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第18話 試験の結果は?

 翌日、朝早くからフローラはヴィルの指導を受けていた。

 国家育児専門師の最終試験に向けて、二時間分の講座を受ける。


「じゃあ、これからの時間は自習にする。僕はそこにいるから、何かあったら呼んで」

「かしこまりました。ありがとうございます」


 フローラは分厚い参考書とメモをとったノートを何度も見て、書いて、繰り返し呟き覚える。

 時には身振り手振りで、子どものあやし方や抱き方なども復習した。


 懸命に努力するフローラの姿を、ヴィルはじっと見守った──。



「では、試験始め!」


 試験官の掛け声と共に、フローラはペンをとって問題を解いていく。


 試験は二部構成になっていた。

 第一部は五十分間の筆記試験。第二部は三十分の実技試験だった。

 今回の試験に関して、公平さを保つために講師であるヴィルは試験に関わらない。

 代わりにプラチナ資格者三名が立ち合いのもと、フローラの試験と審査がおこなわれた。


(落ち着いて……これも、きちんとヴィル様から教えていただいたこと……)


 時折、フローラは呼吸を整えて心を静めながら、慎重に試験問題を解いていく。


(難しい……でも、ミスが許されるのは三問まで。間違いのないようにしないと)


 子どもの育児に関する資格とあって、合格ラインは非常に厳しい。

 百問あるうち、三問間違えた時点で不合格となってしまう。


(これは、きっと複数答えがある。一つと見せかけて、これも子どもには与えちゃだめ)


 乳幼児に与えてはならない食べ物の問題も、何度も復習したかいがあってすらすらと解いていく。

 ヴィルは表情こそ変えないものの、ペンを止めることなく問題を解いているフローラの様子に安堵した。



「終了!」


 掛け声と共に、筆記試験は終了した。

 やがて五分の休憩の後、実技試験が行なわれる。


「順調そうだな」


 水分補給をしていたフローラに、ヴィルが声をかけた。


「いえ、正直ドキドキです。でも、大丈夫だと信じています」


 ヴィルは微笑むと、耳元で囁く。


「頑張れ。お前ならいける」


 心強さを感じたと同時に、ドキッとする。


(不思議……ヴィル様に言ってもらえるとどうしてこんなにも安心するんだろう)



 五分の休憩はあっという間に終了した。

 続いての実技試験は、子どもの抱き方や緊急時の対処、そして食事の与え方を重点的におこなわれる。

 今回はルイトの子育て中ということも加味され、四、五歳頃の食事や遊びなどの試験となっていた。


(この頃の子どもは予期しない事故に巻き込まれることも多い。それに、反抗的になったりすることもあるけど、決して見放してはだめ。きちんと向き合うこと)


 ルイトの育児を想像しながら、フローラは実技試験をこなしていく。


「では、これで終了です」


 試験官が終了の合図をすると、全ての試験が終了した。

 時間を空けることなく、一人の試験官が入室し、実技試験の試験官へ筆記試験の結果を手渡す。


(いよいよ、発表される……)


 フローラはふうと大きく息を吐いて、目を閉じた。


 少しの沈黙が訪れた先に、試験官の声が響く。


「フローラ・ハインツェ。国家育児専門師ブロンズの試験の結果…………合格とする」


 その瞬間、フローラはハッと顔をあげた。

 すぐさま後ろに控えていたヴィルのほうを見る。


 すると、彼はフローラに駆け寄って力強く抱きしめた。


「よくやった」

「ヴィル様……」


 講師と生徒の感動的な抱擁の瞬間である。

 しかし、なぜだろうか。

 甘い雰囲気を感じさせるのは……。


 しかし、試験官はヴィルに咳払いで合図をする。


「殿下」


 呼ばれたヴィルは、大きく頷く。

 実は彼からフローラに伝えることが一つあったのだ。


「ルイトがこの隣の部屋にいる。いっておいで」

「ルイト様がっ!?」


 フローラは大きく目を開いて輝かせた。

 急いで立ち上がると、彼女は深々とその場で皆にお辞儀をする。


「ありがとうございました!」


 その言葉にヴィルも試験官も皆、笑顔で返す。

 そうして、フローラは隣の部屋へ急いだ。


(ルイト様っ! ルイト様っ!)


 会いたい気持ちが溢れて止まらない。

 何度、彼のことを思ったか。

 この五日間、会いたい気持ちをぐっと堪えて持てる限りの力で試験に臨んだ。


(早くっ! ルイト様に会いたい!)


 飛びいるようにフローラは部屋へと駆けこんだ。


「ルイト様っ!」


 そこにはアデリナと、ルイトがいた。

 突然の出来事に彼はきょとんとしている。


 フローラはなんとか口を開くが、こんな時になんて言葉をかけていいかわからない。

 待ち遠しかった想いとようやく会えた嬉しさ、それが大きすぎて言葉にできなかった。


「フローラ?」


 ルイトは彼女の名を呼んだ。

 その時、フローラの中で抑えていた気持ちが一気に溢れる。


 フローラはゆっくりとルイトに近寄ると、優しく抱きしめた。

 言葉はない。

 ただぎゅっと抱きしめる。


「ルイト様、戻りました」


 小さな声で彼女は呟く。

 その言葉を聞いたルイトは、フローラを抱きしめ返す。


 そうして、ルイトはフローラに伝えた。


「フローラ、おかえりなさい」


 見つめ合った二人は満面の笑みを浮かべた──。

ここまで読んでくださって本当にありがとうございます!!

フローラは無事にルイト様に再会することができました。

再会のシーンは作者としてもじんと来ました…。


一旦こちらで区切りなので、

もし気に入って下さったり、続き読みたい!、頑張れ!という気持ちで応援してくださる方は、

よかったらブクマや評価などをいただけますと励みになります。


また、少し書き溜めとお仕事の都合で更新お休みをいただくかもしれません。(6月中には再開します)

待っていてくださると嬉しいです。


また感想や誤字脱字などもしありましたら、ご報告いただけますとこちらも確認、お返事させていただきます。

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