第99想 魔法が使えなくても、正義は撃てる
翌日。昼休みが終わりに近づいた校舎裏。
人通りの少ないその場所で、怯えた声が響いていた。
「や、やめてください……!」
壁際に追い詰められているのは、気弱そうな一年の男子生徒。
その前に立つのは、制服を着崩した不良二人だった。
「は?俺らにぶつかって置いて、タダで済むと思ってんのか?」
「治療費寄こせよ。」
肩を掴まれ、男子生徒の身体が揺れる。
――その時。
「……ちょっと」
鋭く、よく通る声が割って入った。
不良たちが振り返ると、そこに立っていたのは
長い金髪ツインテールを揺らした少女――真条聖妓だった。
腕を組み、真っ直ぐに睨みつける。
「二対一で脅迫?随分と卑怯なことしてるわね」
「あぁ?なんだ、この女」
「その子から手を離しなさい」
聖妓は一歩前に出る。
「今すぐ。――正義の名のもとに」
不良の一人が鼻で笑った。
「正義? ウケるんだけど」
「おい、コイツ知ってんぞ。確か魔法も使えないヤツだろ?」
「ギャハハ…マジかよ。魔法が使えないヤツに何が出来るってんだよ」
その言葉に、聖妓の目が細くなる。
「……魔法が使えないからって舐めないでよね!」
腰に下げていた短銃――
≪クロス・ライトニング≫を抜き放つ。
「なっ、銃――!?」
「安心しなさい。致命傷は与えない」
次の瞬間。
――バチンッ!!
乾いた音と同時に、青白い雷光が走る。
放たれたのは魔法ではない、雷属性の魔力を内蔵した非殺傷弾。
不良の足元を正確に撃ち抜き、地面に雷が弾けた。
「うわっ!?」
「ちっ……!」
怯んだ一瞬を逃さず、聖妓は距離を詰める。
「正義っていうのはね」
回転するように身を翻し、
銃のグリップで顎を打ち上げる。
「弱い者を踏みつけることじゃない!」
もう一人が殴りかかろうとした瞬間、
聖妓は足元に小型の円盤を投げた。
――パァンッ!
閃光と衝撃。
スタングレネードのような効果で、不良は目を押さえて倒れ込む。
「ぐあっ……目が……!」
聖妓は銃口を下げ、冷たく言い放った。
「次は先生でも呼ぶわよ。
「それとも……もう一回、“正義”を教えてあげようか?」
不良たちは舌打ちしながら後ずさる。
「チッ……覚えてろよ」
「クソ女……!」
逃げ去っていく背中を見送り、
聖妓はようやく銃を下ろした。
「……大丈夫?」
男子生徒に振り返る。
「は、はい……!」
「ありがとうございます……!」
「礼はいらないわ」
聖妓はそっぽを向く。
「悪いことをする人間が許せないだけ」
そう言って立ち去ろうとした、その時。
物陰から、一部始終を見ていた燈也が静かに呟く。
「……相変わらずだな」
魔法に頼らず、
道具と覚悟で悪に立ち向かう少女。
その背中には、
確かに“正義”の名が相応しかった。
次回予告 『第100想 弱きを踏み潰す者は、正義を許さない』
真条聖妓の“正義”により退けられた不良たち。
しかし、屈辱は終わりではなかった。
傷ついたプライドは、
より凶悪な存在を呼び寄せる――。
「女一人にやられた?
……面白ぇじゃねぇか」
不良たちのボスが動き、
聖妓に迫る報復の影。
魔法なき正義は、
暴力の連鎖を止められるのか。




