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0話 魔法の存在しないこの世界で

ファンタジー書いてみたかったんですよね。

良ければ読んでってくださいー

原暦三百年、天裂けて、燃え立つ森林の中より緑の右目をもち、黄なる左目を有する男、忽然として出で来たり。言語異なるを語り、腰に佩ける刃を抜きて我らに向けたり。我らも亦之に抗ひて戦へども、悉く歯を立つる能はず。遂に我ら、彼を軍神と崇め奉り、其の技術、且つ佩く剣を後世に伝へんことを誓ひぬ。


このおとぎ話のようで本当にあった昔話は、俺がこの世界で生きていくための権利を剥奪せんとするようないわば呪いの話だ。

この世界は教養の次に剣が大切と言われるほどだった。そんな世界で剣の才能がないというのは文字通り迫害の対象であった。

原暦1800年、小さな街の領主の長男として俺は生まれた。

生まれ持った髪の色は両親から受け継いだ茶髪、顔立ちもどうやら父に似ていたという。しかし、俺の身体の1部には、たった1つ、されど1つだけ両親から譲り受けたもので無いものが宿っていた。俺の右眼と左眼は異なる色をしていた。つまり、オッドアイだった。

そして、その特徴はまさにかつての軍神の特徴そのものであり、俺は軍神の生まれ変わりとしてそれはもう大切に育てられてきた。

しかし、そんな幸せな時間もたった5年間で終わりを告げた。

俺に剣の才がないと分かると同時に両親は俺を見捨てた。

俺には剣の才がなかったのだ。それも驚くほどに。

領主の家と言えども小さな街の領主。決して裕福ではなかった。

そこで両親は10歳の誕生日に口減らしとして俺を山に捨てた。

最後の施しなのか両親は1本の剣を置いていった。

もちろん刃こぼれのしたボロボロの剣だった。

抵抗はしなかった。むしろ、両親の期待から一変した差別的な視線が苦しくて居心地が悪かったのだから好都合と言ってもいいだろう。


「寒い……」


この街は夏の暑さはあまり感じないが、冬になると夜の街を徘徊するだけでも凍えそうになるほど寒さを感じる。

寒さを感じ始め30分も経っただろうか。視界は段々と狭まり、意識も朦朧としてきた。眠くなってきたのだ。


あぁ、俺はもう死ぬんだ。


人間ある程度自分が死に直面すると案外足掻くことを辞めるらしい。その証拠に俺は寒さで感覚を失った身体を地面に倒し、その時を静かに待っていた。


思えば短い人生だった。俺はなんでこんなことになったんだろうか。


ふと脳裏に浮かんだのはおとぎ話に出てくる1人の男だった。軍神だ。

あいつのせいだ。あいつのせいで俺はもう死ぬ。


「っくしょー。いせでは……かな、ず……幸せに、なって……」


いや、違うだろ。そんなことを言いたいんじゃない。俺はそんなことを最期に言いたかった訳じゃないはずだ。俺の最期の言葉。


――そうだ。それだ。

俺が言いたかったのは。


「ちっくしょー。必ずお前を……軍神を殺してやる」


俺は最期の力を怒りに任せ、俺をこんな目に合わせた神、軍神への怒りに燃え上がった。同時に身体が熱くなり、全身から何かが巡っているような気がした。

身体が熱い。この全身に巡っている何かが体内から出たいというように暴走している。

しかし、どうすれば良いのか分からないし、これが何の力なのかも分からない。


『……えるのだ』


――なんだ。この声。


『唱えるのだ。我よ』


――誰だ。お前、唱える? 何を。


火球(ファイアボール)


「……火球」


俺は謎の脳に直接届く声に従い、火球と唱えた直後、めまいが起き、本格的に死を悟る。もう全身に力が巡ることはなかった。しかし、その代わりに今度は俺の周りが熱くなっているように感じたが、もはや気にすることでも無い。

できることなら来世に期待し、来世では必ずこの手で軍神を殺そう。

そう誓いを立てながら俺は静かに目を閉じた。



「ここは……」


目が覚めた。らしい。

俺は死んだはずなのだが、しっかりとした感触はあり、ベッドの上にのせられている。

どうやら、死ななかったらしい。

それとも期待していた来世というものだろうか。

そんなことを考えていると奥からノックとドアの開く音がした。


「失礼します。軍神様、本日も良い天気でございますね。今カーテンを開けますね」


軍神!? そこに軍神がいると言うのか?

ダメだ。まだ視界がはっきりとしていない。


「軍神様。旦那様も、軍神様が早くお目覚めになられることを心よりお待ちしております」


何? 軍神はそこで眠っているのか。好都合だ。早くそいつを俺に渡せ。

俺がそいつを殺す。


「花瓶のお花変えておきますね。今日は何にしましょうか。軍神様は何がお好きなんですかね?」


段々と足音が近づき、俺の隣でなり止んだ。

視界がはっきりとしてきた頃、こちらを覗き込むように見ていた彼女と俺の目が合ってしまった。

そう、目が合ってしまったのだ。

彼女は持っていた花瓶と花を落とし、床や自分が濡れてしまっているというのにそれを気にかけることもなく、ただ呆然としていた。


「だ、だ、旦那様にご報告しなければ!!」


彼女はカッカッカッと音を立てて走り去って言ってしまった。

それにしてもなぜ彼女は俺を見て走り去ってしまったのか。

いや、何となく分かっている。しかし、分かりたくなかった。

つまり、彼女は俺の目を見たんだ。いや、おそらくこの家のものに既に見られていた。

どうやら、俺は生きていたらしい。


興ざめだ。本当に軍神がいるのかと思ったのに。


そんなことを考えていたら、ドタドタと大勢の人が迫ってくるような足音が聞こえてきた。

どうやら、この部屋に入ってくる人達だろう。


「軍神様! お目覚めになられたのですね!!」


ドアをバタンと開けるなりこちらに白髪の老人が詰め寄ってくる。この人がこの家の主、つまりさっき言われていた旦那様なのだろうか。


「良かった。私は軍神様が10日もお眠りになられてどうするべきかと……」


老人とその後ろに立っている侍女の目には涙が浮かんでいた。

なんだかよく分からないけど、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

俺は剣の才もなければ軍神でもない。

だから早めに打ち明けておこうと思った。


「あの、申し訳ありませんが、私は軍神でもなければ剣の才能もございません。貴方たちの求める軍神はここにはございません」


「何を仰られますか。鏡を見てみてください」


老人が手で指さす先の鏡に俺が映っていた。たしかに俺だった。

つまりこの老人、俺を目の色だけで軍神と判断したんだな。


「軍神様、稽古は10日後から再開しましょう。それまでどうか休養なさってください」


そう言い残すと老人は背を向けて部屋を出ていった。


「どうかされましか? 軍神様」


侍女は呆然としている俺に、不安そうに声をかける。


「あ、えっと……。そうだ、今は原暦何年ですか?」


「はい、今は原暦300年でございます。軍神様」


「原暦300年!?」


原暦300年。

つまり、軍神がこの世界に現れた年。

となると、俺ははどうしてこんなところに、こんな時代にいるんだ。

それに俺はどうなるんだ。

このまま剣の才がないと分かると今度も捨てられるのか。

それに原暦300年ということは本物の軍神が現れているはずなんだ。

つまり、本物の軍神はこの世界のどこかにいるんじゃないのか。


「くそぉ、話が全然整理できない」


「大丈夫ですか? 軍神様」


「あぁ、ありがとうございます。大丈夫ですよ」


とりあえず分からないことは少しずつ判明させていこう。

まずはなんで俺が原暦300年の世界に来てしまったのか。

次に本物の軍神はどこにいるのか。

それによく考えれば好都合じゃないか。忌々しい軍神のいる時代に来たんだ。つまりは俺はこの手で軍神を殺すことができるんだ。

稽古が10日後と言われていたな。丁度いい、考えた所で答えはでないし、元の時代に帰ったところで俺は死ぬだけだ。なら、俺はこの時代で軍神よりも強くなってやる。

そして、いつか本物の軍神を殺してやる。


俺は軍神への勝手な復讐を今ここに誓う。

読んでくれてありがとうございますー

まだちょっと魔法の出番は少ないですけど、気長に待っててくださると嬉しいです

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