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これが俺の日常。

これで本当に良かったのだろうか?


ふと、そう思った。


後悔はないかと聞かれれば、もちろんあると思う。


他の道を何度も探した。


何度も考えた。


でも、俺にはやはりこの道しかないのだろう。


ゴウゴウと燃え盛る野原。


枯れた木々。


干からびた大地。


多くの血が流れた。


いくつもの命が消えた。


それでも、俺は前に進む。


全てを犠牲にしてでも。


いつかの君の言葉を信じて。


そう、全てはあの日からーーー






★★★






人には、何かを犠牲にしてでもやらなければならない時がある。


みんなは、そんな経験はあるだろうか?


僕には、毎日ある。


めんどくさくても、嫌でもやらなければならないことが。


ーーーて


それは苦しいものかもしれない。


でも、やらなければならない。


        ーーーろ!ーーーろ!!


いや、やらなければならないとかやりたくないとかの前にやらざるを得ない。


いやだってそろそろ限界だしマジでヤバイし息できないしタイムタイムタイムッ!!!


バンバンバンッ!と降参を示すためにベッドを叩きまくる。


「起きろ起きろ起きろおおおおおおおおおおおおお!!!」


女の子とは思えない叫び声を上げながら枕を俺の顔面に押し付けてくる我が妹。


いや気づいてないんですけど!!?


もう起きてるよ!


お兄ちゃん、起きてるよ!!?


むしろ永遠の眠りにきますよん!!?


誰か助けてくだあああああああああい!!!


「あ、おはよう!お兄ちゃん!」


大きな川の向こうで死んだ爺ちゃんが手を振っているのが見えかけた頃、ようやく俺が起きていることに気づいたのか枕をどけられた。


「おはよう、下手したらエターナルおやすみグッナイになってたけどな」


「あはは!なにそれ!!


もう朝ごはんできてるから早く降りてきてね」


「は~い」


バタバタと階段を降りていく我が妹。


彼女は瑠璃(るり)


毎朝デンジャラスな起こし方をしてくれる俺のデンジャラスな妹だ。


両親は共働きで朝から家におらず、朝は毎日こうして起こしに来てくれる。


我ながらよく出来た妹だ。


もちろん、朝の殺傷能力MAXな起こし方以外は。


「ふぅ、今日もいい天気だ」


カーテンを開けて窓から見える青空を拝む。


俺の名前は檜山勇斗(ひやまゆうと)


高校2年生だ。


「ん~~」


朝日を浴びながら伸びをする。


いつも通りの朝、いつも通りの日常。


俺は、普通が好きだ。


みんなよりも優秀になるとか、そんなものは興味ない。


毎日同じような日々が続くのが幸せなのだ。


「よし、今日ものんびり過ごすぞ」


平凡な1日。


今日もがんばろう。





★★★




「お兄ちゃん、今晩は何食べたい?」


登校中、瑠璃が話しかけてきた。


「ん~、オムライスで」


「りょーかい!

あ、そういえば玉ねぎが切れてたんだった。

お兄ちゃん帰りに買ってきて~」


「え~、めんどくさくない?」


「ヘイヘイ、マイブラザー」


なんか急にラップ調でYo!Yo!し始めるマイシスター。


「マイブラザー、玉ネギ買ウ。ミー、料理スル。OK?」


外国人風だけど全然英語じゃねえじゃねえか。

といったツッコミは置いといて。


つまりは、ギブアンドテイク。


俺が玉ねぎを買うという労力を払い、代わりに瑠璃が料理をすることで、役割を分けようということなのだろう。


まあ、いつも瑠璃には世話になってるし、そのくらいはいいだろう。


「OK!マイシスター、料理スルゥ、ミー、玉ネギ買ウゥ。OKヨ!」


「は?なにそれダサ」


「いやあなたが始めたんですがッ!?」


と、その時、前方に見える家から「いってきまーす」という声が聞こえてきた。


ちょうど家を出るタイミングだったらしい。


中からは、見知った人物が現れた。


「あ、勇斗と瑠璃ちゃんだ!

おはよう!」


同じように「おはよう」と返す俺と瑠璃。


彼女は、山村(やまむら)(つむぎ)といって、近所に住んでいるいわば顔馴染みだ。


「あ、瑠璃ちゃん、リボン解けそうになってるよ」


「おー、ありがとうなのだ」


慣れた手つきでリボンを結びなおす紬。


そしてそのまま歩き出す。


紬とは小さい頃からよく遊んでいた仲だった。


今の通り世話焼きで、瑠璃だけでなく、場合によっては俺にまでお節介を焼いてきたりする。


まあ、嫌いじゃないけど。


だって可愛いし。うん。


「そういえば、最近この辺に不審者が出てるんだって。私たちも気をつけないとね」


「へえ~」


「へえ~って、他人事みたいにいって」


「だって俺帰宅部だし、割と早い時間に帰るぞ?


それに俺は男だし。


多少変なやつが現れても大丈夫だろ」


「まあ、それはそうだけどさ」


「それよりも、俺はお前の方が心配だぞ。


部活で遅くまで残ってるんだろう?」


「私は大丈夫だよ、友達と一緒に帰ってるし」


「ねえねえお兄ちゃん!瑠璃は!?」


「瑠璃さんは帰宅部エースで日が高いうちに帰るのでそこまで心配してません」


「えー!」


「ほいほい、もう中等部着いたぞ。


さっさと行け」


「は~い。


あ、今晩オムライスちゃんと用意しとくからね!


デミグラスだよ!デミグラス!」


そう言い残し中等部へと駆けて行く瑠璃。


「さて、俺たちもーーーおっと、すみません」


「ああ、こちらこそすまない」


前を見ていなかったからか、歩いていた人とぶつかってしまった。


「大丈夫?」


紬が心配そうに話しかけてきた。


「ああ、大丈夫だ。

ちゃんと前見て歩かないとな」


そう言いながら歩き出す俺。


「………」


ふと、さっきぶつかった人がいた場所を振り返る。


もうそこには誰もいない。


でもなぜなろう?


今の人が、少し気になったのだった。




★★★



「ふい~、終わった終わった~」


授業が終わり、下駄箱で外靴に履き替える俺。


外に出ると、カァー!カァー!とカラスがうるさいくらいに鳴いていた。


「なんだ?珍しいな」


普通に鳴いているのではなく、無数のカラスが大量にだ。


屋上のフェンスにいっぱいとまっているので結構不気味だ。


「うわこえっ、さっさと帰ろう」


あのまま下にいたらカラスのフン落とし大会に巻き込まれかねないし、こういう時は退散するに限る。


「フッ、我ながら策士!」


無いメガネをスッと持ち上げる俺。


あ、ヤベ、人に見られてた。


恥ずかし!!!


二度とやるもんじゃねえわ。


とりあえず帰りに玉ねぎを買いに行かないといけないんだったな。


「いつものスーパーでいいか」


帰り道を途中で曲がり、公園を経由する。


スーパーに寄るにはこの道を通るのが1番の近道なのだ。


公園内は割と広く、普通に歩きながら自然を満喫できる。


そんな環境だからか、よく子どもが遊んでいる声が聞こえてくる。


ただし、いつもは、の話だが。


「珍しいな、いつもはうるさいくらいに子どもがはしゃいでるのに、人一人いないや」


まるで神隠しでもあったかのように公園内はしずまりかえっている。


まあ、そんな時もあるだろう。


「そういえば珍しいといえば、さっきのカラスはなんだったんだろうな」


めちゃくちゃ鳴いてたし。


「虫の知らせだったりしてな……と」


突然その場に立ち止まる俺。


「ニャー」とそいつは鳴いた。


黒い姿に丸い瞳。


黒ネコがちょこんと目の前に座っていた。


けど、ただ座っているだけじゃない。


ジーとこちらを見つめているのだ。


「………」


目が合うと黒ネコは歩き出した。


そして何歩か歩くごとにコチラを振り返ってくる。


まるで、こっちへ来いとでも言っているように。


「まさかな……」


カラスに人気がない公園に、黒ネコって、不吉過ぎやしないか……?


俺が跡をつけるか迷っていると、黒ネコがまたちょこんと座る。


それはまるで俺が着いてくるのを待っているようにしか見えない。


「………」


手で額の汗を拭う。


そして、ヤツを追いかけるように歩き出す。


すると、黒ネコもまたコチラをチラチラと確認しながら進む。


大丈夫だ、ヤバくなったらすぐに逃げればいい。


走りには自信がある大丈夫。


歩くこと数分。


開けた場所に出た。


開けたといっても公園内だ。


周りは林に囲まれていて、いわば小さな秘密基地のような感じ。


黒ネコはそこで止まった。


「ここに何かあるってのか?」


周囲を警戒しながら、奥へ進む。


少しあたりを歩いてみる。


が、何もない。


あるのは木々に囲まれたこの空間だけだ。


「なあ、お前はーーー」


黒ネコに声をかけようとする。


が、いつの間にかいなくなっていた。


「………」


「ふ、ははは」と笑い声が口から漏れた。


どうやら、ただの思い過ごしだったらしい。


勝手に自分が勘違いしていただけのようだ。


「そりゃそうだよな、ネコが道案内ってマンガじゃあるまいし」


心の底から安堵の息が漏れる。


「ふぅ、緊張して損したぜ。


さっさとスーパーに寄って帰ろ」


と、振り返った時だ。


「………」


足が恐怖ですくむ。


身体がガクガク震え出して止まらない。


なぜか。


目の前に、さっきまでなかったものがあったのだ。


いや、訂正する。


訂正しなければならない。


【目の前にあってはいけないものだ。】


気持ち悪いくらいに真っ赤な液体。


それが穴の空いたお腹から、ダラダラと流れ続けている。


ソレは一般的に。


死体と呼ばれるモノに見えた。

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