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三界のシリウス  作者: 匿名希望
序章 白銀の少女編
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アブソリュートゼロ

 ボカーン!!と大量のダイナマイトで爆発したかのような爆発が起こり、煙が吹き荒れる、しばらくすると煙は晴れて行き、大きく穴の空いた地面が見えて来る、


 そして、その穴の中に平然と立っているエレメンタルが見えた。


 カノンは戦慄した、今の攻撃は戦略兵器並みの威力だった、それなのに何故、あの怪物は平然と立っているのか、戦慄いているのはカノンだけでは無かった、隊長もカマセ=イヌも他の騎士も全員が、結果の前に立ち尽くし、震えていた、つまりは戦意が喪失した。


 そしてトドメを指す様な出来事が起きる。


 穴の中から、こっちに向かってゆっくりと歩いてきているのだ。


 今までエレメンタルは攻撃する時以外は、所定の位置に立ち尽くし、攻撃する時だけ動いていた、それも走りで。


 歩いてくるなんて事は今まで一度も無かった、戦場は恐怖に支配されていた、ただ、ゆっくりと歩いてくる存在がここまで怖いとは皆、思いもしなかった。


 隊長が震える声で話し始めた。


「思えば、エレメンタルは人間の言葉を発したらしい、そんな存在が知能が無いわけが無かった、要は私達は遊ばれていただけだった……殺そうと思えばシンクの様に、いつでも、一瞬で、殺せていたんだな」


 その言葉を聞きカノンは自分の死を明確に悟った、自分はもう生きて帰る事は出来ないと。


 ゆっくりと歩いてくる中でエレメンタルは初めて言葉を発した。


「遊びのまま終わらせても良かったんだがな、さっきの攻撃は脅威ではあった、溜めてる間に魔法を分析して、障壁を貼らせて貰った」


 エレメンタルが明確にカノンに殺意を向ける。

 

「悪いが、少しでも我を殺せる可能性を持つものは生かしては置けぬ」


 禍々しいオーラがエレメンタルの右の鉤爪に集約されていく。


 カノンは自分の死を覚悟した、時間がゆっくり流れる感覚に陥り、走馬灯が見える。


 失った家族のこと、故郷の事、シリウスの事、そして小さい頃に救ってくれたあの子の事……結局何も出来なかったな、そう自分の人生を結論付けようとしたが。


「そうはさせない!!!!」


 バッと、カノンの前にカマセ=イヌが姿を表す。


「約束覚えてるかい?」


「君はこんな所で死ぬべきでは無い、僕がなんとしても時間を稼ぐ、だから君は今すぐこの場を離脱するんだ」


 少しでも生きれるかもと思った瞬間、一気に生への渇望が、意識を支配した、しかし動けない、恐怖で動かないのもそうだが、エネルギーボールに魔力、つまりは生命エネルギーを使い過ぎて、1ミリも体が動かなかった、生命エネルギーは時間と共に満たされるが、一瞬で回復する術はカノンは持っていない、つまりはどのみちゲームオーバー。


 カマセ=イヌの固有魔法〈死の回避〉


 一回しか使えないが、自分の大切なものを変わりに失う代わりに自分の死を回避する事が出来、そこから1分間は無敵モードになれる。


「僕は大丈夫だ、僕は死なない」


 キメ顔でカノンに呟く。


「必ず、君が逃げる時間を稼ぐよ、だから早く逃げて」


 今の僕、最高にかっこいい、今この瞬間だけは、僕は世界で一番イケてるメンズ、イケメンなんだ!!


 エレメンタルが跳躍の姿勢を取る、隆起した筋肉をバネに一気に飛び掛かる!!


「さあ、来い!!僕が相手だ!!」


 エレメンタルが勢い良くカマセのもとへと近づき、そして。


 そのまま通り過ぎた。


「へ?」


 カマセが予想外の結果を受けて、間抜けな声を上げた。


 なんだよ、せっかく僕がかっこいい所を見せれるチャンスだったのに!!


 そう心の中で言い、後ろを振り返ると、エレメンタルの爪と見知らぬ女性の剣が衝突していた。


 キリキリキリキリと剣の切先と爪が擦れる音が響き渡る、しばらくした後、擦れる音は無くなり、鉄と鉄が打ち合う音が鳴り響く。


 カン!!カン!!カン!!カン!!


 凄まじい速度で剣と爪が振るわれ、ぶつかり合う。


 カン!!カン!!カン!!カン!!


 激しい打ち合いの中、ふと女性が後ろに5歩、下がった、どうやら打ち合いの中で起きた隙を見計らい、距離を取ったらしい。


 そのまま足を前後に大きく開き、重心を低く取る、剣を持つ右手は弓を弾く様に肘を曲げ、左手は前方へ伸ばし脱力している。


 彼女の剣は突きの剣。


 レイピアと呼ばれる刺突用の片手剣だ。


 彼女のレイピアの切先に魔力が集まる、その魔力は一瞬で冷気に変わり、切先にのみ冷気を集め、突く、彼女の必殺技。


 〈アブソリュートゼロ〉


 魔法による加速、一瞬の攻防。


 エレメンタルは、絶対零度の一撃をかろうじて避けた。


 刺突の勢いはすぐに無くなり、カノンの目の前で止まった。


「シリウス」


「ごめんねカノン、カノンの覚悟を踏み躙る様な真似になっちゃった……」


 今こうして私がカノンの目の前にいる事、助けたという事実、これはカノンにとって許せない事かも知れない……

それでもカノンには死んでほしく無いよ。


「私こそごめん、自分でも分かってた、向いてないって、こんな事をしても意味が無いって、でもね、この戦いで私は私を見つけられた、だから帰ったらシリウスに話したい」


「うん、絶対に帰ろう」


 だからあの怪物を何としても倒す。


 シリウスはレイピアの刃の全体に冷気を纏い、エレメンタルのもとへと駆けていった。


 


 


 


 


 

 

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