第20話 クライン・サロンへようこそ
「なあに、おてがみ?」
ルイトは無邪気な笑顔でにこにこしながら、フローラに尋ねる。
「うん。そうなんだけどね……」
フローラが複雑な心情なのには理由があった。
幼稚園は王国の中にいくつもあるが、庶民が通うものと貴族の子どもたちが通う幼稚園は別物なのである。
(貴族の幼稚園はこの国でただ一つ、ルビリア国家学院付属幼稚園のみ)
つまり、ルイトの「事情」を把握している者の子どもたちのみが通うことになるのだ。
(万一、他の子どもたちがそれを理由にルイトを虐めたり、仲間外れにすることがあればルイト様が悲しむことになる)
険しい顔をしているフローラに、ルイトがぴょんぴょん跳ねながら声をかける。
「ねえ、ねえ! ぼくにもみせて~!」
「ええ……」
フローラは手紙を見せてみる。
もちろんルイトは字が読めないので、何が書いてあるかわからない。
しかし、その中でも唯一読める字があった。
「るいと……ぼくのなまえ!」
「え……ルイト様、読めるのですか?」
「うん! よめるよ! アデリナにおしえてもらった!」
(私が試験を受けている間に字まで読めるようになっていたのですね……)
愛おしさが溢れ出て、フローラはルイトをぎゅっと抱きしめる。
「フローラ~またぎゅーしてるー」
「だって、ルイト様が可愛いので」
「えへへ……ぼくかわいいの?」
「はいっ!」
そんな微笑ましい親子のやり取りをルーカスは眺めて見守っていた。
「ぼく、おべんきょうすきなんだ!」
「え……?」
その回答はフローラにとって意外な言葉だった。
彼に遊びは教えたことはあっても、勉学を教えたことはまだなかったからだ。
「ルイト様、お勉強したいですか?」
「うんっ!」
(幼稚園では文字の読み書きも教える。ルイト様が勉学がお好きならやはり通わせるのが良いのかも……)
庶民の幼稚園では主に字の読み書きと数字を教える。
それに加えてるルビリア国家学院付属幼稚園では、貴族のマナーに加えて絵や音楽などの芸術、王国史や外国語なども学ぶ。
成績も出るため、遊びだけでは通用しないのが、貴族の幼稚園である。
(ルイト様のご事情を考えると、通わせるべきか悩むけど……)
考えあぐねるフローラに、ルーカスが助言をする。
「通わせてみていいんじゃないか?」
「お父様……」
「ルイトくんの事情はいずれ本人が必ずぶつかる問題だ。それを自分自身でどう受け止めるのか、考えるのにもいい機会じゃないか?」
(いずれ知るところとなる出自の問題。まだ小さい彼が受け止められるのか心配だけど……)
フローラは拳をぎゅっと握り締めてルーカスに告げる。
「信じる。ルイト様なら、乗り越えられて強くなれると」
その言葉を聞いたルーカスは、深く頷いた。
そして、ルイトが幼稚園に向かう日があっという間にやってきた。
「ルイト様、忘れ物はないですか?」
「うんっ! たのしみ!」
制服に身を包み、リュックを背負った彼はウキウキしている。
スキップをしながら嬉しそうに歩いていく。
「ここが、ルビリア国家学院付属幼稚園……」
大きくそびえたつ時計台と三階建ての校舎に大きなグラウンド。
その門の前に二人は立った。
すると、向こうから何人かの子どもがやってくる。
皆、ルイトと同じ年の子のようで、胸のブローチがルイトがつけている「アサガオ組」のものだった。
「ルイト様、いってらっしゃいませ」
「う、うん……」
少し緊張しつつ、彼はゆっくりと同級生たちのもとへ向かっていく。
すると、ルイトを迎えた子の内、金髪の男の子が叫ぶ。
「あっ! こいつ! おやにすてられたやつだ!」
「え……」
金髪の子の発言にルイトの足は止まってしまった──。
久々の更新になり、すみません!
体調が大丈夫な限り毎日更新目指していきます!
幼稚園……波乱の幕開けになりました。
リアクションなどありがとうございます!!!




