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僕はあなたをハッピーエンドへ連れていく  作者: 甲斐柄ほたて
巫女は聖なる炎にくべらるる
62/88

いつの間にか燃えている

「はー……、やっと着いたな……」

「ああ……」


 レオンハルトとリズリーはとある城の門を前に息を切らしていた。ここは火都から馬で数時間かかる位置にある迷宮だった。火都のギルドの管轄ではあるが、その中でも最も遠い位置にある迷宮だった。


「ったく、あの司教め。俺たちに面倒な案件ばっかりさせやがって……」

「そうぼやくな、レオ。とにかく迷宮のボスを倒そう」

「ああ、わかってるよ」


 レオンハルトとリズリーは巨大な玄関扉を開いて、中へ入っていった……。



 ***



「さっきのあれは何なの、クリム?」


 僕はスクエラの目の前で【沈黙の密猟者(サイレントポーチャー)】に変身して戦った。

 きっと聞きたいことが山ほどあるだろう。


 なぜあんな格好をしていたのか。

 僕の目の呪いはどうなったのか。

 なぜ仮面をしているのか。

 どうしてあんなに強い【魔剣アーティファクト】を持っているのか。

 なぜ皆には秘密にしているのか。


 さあ、何を聞いてくるかな……。


「いえ、そんなことより……」

『え?』

「目をみせて、クリム……」


 スクエラはよろよろと僕に近づいて、手を取り、頬にふれて、目をのぞきこむようにして、見た。見て、その目から泉のように、ぼろぼろと涙を流し始めた。


「よかっ、よかった……! 目、呪い、目が治って……」


 スクエラは膝から崩れ落ちながら、そう言った。僕の手と服をぎゅっと握りしめている。たぶん無意識だろう。体重をかけているのかと思うくらい、服を引っ張られた。

 僕はしばらく黙ってスクエラの背中をさすっていた。何か声をかける気分には、なれなかった。


 しばらくして、スクエラは涙をふいて立ち上がった。真っ赤に腫れた目で、元気に言う。


「あの格好は、シャルロット様を助けるためってことでいいのよね」

『うん』

「どうしてみんなには内緒なの?」

『僕はシャルロット様を助けたいだけなんだ。それだけ。他の人には知られたくないんだよ。頼られたくないし』

「……ふうん」

『わかってくれた?』

「ええ。私にはまだ言えない理由があるのね」

『えっ』


 正直、ぎょっとした。多少の違和感くらいは持たれるかもとは思ったが、今、この場で気づかれるとは思わなかった。

 スクエラは横目で僕をにらみ、続けた。


「その格好は他に誰が知ってるの?」

『シャルロット様、レオンハルト様、ベルさんには見られてる』

「クリムだって知ってるのは?」

『スクエラだけだよ』

「ふぅん……?」


 スクエラは努めて平静を装っているつもりらしかったが、口元がもにょもにょしていた。かわいい。僕はスクエラの頬をつつきたくなったので、【冷静カーム】をかけた。

 スクエラはくるりとそっぽを向き、肩をすくめた。


「まあいいわ。黙っててあげる。でも、タダで黙ってるのもねえ……」

『頼みごとがあるなら、善処するよ』

「あ、そうだ! それって、変身しないと、目の呪いは解けないの?」

『呪い?ああ、うん、そうだよ』

「じゃあ、ね、たまにそうやって変身してよ。そしたら、約束してくれたら、黙ってる」

『いいよ』


 僕は二つ返事で了承した。それくらいお安い御用だ。


「ホント?」

『ホントホント。なんでもないよ、それくらい』

「じゃあ、指切りしましょ」

『よく覚えてるねえ』

「当然よ、当然」


 もちろん、この世界に指切りなんて無い。スクエラが知っているのは僕が教えたからだ。やらなくなってから十年くらい経つのにまだ覚えていたとは。


 僕らは子供じみた方法で、小指をつないで約束をした。


 スクエラはそれ以上質問をしなかった。迷宮の外に出るまで、ずっとにこにこしていた。たぶん、気にならないというよりも、ただ質問することを忘れているだけだろう。そんなに僕の変身スタイルが気に入ったのだろうか。それなら、悪い気はしない。シャルロット様たちにはウケなかったみたいだけど、スクエラに刺さったのなら、嬉しい。


 スクエラはご機嫌で、鼻歌を歌いながら、つないだ僕の手を振り回している。


「ふふん、ふふ~ん」

『楽しそうだね』

「うん。クリムとこうして二人で散歩できるなんて夢みたいだわ」

『迷宮の中だけどね』


 倒した魔物の死骸を見下ろしながら言った。


『ねえ、仮面マスクとっちゃダメかな。これつけてると、魔力を消費しちゃうんだけど……』

「もうちょっと」

『はあ……』

「ふふふ。……ん、あれ、なにかしら?」


 スクエラに言われて顔を上げると、前方からごくごく小さなシルエットが近づいてきていることに気づいて、僕は足を止めた。


「どうしたの、クリム?」

『ウソだろ。最悪だ』

「?」


 スクエラは入口を飛び回っているシルエットと、僕を交互にみて首をかしげた。


「キャリオ様のつれてる小鳥エルちゃんじゃないの?あ、もしかして鳥、嫌いなの?」

『鳥一般は嫌いじゃないんだけど……。問題は中身かな』

「中身? たしかにクリム、よくつつかれてるけど……」

『あれの中身は天使だよ。だから嫌いなんだ』


 天使は僕をにらんだまま狂ったように飛び回っている。そのダンスの意味はわからないが、変身しているところをみられた。

 どう言いくるめたものだろうか。

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