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僕はあなたをハッピーエンドへ連れていく  作者: 甲斐柄ほたて
巫女は聖なる炎にくべらるる
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密猟者は仮面を外したい

 僕はキャリオ様をかかえて広場を後にした。後ろで轟音がとどろいて、土煙があがっていた。おそらくレオンハルト様かの攻撃だろう。相変わらず無茶をする。


「大丈夫でしょうか……?」

『……』


 キャリオ様は心配なようだが。

 あいにく僕には返事はできないので無視した。


「クリ……。ごほん! 【沈黙の密猟者(サイレントポーチャー)】さん、そっちは上手くいったようですね!」


 声がしたので振り返ると、スクエラが走ってきた。一人だ。シャルロット様たちは置いて先に来たのだろう。

 それはいいが……。

 今、あやうく僕の名前を呼びかけなかったか?

 まさかとは思うけど、シャルロット様たちにバレてないだろうな。

 僕がじっとにらむと、慌てた様子で【鍵】を差し出した。【支援妖精アルテミス】を利用してつくったものだ。これで声を出すことができる。……と言いたいところだが、魔力がない。アルテミスの起動なんてとてもじゃないができない。


『……』

「ええと……、キ、キャリオ様もご無事でなによりです」


 なにかがおかしいのを察したスクエラはキャリオ様に話をもっていった。僕はキャリオ様をおろした。キャリオ様は立とうとしたが、へなへなとその場に崩れ落ちてしまった。


「だ、大丈夫ですか!?」

「すみません、腰が抜けてしまって」キャリオ様はふわふわした声でいった。「シャルたちは無事なんですか?」

「あ、ええ、はい。きっとシャルロット様たちはもうすぐいらっしゃいますよ。私は一足早く走ってきました」

「あの、でしたら、レオに加勢に行っていただけないでしょうか?」

「え?」

「まだむこうでサルトゥと戦っていて……」

「サルトゥ? ええと……」


 スクエラはちらりと僕をみた。僕は「行くな」と首を横にふった。サルトゥの相手はレオンハルト様一人いれば十分だし、それより僕の方がまずい状況だった。


 魔力が足りないのだ。


 キャリオ様を助けるのに夢中でそれどころではなかったが、このままだと僕はクリムに戻れない。呪いの仮面をはずすだけの魔力がないのだ。レオンハルト様の転移に乗じて、シャルロット様に【弾倉カートリッジ】を充電してもらっている。あとはそれをスクエラから受け取るだけなのだけど……。

 当然こっそり受け取りたい。キャリオ様に気づかれずに。悟られて、シャルロット様の耳に入った日には僕の名前はきっと【おしゃべり仮面】から【泥棒仮面】に変わるだろう。それは嫌だ。それならまだ【おしゃべり仮面】の方がまだマシというものだ。


 僕のアイコンタクトを受けとって、スクエラは冷や汗をかいた。


「ええっと、レオなら大丈夫ではないですか……?」

「万が一ということもあります。念のため―――」


 不意にキャリオ様は口を閉ざし、黙った。


「……? キャリオ様? どうかしましたか?」

『ふん。まずはよくやったと、礼を言っておこう』


 キャリオ様は目隠しをむしり取ると、不機嫌そうに言った。スクエラは驚きのあまり「ぅえっ!?」とのけぞった。キャリオ様……いや、天使はそれをみて、満足そうに腰に手を当てた。


『いいぞ、小娘。それが人間の正しい反応だ。それに引き換え、貴様は……、なんと反応に可愛げが無いことか』

『……』


 僕に可愛げなんか求められても困る。

 僕は天使を無視して、スクエラに手を出して、【弾倉】を催促した。


「え? なに? え、え……?」


 スクエラは完全に困惑した様子で、天使キャリオと僕を見比べている。


『小娘、私は天使だ。今、キャリオはお前たちを見ていない。秘め事はさっさと終わらせよ』

「え? 天使様? え? 秘め事……? えーっと……。あっ、ああ!」


 スクエラは急に合点したようにカバンから【弾倉】を取り出して僕に手渡した。すっかり忘れていたんだな。覚えていたら【鍵】と一緒に渡してくれるもんな。

 僕は【弾倉】を一つ使って魔力を取りこんだ。


『ふー……、助かった。ありがとう、スクエラ』

「う、うん! お安い御用よ!」

『アンタもな』僕は天使にウィンクした。『おかげで最後の最後でドジ踏まなくてすんだ。助かったよ』

『ふん。脅しておいて、よく言う』

『悪かったよ』

『……もう交代するぞ。行くならさっさと行け』

『ああ』


 天使キャリオは目を閉じた。僕はスクエラに手を振ると、走ってその場を後にした。

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