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戦国転生日吉丸公記~秀吉に転生したけどなぜかイケメンな件について~  作者: まーしー
第三章 放浪の藤吉郎 天文二十二年~天文二十三年(1553~1554)
26/65

24 運命の出会い

最近更新が遅れ気味ですみません。

色々な資料を見漁っていると、中々考えがまとまらないですね。

 

 天文二十三年(1554年) 尾張国丹羽郡 生駒屋敷付近


 俺は信長と接触する為に生駒屋敷へ向かっていた。


 生駒屋敷は尾張生駒氏の拠点となる城館で、現在の愛知県江南市小折付近に位置している。

 生駒氏は武家でありながら、馬借などを営む商人としての側面も持つ家だ。


 その豊富な財力と人脈に肖ろうと、近隣はもとより、遠方からも土豪や、名士などの多種多様な人物が立ち寄る場になっている。

 信長もその1人で、生駒氏の豊富な財力と情報力を求め、接近したと思われる。


 その際に、生駒家宗の娘である『吉乃』を気に入り、自身の側室とした。

 吉乃は信忠、信雄、徳姫の生母であり、最も信長の寵愛を受けた側室と言われている。

 それを示す逸話として、病の吉乃を小牧山城に住まわせる為に、側室では使用できないはずの輿を使ったという話が残っている。


 史実の秀吉は、その吉乃から信長に取り入ったという説があり、俺はそれに肖ったという訳だ。



 実は最初から那古野城に行くことも考えたが、今の俺には織田家に対する伝がなく、完全な部外者になってしまう。

 ただでさえ周りが敵だらけの信長だ。間者や、狼藉者などに間違えられたらたまったものではない。


 それならば、信長自身に俺を見つけてもらえばいいと思い、ここへ来たわけだ。

 幸い俺は周りの人間より、頭二つはデカい上、容姿が整っている。きっとイケメン好きの信長の目に留まることだろう。




 尾張国丹羽郡 生駒屋敷 中庭


「おい、おめぇいいもんを腰に差してやがんな。ちぃと俺に見してくれねぇか?」


「てか、おめぇ女みてぇな顔してやがんな。 そんな顔じゃぁ舐められちまうかもな、俺らが護衛してやろうか?」


「それがええ。 どうだその刀を渡してくれやぁ、おめぇを守ってやってもいいぜ?」


 生駒屋敷を訪れてすぐに、妙な輩に絡まれてしまった。

 人数は3人。多少身なりは整っているが、下卑た笑いが隠しきれていない所を見ると、十中八九碌でもない人間だろう。

 色々な人間が集まるが、早速こんなのに捕まるとは運がない…。



「てめぇ!! さっきからすかしてやがって、気に食わねぇなぁ!!!」

 俺は暫くの間、無視を決め込んで相手にしていなかったが、あまりのしつこさに思わずため息を1つついた。


 それが男たちの逆鱗に触れたのか、男たちは声を荒げ始め、しまいには1人が俺の腕を掴んできた。

 これはもう正当防衛だろう。いい加減俺もイライラしてきた所だ。



「俺が大人しくしているうちにやめておくべきだったな」

 俺は掴んできた腕を引っ張り、そのまま男を投げ飛ばした。屋敷を傷つけるわけにいかないので庭方向だが。

 男は反撃を受けると思わなかったのか、もんどりうって地面に倒れ伏した。



「てめぇ!よくもやりやがったな!」


 男たちは俺の反撃を受けて、臨戦態勢へと移ったが、少々気圧されているようだ。

 さっきまで俺は縁側に腰かけていた為、俺の身長に気づいてなかったのかもしれない。


 元々高かった身長は、現在も順調に伸び続けており、最近大台の6尺に到達した。男たちから見れば十分巨人だろう。


 気圧されている無法者3人如きに、後れを取る俺ではない。刀を抜くこともなく簡単に叩きのめすことが出来た。


 一連の流れを見ていた見物人が、『いい物を見た』と言わんばかりに手を叩いた。

 男たちが這う這うの体で、屋敷から出ていこうとしたその時…



「一体何の騒ぎだ!?」

 屋敷の入り口から野太い声がした。逃げようとしていた男たちはその声を聴いて「ひぃ」と情けない声を上げた。


 入り口へと目をやると、猪の毛皮で作られた羽織を纏った、髭面の男が立っていた。もしかするとこいつらの親玉かと思い、俺は警戒を強めるのだった。



「ん?太兵衛と甚介、それに伝衛門じゃねぇか。 てめぇらここで何をやってやがる」


「それは…その…」

 髭面の男に聞かれ、しどろもどろになっている3人。可哀そうになってきたので、俺は助け船を出すことにした。


「その3人の親分か? そいつら俺の刀をゆすり取ろうとしていてね。 あんまりしつこく来たもんで俺が叩きのめしたんだよ。 一応そいつらから手を出したんだぜ? なんならここにはこんなに見届け人がいる。疑うんだったら聞いてみな」


 まあ出すのは泥船なんだがな。



「太兵衛。それは本当なんだろうな? えぇ!?」

 髭面の男が左手で1人の胸倉を掴み、他2人に睨みを利かせながらそう凄んだ。

 周りの様子から、事態は把握できているようで、後は本人からの事実確認をするだけのようだ。


 にしてもかなりの迫力だ。

 身長は5尺5寸程度だが、ガタイが良く筋肉質である為、かなり威圧感を感じる。

 見ているこっちも軽く恐怖を感じるのだから、当事者は相当怖いだろう。

 実際、胸倉を掴まれている男の袴が濡れていた。



 太兵衛と呼ばれた男が、震えながら首を縦に振ると、髭面の男の右ストレートが顔面へと炸裂した。

 鼻がつぶれ、前歯が飛ぶほどの凄まじい威力だった。

 髭面の男は怯える2人にも鉄拳を叩き込んだ後、俺の前に歩み出た。



「美濃斎藤家家臣 宮後城主蜂須賀小六利政と申す。此度は某の家臣が貴殿に狼藉を働いた事、深くお詫び致す。 この3名を切るのは簡単ですが、こやつらにも挽回の機会を持たせてやりとうございます。 それでは足りないと申されるのならば、貴殿の気が済むまでこの小六をお殴り下さい。 家臣の不始末は主の不始末、どうかこれでご勘弁願いとう存じます。」


 最初は部下の落とし前でも付けるのかと思ったが、男がしたのは謝罪だった。

 地面に胡坐をかき、両手を地面につけて深々と頭を下げた。



 それにしてもまさかこの男が蜂須賀小六だったとは…


 藤吉郎と小六の出会いは、矢作橋での逸話が有名だが、あれは後世の創作で、実際は生駒屋敷で出会った説が濃厚である。

 しかし、まさかこんな形での邂逅になるとは思わなかった。

 何はともあれ、平伏させたままではいけないだろう。


「小六殿と申されたか? 某は木下藤吉郎秀吉と申す。 貴殿の心意気と家臣に対する思いに、この藤吉郎、深く感銘を受けました。 ここは小六郎殿に免じて、不問としましょう。 どうか顔をお上げください」


「藤吉郎殿、深く感謝申し上げます。 しかし不問では、某の気が収まりませぬ」


「では貸し1つではどうかな? 貴殿の手を借りたい時に、助力して貰えればそれで良い」


「承知仕りました。 ではこれにて失礼させて頂きます。」

 そう言って小六は気絶している3人を持ち上げ、生駒屋敷を後にした。


 狙ってはなかったが、ここで小六との繋ぎが出来たのは大きい。少し先にはなるが、墨俣城築城の際に手を借りやすくなった。




「一連の流れ見ておったぞ。お主中々やるのぉ。小六とやらも良かったが、儂はお主が気に入った。 腕も立つ上、道理も弁えておる」


 俺がそう思っていると、また後ろから声をかけられた。先程の小六と違い、甲高くよく通る声だ。

 俺はまさかと思い後ろを振り向いた。


「それに儂好みの美丈夫と来た」

 そこには派手な羽織を着た、茶筅髷の男が立っていた。


 間違いない このお方は 


「儂は織田弾正忠家当主 織田上総介三郎信長じゃ。 木下藤吉郎と言ったな?どうじゃ儂の所に来んか?」



 織田信長だ!!!!


吉乃は本名ではないとの説がありますが、本作では吉乃を本名とさせて頂きます。

(他説としては「類」「桂昌(尼)」「久庵」ですが一番有名な「吉乃」を採用しました。)


小六が利政を名乗っているのは、斎藤道三(利政)からの偏諱を受けており、そう名乗っていた時期がある為です。

秀吉に絡んできた3人は筆者の創作です。もしかしたら小六配下として再登場するかもしれませんが、特に覚えておかなくても大丈夫です。


ご存じの方も多いと思いますが、那古野城は誤字ではありません。信長の時代は那古野城と呼ばれていたそうです。

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― 新着の感想 ―
[一言] ≫それに儂好みの美丈夫と来た 犬千代「殿……某と云う者が居りながら……」
[気になる点] うう、面白いけど、衆道はマジ勘弁
[良い点] ( ´-ω-)主人公にとって唯一の主君織田信長登場…楽しみです(チッ……女体化じゃあ無かったか)。 [気になる点] 蜂須賀小六…本来は秀吉父の知り合い関連で知己を得るが、この小説では関連な…
2024/03/16 06:21 ざまぁ好き
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