負けイベだったか……」
遠くで枝が揺れる音。
実況が叫ぶ。
『魔法小説部、走行不能!
残念ながらここでリタイアです!!』
観客席が揺れる。
「伏線回収早すぎだろ!」
物語は、容赦なく次の局面へ進む。
次回 『第111想 まだ、舞台は終わらせない――運命のバトンを繋げ!』
森を抜け、中盤戦が始まる!
炎を纏い、ホウキで突っ走る演劇部・相沢恒一!
減速トラップに阻まれ、仲間の声援だけが頼り――
「まだ……終われるかよ…!」
限界を超えろ!ロケット・ブースト・オーバーリミット発動!
中団から巻き返せ、演劇部の意地と誇り!
トップを争う魔法執行部、魔法陸上部、召喚獣研究会――
その激しい三つ巴の中で、バトンは無事につながるのか!?




