第1話 旅立ち
はじめまして!みゅーずと申します。
小説投稿始めました。
異世界冒険ファンタジー×音楽の新ジャンルを開拓したいです。
私と同じく音楽好き、冒険ファンタジー好きな皆様、ぜひ序章だけでも読んでみてください!
メロディアシティは、朝霧の中にその優美な姿を浮かび上がらせていた。
楽音の国の首都として知られるこの街は、音楽と魔法が織り成す独特の雰囲気に包まれている。石畳の通りには音楽家たちが行き交い、各家の窓からは様々な楽器の音色が漏れ聞こえる。
特に今日の朝は、街全体がまるで新しい旋律を奏でるかのように賑わっていた。
エリアス・ハーモニアは、自宅の小さなバルコニーに立ち、冷たい朝の空気を吸い込んだ。黒髪が風になびき、深い青の瞳が遠くを見つめる。彼の心は、新たな冒険への期待と不安で満ちていた。
「いよいよ今日か…」
エリアスはそうつぶやきながら、家の中へ戻った。
彼の部屋は、楽譜や楽器で埋め尽くされている。ピアノの上には、彼が最近書き上げた新曲の楽譜が広げられていた。
彼はそれを見つめ、父親が残した言葉を思い出していた。
「音楽は魔法そのものだ。旋律を紡ぎ出すことで、人々の心を動かし、世界を変える力がある。」
エリアスの両親は、彼がまだ幼い頃に亡くなった。しかし、彼らの教えはエリアスの心の中に深く根付いていた。
朝食を簡単に済ませたエリアスは、急いで準備を整え、家を出た。
今日は彼の幼馴染であり、旅の仲間となるリリス・アルカナと会う約束があった。
彼女の家はメロディアシティから少し離れた静かな村、アルカニアにあった。
メロディアシティの喧騒を抜け、エリアスは広い草原を進んだ。空は青く澄み渡り、太陽の光が草原を黄金色に染め上げている。風が吹くたびに草がさざめき、その音はまるで自然の楽章のように感じられた。
エリアスがアルカニアの村に到着すると、リリスの家が見えてきた。
彼女の家は小さく、しかし温かみのある雰囲気を持っていた。庭には色とりどりの花が咲き乱れ、リリスの手入れの行き届いた魔法陣が所々に描かれていた。
「エリアス!」
玄関先で待っていたリリスが、彼を見つけて駆け寄ってきた。彼女の銀髪が光を反射し、エメラルドグリーンの瞳が輝いていた。
「リリス、おはよう。準備はできているかい?」
エリアスは笑顔で応えた。
「もちろん!」
リリスはそう言って、背負っていた大きなリュックサックを指し示した。彼女の表情には、少しの緊張と大きな決意が読み取れた。
その時、リリスの母親が玄関から姿を現し、微笑みながら二人に近づいてきた。
「エリアス、リリス。気をつけて行ってらっしゃいね。」
「ありがとう、お母さん。行ってくるわ!」
リリスは母親に抱きつき、別れを惜しむように微笑んだ。
母親は二人を見送りながら、彼らの無事を祈るように手を振った。
「よし、それじゃ、まずはあそこに寄るよ。」
「ええ。」
二人は、アルカニア村の外れにある丘へと向かった。
ちょうど、二人の村人が丘を降りていくところだった。
「おはようございます!」
エリアスとリリスは挨拶をしながらすれ違った。
「おはようございます!エリアス様、リリス。頑張っていってらっしゃい!」
村人たちは微笑んで答えた。
丘を登ると、彼らが子供の頃から遊び場にしていた古い樹が立っていた。樹齢数百年を超えると思われる大きな幹と広がる枝葉は、村のなかでもひときわ目を引く存在感を放っている。樹の根元には、今やすっかり風化してしまったが、かつて二人が彫りつけた名前がまだ残っていた。
樹の前に立つと、自然と心が落ち着き、身がぐっと引き締まる。
「ここに誓おう。」
エリアスは静かにヴァイオリンを取り出し、弓を構えた。
彼は目を閉じ、深く息を吸い込むと、弓を弦に滑らせた。
最初の音が静かに響き、風と共に広がっていった。音色は次第に力強くなり、丘の上に壮大な旋律が響き渡った。彼の演奏には、彼の決意と覚悟が込められており、その音は心に深く染み渡るものだった。
リリスは、その音楽に応えるように魔法陣を描き始めた。すると、音に合わせて光の粒子が舞い上がり、空中に美しい模様が浮かび上がった。星や月、音符が絡み合い、まるで二人の誓いを象徴するかのようだった。
演奏が終わると、二人は古い樹の根本を見つめた。そこには、先ほど浮かび上がった美しい模様が刻み付けられて、キラキラと輝いていた。
リリスは、その模様に触れ、再び強く言った。
「決して忘れないわ。必ず、伝説の旋律を集めてみせる。」
二人は手を取り合い、丘の上から広がる景色を見つめた。遠くには、まだ見ぬ冒険の地が広がっている。その向こうに、7つに分かれたという伝説の旋律が待っているのだろう。太陽が少しずつ高く昇り、二人の影を長く引き伸ばしていた。
エリアスとリリスは、互いに深く息を吸い込み、前を向いた。これから始まる旅がどれほどの試練をもたらすかは分からない。しかし、彼らの心には確固たる信念があった。
「行こう、リリス。」
エリアスは、彼女の手をしっかりと握り直した。
「ええ。エリアス。」
リリスは微笑み、頷いた。
二人は丘を下り、広がる世界へと一歩を踏み出した。その歩みは軽やかでありながらも、確実なものであった。
彼らの心の中で響く音楽が、これからの旅路を照らしていた。