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魔獣

「………っ」


緊張の一瞬。


目の前をケモノが通り過ぎる。


より息を潜め、その場でジッと待つ。


「………」


ドクンッドクンッと心臓の鼓動が速くなる。


振り向くな、振り向くな、振り向くな。


何度も同じ言葉を祈った。


見つかれば終わりだ。


だから振り向いたら終わる。


それは比喩でもなんでもない。


そのままの意味。


「………」


静寂。


願いが通じたのか、


ヤツは何事もなかったかのようにその場を通り過ぎた。


足音が遠くなっていく。


やがて十分に離れたのを確認してから、俺は「ふぅ」と息を吐く。


「なんとかやり過ごせたみたいだな……」


「ああ、なんとかな」


横にいる少女も安堵したらしく、ホッとした様子だ。


「でも、早く急がないと日没には間に合わないな。

こんなペースだとギリギリだ」


「おい、さっきまでの威勢はどうした?

魔獣なんてワンコみたいなもんだと言っていたお前はどこに行ったんだ」


ジト目で睨んでくる彼女。


ちょっとかわいい。


「いやだってさ……」


おでこに手を当てる。


正直、魔獣を舐めていた。


ここまでヤバいことになっているとは思っていなかったのだ。


遡ること数分前。



★★★



「魔獣、だって?」


「ああ、この領域内に徘徊している。


侵入者を見つけ次第襲ってくるんだ」


「襲ってくるって、そんな物騒な」


「いいや事実だ。

現に私がヤツらにやられたのだからな」


渋い顔で自分の傷口を見やる。


多分、襲われた時のことを思い出しているんだろう。


「あいつらは1匹あたりの力はそうでもないが、なんせ数が多い。


1匹に見つかればすぐに群れを呼ばれて囲まれてしまう」


「確かにそれだけ聞くとヤバそうだな」


どれだけ力のない「個」でも「数」を集められると厄介な敵になる。


ゲームなどでも舐めきっていた相手が突然数を増やして逆にボコボコにされるということはよくある話だしな。


「………」


とはいえ、正直言ってまだ半信半疑な自分がいる。


確かに彼女の話には説得力がある。


話がどうのではなく、嘘をついているようにはみえない。


それに実際にケガをしているのだ。


わざわざこんな現実味のない話をするメリットがない。


普通にケガの理由を言えばいいだけだ。


だから、話を信じようとは思う。


思ってはいるが、そう、現実味がないのだ。


魔獣にそもそも会ったことがないので、どれだけヤバいのかまだ測りきれていない感じだ。


だから、


「けどまあ、大丈夫だろう。


要は魔獣なんて、お前らでいうところのワンコみたいなもんだろう?


俺、昔よく犬と遊んでたから扱いには慣れてるんだ。


いざとなったら芸でも躾けてやるさ」


だから、こんな言葉が【まだ】出せる。


けど、俺はそんな甘い認識だったことをすぐに後悔することになる。


そうだ、なぜここが安全だなんて思っていたのか。


ここも彼女の言うところの領域内。


つまり、ここも徘徊してくる可能性があったのだ。


「え……」


自然とそんな言葉が出た。


意識したわけではない。


気がついたらそう呟いていた。


なぜなら、


意識は別のところに向いていたから。


視線の先。


目の前の、


魔獣(バケモノ)に。

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