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僕はあなたをハッピーエンドへ連れていく  作者: 甲斐柄ほたて
巫女は聖なる炎にくべらるる
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シャルロットにおまかせ?

 翌朝、宿から出ると、村長や村人たちが待ち構えていて、僕らの目の前で頭を下げた。


「勇者様、巫女様、皇女様方! どうか、どうか、この村をお救い下さい!」


 なんてこった。

 この旅は【預言巫女オラクル】であるキャリオ様を火都まで護衛する旅だ。余計な面倒ごとは避けるべきだ。だからこそ、シャルロット様たちを「シャルと呼ぶことにしよう」とか細かいルールを作っていたのに。どうやら昨日のケンカでおじゃんになったようだ。


「困りごとがあるのですか」キャリオ様はまるで躊躇することなく進み出た。「ならば、ぜひ私たちにお聞かせください」

「お待ちください、キャリオ様」


 レオンハルト様が割って入った。面倒ごとを避けるべき理由をあげる。


「目立つ行為は危険です。あなたを狙う人間はいくらでもいる」

「だから彼らを見捨てろと?」

「もし万が一のことがあっては困ります。キャリオ様、彼らのことは在来の【狩人ハンター】に任せておきましょう」

「それで解決しないから私たちを頼ったのではないのですか?」


 キャリオ様が言うと、村長たちは「その通りです」とばかりにしきりにうなずいた。キャリオ様はレオンハルト様の方をむいた。


「この方々のお話しを聞きましょう。それまでは私は動きません」

「……」


 レオンハルト様はむっと口をとがらせ、僕に近づいてきた。


「えっ、な、なんですか?」いきなりだったので僕は焦った。

「クリム」レオンハルト様は肩を組んでささやいた。「キャリオ様を説得できないか?」


 なんだ、そんなことか。僕はため息をついた。なにを悩むことがあるのか。答えなんかわかり切っているじゃないか。


「無理ですね」

「無理だって? どうして?」

「どうしても何もないですよ。キャリオ様は困っている人を放っておけない性格タチなのでしょう。話を聞くしかありません」

「話を聞くだけで終わると思うか?」

「まあ十中八九、解決を余儀なくされるでしょうね」

「ダメじゃないか」

「守ればいいでしょう。あなたの仕事ですよ」

「他人事だと思って……」

「あのですね、レオンハルト様」


 僕は彼を横目で軽くにらんだ。少々強く言わないとわからないようだ。


「キャリオ様が駄々をこねられた以上、これはもうフラグが立っているも同然なのです。あきらめてください」

「フ、フラグ? なんだそれは?」

「運命とでも思えばいいです」

「何を言っているんだ?」

「……一応、回避することも、不可能ではありません」

「おお!」

「ただし、キャリオ様ふくめ、この場にいる全員の不興を買います。それでもいいですか?」

「それじゃ意味ないじゃないか」

「はい。ですから、無理なのです。大人しく、僕たちも話を聞きに行きましょう。みんな、とっくに行っちゃいましたよ」

「……え?」


 僕が、誰もいなくなった広場を指さすと、レオンハルト様はぽかんと口を開けてそれを見つめた。僕はにっこりと微笑んだ。


「おめでとうございます。キャリオ様をふくめ、全員の不興を買いましたね」

「め、めでたくねえー……」


 レオンハルト様はがっくりと肩を落とし、深々とため息をついた。

 お守りも大変だな。



 ***



 この村もブレッドと同様に、迷宮ダンジョン攻略に来る【狩人ハンター】を相手に商売をして成り立っている。しかし、ここのところ迷宮の様子がおかしいのだと言う。


「誰も迷宮に入れないのです。熱くて……」と村長は説明した。

「熱い? それは普段の迷宮と異なる、ということですか」とキャリオ様。

「そうです。普段も熱の魔術がめぐる迷宮ではあるのですが、最近は異常に熱くなるようになっていて、中に誰も入れないほどなのです」

「その迷宮に入って、原因を調査しろ、ということか?」

「その……、その通りでございます」

「いつからだ?」レオンハルト様は険しい顔で腕組みをしている。「いつから入れなくなったんだ」

「二週間ほど前からです」

「火都にいる領主に頼めばいいだろう。もう報告したのか?」

「はい。報告済みで、今日か、明日には使いのものが戻ってくるはずです」

「なら俺たちの出る幕は無いだろう。領主に任せればいい」

「ですが! ですが、その……、近隣の村でも今回のように助けを求めることがあったのですが、その度に領主様はその、お忙しいようで……」

「門前払いにあうのか?」


 レオンハルト様がずばり言った。ここは村長の家で、いるのは僕たちと、村長の家族だけだ。村人は誰もいない。村長は生唾を飲み、こくりとうなずいた。


「……そうです。おそらく、使いの者は手ぶらで戻るでしょう。かんばしい知らせはないものと……」

「ふむ……」


 レオンハルト様はちらりとキャリオ様とシャルロット様に視線を送った。しかし、目が見えないためかキャリオ様は気づかない。一方でシャルロット様は気づいたらしい。ため息をついた。


「そうねえ、とりあえず使いの者の帰りは待つべきね。使いが本当に手ぶらで帰ったら……、手を貸すのもアリだと思うわ」

「いますぐ助ければいいんじゃないの? 善は急げって言うじゃない」とキャリオ様。

「キャル、あなたはもう少し全体を見て考えるべきだわ」

「どういう意味よ」


 シャルロット様はため息をついた。


「もし仮に今すぐに迷宮に行って、原因を調べて、解決したとしましょう。私たちなら、できないことはないと思うわ」

「そうね」

「その後で、領主のところへ行った使いが帰るわよね。そいつが手ぶらかどうかはいいの、どっちでも。問題なのは、『領主に助けを求めておきながら、その助けを待たなかった』ということなのよ」

「あー……」

「そんなの、村長は領主を信頼していません、って公言しているようなものよ。今はよくても、後々この村は一層苦しくなるわよ」


 シャルロット様は村長をじろっとにらみながら言った。みれば村長は真っ青な顔で震えていた。心当たりがあるようだ。近隣の村に似たケースでもあったのか。


「切羽詰まってるからって、後先考えないのはよくないわよ、村長さん。……ただ、使いが手ぶらで戻れば話は変わるわね」

「頼りにならない領主確定ってことよね! 助けてもいいのよね!」

「馬鹿ねえ」シャルロット様は微笑んだ。

「馬鹿ねえ!?」キャリオ様は立ち上がった。「いま、馬鹿って言った?」

「言った言った」シャルロット様は悪びれもせずくすくすと笑っている。「だって本当に馬鹿だもの」

「ぐ、ぐぬぬぬぬぬ……」


 キャリオ様は歯を食いしばってテーブルをゴンゴン叩いている。その目の前で、シャルロット様は「いいこと?」と言って指を振った。


「領主の助けなしで勝手に解決したら、『これくらいなら自力で解決できるんだな』って思われちゃうでしょ。それはそれで、村のためにもよくないし、なにより面白くないわ。私が面白くない。

 厄介なことが起こらないよう、皇帝陛下に管理を任されているはずの領主が、その責務を放棄しておいて許されるなんて、そんなの……」


 シャルロット様はニヤリと悪魔のような笑みを浮かべた。


「神様が許したって私は許さないわ」

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