表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕はあなたをハッピーエンドへ連れていく  作者: 甲斐柄ほたて
巫女は聖なる炎にくべらるる
61/87

禁忌

「クリム?」スクエラは目を丸くしている。「クリムなの?」

『そうだよ』


 ああ、しまった。自分で正体を明かしてしまった。

 目をみられたらバレるとは思っていたけど、僕の【人形ドール】を置いたり、準備したりすればあるいは……。いや、無理か。そんな暇なかったし。

 どっちみちバレるなら、意味がない。


 僕はスクエラを下ろした。


『危ないから、下がってて』

「危ないからって……、あんなの、倒せるわけ……」

『倒せるよ』


 僕は懐中時計の針を確認した。魔力残量は十分にある。

 迷宮主ボスを瞬殺したレベル6の魔物だろうと、八つ裂きにするに十分な魔力が。

 オクトパスは僕たちをにらみながら、迷宮主カメレオンの残りの身体を丸のみにした。ばりばりと音をたてて咀嚼する。魔力の補給は終わったようだ。

 僕は音声をアルテミスに返した。


『命令を受理しました。【反転重力アンチグラビティ平行サイドウェイ】を行使します』


 僕はオクトパスが触手を伸ばす前に、【反転重力】を使用した。

 オクトパスが宙に浮き、奥の暗闇の中に消えていく。すぐにどん、と巨大な質量が岩に叩きつけられる音が聞こえてきた。

 しかし、みしみしと何かが岩を削るような音が聞こえる。近づいてくる。

 でも問題はない。最初から【反転重力】で倒せるとは思っていなかった。ただ、あの触手から距離を取りたかっただけだ。


 隣でキリキリと弓を引きしぼる音が聞こえた。矢はわずかに弧を描いて飛び、刺さった先でまばゆい光を放った。暗闇の中にいたオクトパスを照らしだす。スクエラが三本目の矢を放った時、オクトパスが輪の中にあらわれた。予想通り、触手を岩肌につきたてて、僕たちに近づいて来ていた。

 ぎょろりと大きな目を回して僕たちをみる。


 僕はインベントリから【魔剣アーティファクト】を取り出した。

 同時に、オクトパスが触手を伸ばす。

 僕は【反転重力】の効果範囲に足を踏み入れ、オクトパスにむかって「落下」した。

 後ろでスクエラが息を飲んだのがわかった。たぶん、触手につかまると思ったのだろう。

 たしかに触手の動きは速い。しかし、いくら速くても魔力の動きに注意していれば、狙いも、攻撃のタイミングも、手に取るようにわかる。

 だから僕は触手の攻撃に合わせて【魔剣】で反撃した。





 七大魔剣フォービドゥンの一本、【紫電剣(ミョルニル)】。





 僕のとっておきの切り札だ。

 制御が難しいから、【支援妖精アルテミス】を起動しているときにしか使えないが、【赤炎剣(レーヴァテイン)】と同じで単純に火力が出る。やたらアクセルが敏感なだけで、そこに気をつければいいだけだ。七大魔剣フォービドゥンの中ではかなり使いやすい部類である。


 まあ、使用者への反動もあるのだが。


『【紫電剣(ミョルニル)紫火花スタティック】を使用します。【避雷針コンダクター】を展開しました』



 触手の軌道を計算して、触手が魔剣の刃をかすめた瞬間、僕は少しだけ【紫電剣(ミョルニル)】の力を使った。帯電する魔剣から致命的な電撃がはなたれる。

 難儀な武器である。電撃をふせげる【防壁ガード】で反動というか余波を殺さなければ、普通に攻撃した本人が死ぬ。慎重に威力を出さないようにしてもこうなのだ。使用してはならない剣として、指定されてしまうのも当然である。


 オクトパスの触手ははじけた。電撃が触手をつたい、根元まで走って、触手の内部の水分を蒸発させたからだ。触手は落雷を受けた樹木のように、縦に焼けて、爆ぜて、裂けた。

 僕は混乱しているオクトパスの顔の上に着地した。【反転重力】を調整して、ふわっと優しく。

 僕は【紫電剣(ミョルニル)】の刃先を、オクトパスの額に刺しいれた。


『警告!【轟崩雷落トールハンマー】を発動します。衝撃と軽度の感電に備えてください!』


 オクトパスは僕に気づいて、目をぎょっと見開いたが、触手を差し向けるより早く、僕は電撃を放った。

避雷針コンダクター】を展開していても相殺しきれない衝撃と電撃に襲われた。こればかりはどうしようもない。なにせ【魔剣】は僕が持っていなければならない。持っていなければ使えない。そして、手元から逆流してくる電撃だけは防ぎようがないのだ。身体の中にも魔術をかけて、死なないようにはしているが、痛みだけはどうしようもない。

轟砲雷落トールハンマー】は久しぶりに使ったが、この舌が妙に痺れる感じは慣れない。


 僕は、黒焦げになってピクリとも動かなくなったオクトパスから【魔剣ミョルニル】を引き抜いた。元々は迷宮主ボスの討伐任務だったが、ボスを食ったこいつを倒したわけだし、任務は達成したってことでいいだろう。思ったより魔力を消費してしまった。大赤字だ。しかし魔力より何より問題なことが一つあった。


「……ねえ、クリム、大丈夫?」

『うん、大丈夫。やっつけたよ』


 僕は、スクエラのところへ戻った。

 自分の目で彼女をみるのは、久しぶりだ。


「クリム、あの、今のは、なんだったの……?」


 そう、【沈黙の密猟者(サイレントポーチャー)】の正体がスクエラにバレてしまった。

 どう言えばいいだろうか……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ