密着療法、それは世界を救う
「………」
魔獣の気配。
ヤツがすぐそこにいる。
見つかったら終わりだ。
だから絶対にバレてはいけない。
ドクンッドクンッと心臓の音がうるさい。
緊張だ。
プレッシャー。
こんな状況で緊張するのは当たり前だ。
すぐ目の前にいるルナの額に汗が見える。
「………」
しかし、俺の意識は魔獣には向いていなかった。
見つからないようにするために、ルナがさらに密着してくる。
むにゅん。
その度に柔らかい感触が、自分の顔に押しつけられる。
やべえ、めっちゃ柔らかいんだけど!
ていうかいい匂いもする!
すげえ!女の子すげえ!!!
頭の中は完全に馬鹿になっていた。
見つからないようにしないといけないし、普通ならこんなこと考えちゃいけないが、無理だ!
ここに来るまでに何度も背中に感じていた胸の感触や、緊張のせいでメンタルが限界に来ていた。
ああ、素晴らしい。
今までの疲れがとれていくようだ。
密着療法。
これは、鬱病に悩まされている日本人を救う画期的な治療法かもしれない。
そんな気持ち悪いことを考えていると、魔獣がその場を動き出し、離れていく。
なんとかやり過ごせたようだ。
「行ったな……大丈夫か、勇斗」
「いえ、色々とありがとうございました」
「は?」