第108想 幕が開く、勝利への疾走――部活動設立選抜レース、開演!!
スタートエリア奥、一段高い場所に設けられたゲートが、静かに開く。
姿を現したのは、
このレースを主催し、同時に最大の壁でもある存在。
『さぁ、最後に奥から登場したのは優勝候補でもありレースの主催者でもある魔法執行部チームだ!』
空気がはっきりと変わった。
私語は消え、視線が一斉に集まる。
先頭に立つのは腕を組み、余裕の笑みを浮かべるのは魔法執行部部長、高天原 帝亜だ。
眼鏡の奥で、冷たい光が揺れる。
その背後には――
工藤英明、日向雄介、鏡膤斗。
いずれも学園屈指の実力者である。
彼女は一歩前に出て、マイクを取った。
「――それでは」
静かな声。
だが、不思議と場全体に通る。
「これより、部活動設立権を賭けた特別レースを開催する」
観客席が一斉に沸き上がる。
帝亜は、その反応を待つことなく続けた。
「まず、レース形式について説明するわ」
ざわめきが、徐々に収まっていく。
「レースはリレー方式、
指定されたコースを、チームのメンバーが一名ずつ走破する」
指先で空をなぞるように、淡々と。
「目標地点でバトンを渡し、次の走者がスタート」
「最終走者がゴールした時点での順位が、最終結果よ」
『なるほど!』
実況席の吉良が声を弾ませる。
『単純なスピード勝負じゃない!』
『チーム構成と戦略が、勝敗を分けそうですね!』
如月も頷いた。
『ええ。誰をどこに配置するか、チームとしての判断力が問われます』
帝亜は、さらに条件を重ねる。
「魔法、アイテム、魔導具、乗り物の使用もOK」
一瞬の間――
そして、会場が一気に沸騰した。
「もちろん」
「他チームへの妨害行為も許可するわ」
『おおっと!?』
吉良が思わず叫ぶ。
『これは何でもあり総合力勝負だァ!!』
帝亜は、指を一本立てて告げた。
「優勝チームには、部費三倍を支給する」
「そして――」
一拍。
「魔法執行部チームより上位に入賞したチームは」
「部活動設立を正式に認める」
歓声が爆発した。
帝亜は静かに、しかし挑発的に微笑む。
「越えられるものなら――」
「越えてみなさい」
『おおおおおッ!!これは白熱必至!!』
実況席の吉良が叫ぶ。
『主催者にして最強!魔法執行部が、最大の関門だァ!!』
十文字吉良が声を張る。
『さぁ主催者からの宣言で会場がヒートアップしてきた所で続きまして、
コース説明です!!ここはコース設計も担当した解説の如月愛紗さんにお願いしましょう!』
『はい。ええっと…、今回のレースは、学校の外周を基盤にした長距離リレーです。
全長は――約五百キロ。』
観客席がどよめく。
『ご、五百キロ!?校内レースとは思えない距離ですね!』
『圧縮結界で空間を拡張しています。見た目以上に距離があります』
魔導モニターにコース全体図が映し出される。
『まずは――校庭を緩やかに周回するメインコース。
ここはスピードと安定性が試される区間です。集団が最も密集します』
校庭エリアがハイライトされる。
『次に、校舎裏手へ抜ける“狭い森”。
視界が悪く、枝や根の障害物が多い。飛行系や小型機動が有利ですね』
召喚獣研究会やホウキ組に有利なセクションだ。
『その先は――入り組んだ岩場地帯。
高低差と足場の不安定さが特徴。パワー型や悪路適応型が力を発揮します』
魔法山岳部、料理研究会、鉄道同好会の名がモニターに表示される。
『そして最後は……』
画面が切り替わる。
一直線に伸びる、長大な最終ストレート。
『直線勝負区間。
妨害も遮蔽物もない、純粋な最高速の世界。
ここで再びスタートラインを潜ります』
吉良が唾を飲む。
『つまり――』
『バランス型か、特化型か。
総合力が問われるコースです』
愛紗はわずかに微笑む。
『事故率は高めに設計してあります。
特に森と岩場は、魔法干渉が起きやすい構造です』
『設計者がさらっと怖いことを言ったぁ!?』
観客が笑いと緊張を同時に抱く。
『ですが、ちゃんとフェイルセーフは組み込んでいます。
――たぶん。』
『それなら安心ですね。…えっ…たぶん!?』
スタートラインに第一走者たちが並ぶ。
夢のため。
意地のため。
そして、部活動再建という未来のため。
夢と意地を背負った走者たちが、バトンを握りしめる。
スタートラインに、各チームの第一走者が並ぶ。
張り詰めた空気。観客席のざわめきが、次第に静まっていく。
張り詰めた空気。
吉良が大きく息を吸う。
『――さあっ!いよいよ始まります!!
部活動設立を賭けたリレー・レース!
第一走者、スタートの瞬間です!!』
『――用意……』
一瞬の静寂。
『――スタート!!』
号砲代わりの魔力音が鳴り響いた瞬間、
全チームが一斉に飛び出した――。
魔力の奔流がコースを震わせる。
スタート直後、空気は一気に戦場へと変わった。
次回予告 『第109想 魔法と加速の戦場――部活動設立選抜レース!頂上決戦!』
混戦、妨害、奇襲――学園のルールを超えた戦いが今、動き出す!
果たして、頂点に立つのは――魔法執行部か、演劇部か、それとも――!?




