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三界のシリウス  作者: 匿名希望
序章 白銀の少女編
2/6

流浪の白騎士

 流浪の白騎士、周りの人間からはそう呼ばれている、曰く実力はあるのに王国騎士団に入らない怠け者、曰く世界の至る所で見かける、そんな事から私に名付けられた二つ名だ、周りの人間はどうも揶揄でそう呼んでいるみたいだけど、私自身は実に的を得てるなー、くらいにしか思っていない。


 騎士学校時代、天性の才を持った彼女は必ず王国騎士団のエースになると皆がそう言った、同級生も、先生も、現役の王国騎士も、貴族も、皆がそう言った。


 皆、王国騎士になる事は最高の栄誉であるかのように言うが、私は一切そんな事は思わなかった、王国騎士なんて堅苦しい物になるつもりなんて一切無かったし、卒業したら世界中を旅すると決めていたのだ、だから卒業して以降ラインロット王国には一度も戻らなかったんだけど...


 シリウスは懐から一枚の手紙を取り出した。


 拝啓

 シリウス=リオネール様、お元気でしょうか、カノンです、この度、王国騎士団に入団が決まったので、久しぶりに会いたいです、貴方は世界中を転々とするので、前に私に教えてくれた住所に送ります、貴方に届いて欲しいな。

                       敬具


 前に教えた住所とは、シリウスが拠点としている場所である、世界を転々とする彼女だが、自分の帰るべき居場所が欲しいと、拠点を作っていた。

 

 ――ちなみにラインロット王国のあるハーヴェスト大陸にある森の中に建てた家の事――


 〈カノン=フェネーゼ〉騎士学校時代の唯一の友達だ、お互い幼い頃に家族を失ってる共通点を持っていて、すぐに仲良くなった、そんな彼女のお願いを無視する事も出来ず、1年ぶりに王国へと戻ってきてしまった。


「全く、あれだけカノンに見栄を切って出て行ったのに、たったの一年で戻る事になるとは………」


 思わずため息をついた。


 流浪の白騎士として、そこそこ有名な上に、透き通るような長い銀髪は周りの目を引いてしまう、バレないようにフードを目深に被り、目的地であるカノンの家まで向かう。


 しばらく歩くと賑わっている建物を見かける、昼間からどんちゃん騒ぎが聞こえるその建物は、所謂、冒険者ギルドだ、色々な依頼がギルドに集まり、それを冒険者が受注し、依頼を達成すると報酬が貰える、様々な脅威が存在するこの世界ではとても重要度の高い組織と言えるだろう、騎士団と並び冒険者ギルドは王国の戦力とされている。


 私もギルドを通してお金を稼いでるから冒険者と言えるのかもしれないな。


 そんな事を考えていると、ギルドから出てきた二人組の男が気になる事を話し始めた。


「噂の怪物の討伐、今の所誰も達成出来て無いらしいな」


「騎士団も対処に当たってるらしいが、てんで駄目らしい」


 噂の怪物?初めて聞く名前だ、どうやらギルドも騎士団もどうやら手こずっているらしいが、私には関係のない事だ、私はそれ以上は考える事をやめて、カノンの家に向けて再び歩き出した。


 ようやく目的地に辿り着いた、今は休日の午後2時30分過ぎ、カノンはインドアだから、必ず家にいるはずだ。


 チリンチリン


 ドアの横に付いている呼び鈴を鳴らす。


 目の前のドアが開かれた時、最初になんて言おうかと心の中で悩んでいると、二階の窓が勢いよく開かれ、カノンが窓から身を乗り出した。


「鍵は開いてるから私の部屋に来て!!!!」


 …………。


 予想外の再会に、一瞬呆気に取られたけど、いかにもカノンらしい天真爛漫な姿を見て、安心感を覚える。


 ドアに手を掛けると、カノンの言う通り鍵は開いていた、防犯意識が足りてない事を後で注意してやろうと考えながら、カノンの部屋へと向かった。


「久しぶり!!!!」


「久しぶり、カノン」


 実に1年ぶりの友人との再会、カノンは笑顔で私の手を握った、こういう馴れ馴れしい態度の人間は正直好かないけど、カノンだけは例外的に好きだ。


「良かったよー、正直、手紙届かないかもと思ってたから」


「前に教えた場所は、私の家みたいな場所だから大丈夫だよ、それにすぐに使い捨てるような拠点をカノンに教えるはず無いでしょ?」


 不安そうな顔をしていてカノンを安心させるために、カノンにもわかるように伝える。


「ありがとう」


 カノンはすぐにニッコリと笑顔になり、会話を続けた。


「そうそう、シリウスに聞きたいことがあったんだけどね」


 どうしても聞きたい事だったのか、慌て気味に質問してきた。


「どうしたの?」


「世界中を旅してるけど、お金は大丈夫なの?職にも就いてないみたいだし……」


 なるほど、とても現実的な質問だ、深刻そうな彼女の様子を見るに、本当に心配してくれてるのだろう。


「お金に関してはギルドを活用してるよ、エレメントの討伐だったり、たまにしかないけど魔獣の討伐をしたりね」


 討伐依頼は危険な依頼な為、報酬も豪華なのだ、つまりは実力さえあればお金には困らない。


「なるほど、確かにシリウスなら問題なく依頼をこなせるもんね、お金に関しては心配無いね」


 それを聞いて安心したのか、深刻そうな様子は消えて、安堵の息をついていた。


「それにしても、シリウスは凄いね、もうエレメントの討伐をこなしてるなんて……」


「全然そんな事ないよ」


 純粋にシリウスを褒めているカノンの顔に暗い影が差した様に見えた。


 


 



 



 


 

 

 

 


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