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戦国転生日吉丸公記~秀吉に転生したけどなぜかイケメンな件について~  作者: まーしー
第四章 織田家の藤吉郎(近習編) 天文二十三年~天文二十四年(1554~1555)
32/65

30 旧友

今回少し短いです。

 

 天文二十三年(1554年) 七月末

 尾張国愛知郡 那古野城 広間


 安食での戦いを終えて数日経った後に、那古野城で論功行賞が行われた。


「権六よ。 総大将の任、大儀であった。 萱津に引き続き、見事な戦いぶりだったようだな。 勘十郎に褒美を取らすよう言うておこう」


「はっ 有難き幸せに。 大きな戦には是非この権六をお呼びください、此度のように弾正忠家に勝利をもたらしましょうぞ」

 六尺を超える身の丈に筋骨隆々な体躯、堀の深い顔に濃い髭を生やした壮年の男、柴田権六勝家はそう言って平伏した。



 織田家の中で、最強の武を誇る家臣は誰かと聞かれたら、多くの人が柴田勝家を挙げるのではないだろうか?

 少なくとも目の前にいる武将には、そう言えるだけの貫禄が感じられる。 これが鬼柴田の威厳か…


 勝家は信秀の代からの家臣で、信秀の死後、信勝付きの家老となった。


 信勝亡き後信長に仕えることになるが、弘治二年に起きた稲生の戦いで、信勝と共に信長に反旗を翻したこともあってか、桶狭間の戦いや美濃斎藤家との戦いで用いられることは無かった。


 頭角を現し始めたのは上洛作戦以降で、持ち前の武力を発揮し織田家中で存在感を示していった。

 最終的に、越前北ノ庄五〇万石を治め、北陸方面軍の総大将を務める重臣になる。その影響力はすさまじく、織田家臣では最大勢力へとなった。




「ふん、抜かしおるわ。 よい、次も期待しておるぞ」 「して五郎左 一軍を率いてみてどう思うた?」

 信長は勝家の強気な発言が嫌ではなかったらしく、ニヤリと笑った後、長秀にもそう話しかけた。


「まずは某のような若輩にこのような機会を頂けましたことに深く感謝申し上げます。 どう思ったかですと、やはり難しさはありましたな、権六殿の采配を見て学ぶばかりでした」

 そう言って長秀は頭を下げた。 


 かなり控えめな性格なのか、それとも周りの重臣連中にやっかみを受けないような立ち回りなのだろうか。


「五郎左はちと謙遜が過ぎるな。 権六がお主の用兵術を褒めておったぞ。 よってこれからも一軍を率いることを許す、しっかと励めよ」


「それは誠ですか!? ありがたき幸せに存じます、これからもこの五郎左衛門、殿の為粉骨砕身で働きまする!」

 信長の言葉に感極まった長秀は、畳に額が擦りそうなほど深く頭を下げた。 信長はそんな長秀の様子を見て微笑を浮かべていた。




「さて… ここには先の戦で功のあった将兵を呼んでおる。 その者共にも褒美を取らそう。 勝三郎読み上げよ」

 信長はそう言って傍らに控えている恒興に命じた。



「まず一番手柄 前田又左衛門と由宇喜一の両名。 大将格の河尻左馬丞と織田三位を討ち取ったとして、五貫文と木綿一反、そして感状を授与する」

 恒興は手にした軍忠状を読み始めた。


「「はっ ありがたき幸せに存じます」」

 二人は信長の元へ進み出て、信長直々に感状を受け取った。 利家は喜色満面といった様子だ。 



 俺は戦後にこれでもかというほど自慢されていたので知っていたが、利家は大将格であった河尻左馬丞を討ち取っていたのだった。 手柄としてはこの上ないだろう、一番手柄なのも頷ける。


 もう一人は良く知らないが、何でも武衛の元家臣らしい。浴衣同然の軽装で敵陣に突入し、織田三位を討ち取ったというのだから驚きだ。



「尚、名のある武将を討ち取った者にも二貫文の俸禄を与える故、この儀が終わり次第受け取るように」

 恒興が続けてそう言った。 よかった、俺にも褒美があるらしい。




 しばらくして会はお開きとなった。皆ぞろぞろと帰る中で俺に話しかける者が居た。



「お主、木下藤吉郎秀吉と言ったな。 先の戦で見せた槍捌き見事だったぞ」


「これは三左衛門殿! お褒め頂き恐縮にございます」

 俺に話しかけてきたのは森可成だった。


「使っていた槍も中々の業物であったうえ、なにやら面妖な形をしておったな。 あれはなんじゃ?」

 流石槍の名手なだけある、よく見ている。

 十文字槍や祖父のことを軽々と教えるのはあれだが、この人は信用に値することは歴史が証明している。


「関兼貞という刀匠はご存じでしょうか? 実は某の祖父でして、あの槍は祖父に打って貰ったものになります。 形状については某が考えました。 その見た目から十文字槍と呼んでおります」


「ほう、あの兼貞殿か! 儂も兼貞殿の打った物は持っておるぞ! して十文字槍か… さぞ色々な使い方が出来るであろうな。 どうじゃ、ちと儂に技を見せてもらえんか?」

 可成は興味津々と言った様子で俺に迫ってきた。 あぁ… この人も槍バカか…


「お見せしたいのは山々なのですが… 実は槍を実家に置いてきていまして…」

 これは断る為の方便ではなく、れっきとした事実だ。 


 いつもかも鳴神を持ち歩くわけにいかないので、普段は実家で保管しており、有事の際に持ち出すことにしている。


 ちなみに重元殿から貰った刀も普段は家だ。 一兵卒の身で普段からあんな業物を持っていては、変なやっかみを受けるに違いない。



「そうか! では其方の実家に行こう! さぁ行くぞ、実家はどこなのだ?」


 興奮しきっている可成に根負けし、そのまま実家へ行くこととなった。


 流石に織田家の譜代家臣を迎える準備をしなければならないと思い、先程実家に早馬を飛ばしたのだが… 

 今頃兵庫や母上が驚いていることだろうな…




 同日 尾張国愛知郡 中村郷中中村 木下屋敷


「ここがお主の実家か。 立派なもんじゃのぉ…」

 馬上で可成があっけにとられていた。 

 驚くのも無理はないだろう。俺は信長の近習といえど一兵卒に過ぎない。


 その一兵卒の実家が、まさかこんな大きな屋敷だったとは夢にも思わないだろう。


「お褒め頂き光栄に存じます。 ささ中にどうぞ。」

 俺は若干気圧されている可成を連れ、家に入った。




 木下屋敷 中庭


「では三左衛門殿がご覧になりたいといった技ですが… どうでしょう 先ず某と家臣の槍合わせをご覧になられますか?」


「うむ、ではそうしよう。 頼めるか?」


「では… 清右衛門は居らぬか!?」

 俺は清右衛門を呼んだ。 先日勘次郎が元服し、各務清右衛門元正と名を改めたのだ。


 これで俺の共は全員元服したこととなった。

 実家に帰るたび三人とは手合わせをするが、腕はメキメキと上達している。 もう少ししたら初陣させてもいいかもしれない。


 しかしどうしたのだろう。 いつもは俺が呼ぶとどこからともなくやってくるのだが、一向にやってこない。



「殿、倅は半蔵や左近と共に領内の見回りに行っております。 もしよろしければ拙者がお相手しましょうか?」

 そう言って奥から出てきたのは兵庫だった。


「其方!!! 各務兵庫殿ではないか!?」

 兵庫の姿を見るや否や可成が叫んだ。 そうかこの二人は旧知の間柄だったな。


「久しいな三左衛門殿 美濃守様の所を辞して以来じゃの」

 兵庫も旧友との再会を懐かしむように目を細めた。


「そうじゃ! お主今までどこでなにをしておったのだ! 行方が分からず心配しておったぞ!」

 そう言う可成の目には涙が浮かんでいた。


 その後暫く二人は思い出話に花を咲かしていた。 

 確かに久しぶりに会った旧友だ、積もる話もあるだろう。



 ただ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を、少しは考えてくれると助かるのだが…



 結局、清右衛門たちが見回りから帰ってくるまで、俺は置いてきぼりを食らうのだった。






前田利家が河尻左馬丞を討ち取ったのは、本作の独自設定になります。

面白い!続きが読みたい!と思われましたら、いいね、ブクマ、感想等を頂けると幸いです。


前回の誤字報告で『古沢新左衛門』ではなく『七郎左衛門』ではないかというご指摘がありました。

筆者の参考資料である信長公記天理本には『古沢新左衛門』とあったのでそう書かせて頂いた次第です。

今回は表記ゆれということでご理解頂けたら幸いです。 

誤字報告をくださった三国志好きスキル様、貴重なご意見ありがとうございました。


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