第104想 薬の代償と正義の銃弾
「クソ……まだだ……!」
≪獄・狂乱殺!!≫
無理やり出力を引き上げ、再び突進。
だが今度は――
支柱を蹴り、跳躍しようとした足がもつれる。
「……ッ!?」
体勢が崩れる。
燈也が確信する。
「薬の効果が落ちてるようだな!」
「……なら、勝機はありそうね。」
聖妓は銃を構え直す。
今度は支柱から距離を取り、撃てる角度を確保する。
「身体が追いついてない。
無理やり底上げしてるだけ…なら」
狂四郎は震える手を睨む。
血管が浮き、指先が痙攣している――
それでも、嗤う。
「ハッ!ふざけんな……
こんなところで……!」
よろめきながらも、彼は後退する。
その瞳に宿るのは、焦りと恐怖。
そして――
歪んだ決意。
狂四郎は、懐をまさぐった。
「……まだ、残ってる。」
取り出されたのは、
先ほどよりも濃く、黒ずんだ薬剤。
見ただけで分かる。
危険な“追加投与”。
「まさか、もう一本――」
燈也が眉をひそめる。
「ハッ……ハハ……!」
狂四郎は、笑った。
「限界?
知るかよ……!」
薬を握り締め、叫ぶ。
「強くなれるなら――
壊せるなら――
俺は、何だってやる!!」
狂四郎は、荒い呼吸のまま笑った。
「ハ……ハハ……まだ終わりじゃねぇ……!」
震える手で、薬に手を伸ばし
狂四郎は、迷いなくそれを打ち込んだ。
≪極限・超化殺!!!≫
瞬間、身体が異様に膨張する。
筋肉は限界を超え、血管は裂けそうに浮き出る。
「ガ……ァァァァ!!」
悲鳴とも咆哮ともつかぬ声。
≪獄・狂乱殺!!≫
最後のリミッターを解除し拳に魔力を集中させる。
「壊す!!
全部だァァァ!!」
狂四郎が嵐のように主人公達に突進する。
≪獄・魔塵殺!!≫
拳の嵐が、正面から叩きつけられる。
「今だっ!」
燈也が叫ぶ。
「分かってる!」
≪ツェデック・マゲン≫
停滞弾を展開し、動きを“止める”のではなく――
「足を削る!」
≪ベルダー・フスティシア≫
曲がる弾が関節を正確に撃ち抜く。
「グッ……!」
一瞬、狂四郎の動きが鈍る。
その瞬間を、燈也は逃さない。
≪攪乱魔法 アンチ・ヘイズ !!≫
視界が歪み、幻影が増殖する。
「チッ……どれだァ!?」
「全部囮だ」
燈也の声が、背後から響いた。
≪魔断!!≫
魔力の刃が、狂四郎の背中を深く斬り裂く。
「ガァァッ!!」
だが、それでも倒れない。
「まだだ……まだ……!」
狂四郎は無理やり身体を起こそうとする。
その時――
バキッ。
鈍い音。
「……?」
膝が、言うことを聞かない。
視界が揺れ、力が抜けていく。
(……動かねぇ……?)
「薬の副作用よ」
聖妓が静かに告げる。
「無理やり引き出した力は、必ず代償を払う」
「だっ…だまれ…てめぇらだけは…絶対に……」
≪グーテ・ゲレティヒカイト≫
雷を帯びた弾丸が、円を描くように展開される。
「これで……終わり」
≪ジャスティス・リフレクション≫
跳弾が、すべて狂四郎へと収束する。
「クソ……が……」
最後に燈也が踏み込む。
≪魔法断斬≫
魔力の刃が、狂四郎を叩き伏せた。
――ドンッ。
土煙が晴れた時、
そこに立っているのは、燈也と聖妓だけ。
狂四郎は仰向けに倒れ、微動だにしなかった。
「……終わったな」
燈也が息を吐く。
聖妓は銃を下ろし、静かに言った。
「力だけじゃ、正義には勝てない」
夜風が戦いの終わりを告げ、壊されかけた会場はなんとか守られたのだった。
次回 『第105想 役者は揃った――いざ、レースという名の舞台へ』
レース会場を守った夜の激闘――
その噂は、あっという間に学園中へ広がった。
「本気なんだな、あいつら……」
その覚悟に応えるように、
新たな部員と顧問が名乗りを上げる!?
そして助っ人として燈也も正式加入。
ついに、レース出場の条件が揃った。
明日、運命の号砲が鳴る。




