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トレジャーハント2日目-8

展望台を降り、キューブの確認をする。

しかし、景品が加算されない。


「あ?なんか条件満たしてねえみたいだな」

「マジか、あの高さから落としても駄目だったのか」


いくらキューブが軽いとはいえ、結構な高さから落としたんだけど。


「ッチ、ちょっと待ってろ」

「どこ行くの?」

「展望台」

「また?」


レオはまた展望台に上がってしまった。

そして、待つこと3分。


「おーい、離れてろー」


遥か頭上から微かにレオの声が聞こえた。


「離れる?キューブからってこと?」


とりあえず距離を取ったその数秒後、轟音とともに何か地面に突き刺さった。


まさかレオのやつ・・・。


「普通あの高さから岩落とすか?」


地面には5メートルほどの大岩が突き刺さっていた。

呆然としていると、デバイスが振動した。

画面を見てみると、『ミッション達成』と書かれていた。

うん、まあこれで達成出来ないわけないよね。


「景品は3000円金券か・・・。やっぱり、テストの点数じゃないよなあ・・・って、あれ?これってどういう・・・?」


画面に表示された景品は、3000円金券ではあったが・・・。


「クリア出来たかー?」

「えーっと、3000円金券だったよー。ていうかこんな大岩落とさなくても多分クリア出来てたよー」

「一回でクリアできなかったら面倒くせえから確実な方法を取ったんだよー」

「だからって、観光名所の景観を変えないでよ!」


ガモッピーの足元に大岩が生えてしまった。

これは僕たちだとバレたら絶対に怒られるやつだ。


「ダメだ、びくともしないや」


試しに押してみるが、当然のように動かない。


「まあ、落したのレオだし、いいか」


僕は無関係だ。うん。


大岩の処理を諦めたところで、レオが戻って来た。


「それにしてもレオも腕上げたね。ここまで威力を出せる人、同学年にいないんじゃない?」

「その分テクいことは出来ねえがな。まあ単純な威力なら負けるつもりはねえな」

「やる気なさそうにして、裏でそうとう練習してたでしょ」

「この学校の成績やら待遇は魔法の実力で大体決まる。これも学校生活の効率性だ」


しかし、ここまで強力な一撃だと、学年一位の蒼天院(そうてんいん) (あらた)君でも止められるか怪しい。

少なくとも、前回の模擬魔法戦の時の(あらた)君では止められない、と思う。

効率とか言ってるけど、それだけでここまで強くなるとは思えないから、模擬魔法戦が相当悔しかったと見た。

負けず嫌いのくせに表に出さないんだよな、レオは。


「あ、なんだよ?」

「いや、別に?」

「じゃあなんで二やついてんだてめえ」

「いや、別に?・・・フフ」

「てめえ舐めてんのか?!」


僕の内心が顔に出てしまっていたのか、レオが圧を掛けてきた。

そんな教室でよくあるようなやり取りをしていたら、なんとなく気が抜けてしまった。

こういうときは大体(ゆう)君が傍らでニコニコしてるんだけど、今頃何してるんだろうか。

明日は遊べるといいなー、なんて考えがうっすら頭をよぎった。


そんな僕の心を現実に戻すかのように、不意に声を掛けられた。


「いやいや、凄い威力やなー。さすが、模擬魔法戦優勝クラスの代表さんやな」


レオ以外の声に、体が一瞬硬直した。


声の方を見ると、マンバンヘアの柄の悪そうな男と、真面目そうな七三分けの眼鏡の男が立っていた。


「・・・芦屋(あしや) 宗悟(そうご)山田(やまだ) 壱郎(いちろう)。何か用・・・・・・って何それ?」


山田(やまだ)君の腕には、何故か竹製の背負籠があった。


「これか?これは山菜だ」

「そういえば昨日も集めてたけど、なんで山菜?」

「食べるためだ」

「なんでそんな大量に集めているのかを教えて欲しかったんだけどなあ・・・」

「こいつんち貧乏やから、よお草拾って食ってんねん」

「な、なるほど、それは大変だね・・・」


理解はした。

けど、林間学校に来てやる事では間違いなくない。


「さすが世界に誇れる碧水蒔(へきすいじ)高原。希少な山菜が盛りだくさんだった。煮て良し、焼いて良しだが、やはりお浸しは外せないだろう。ふふふ、キャンプ場に戻ったら早速下処理をしたいところだ」


ほとんど付き合いは無いが、ちょっと前に話した時よりもテンションがおかしい気がする。いや、おかしい。


「・・・山田(やまだ)君って意外に変わってるね」

壱郎(いちろう)は節約とか節制が好きやねん。んで、それが行き過ぎて食える草なんでも知ってんねん。おもろいやろ?」


おもろいというか、庶民派なところに親近感はちょっと湧いた。


「で、何しに来たんだ?」


話の進まない様子にレオがイライラしてきているみたいだ。


「冷たい反応やなー。昨日はもうちょい暖かかったで」


そんなレオ相手でも、芦屋(あしや)君は動じていない。


「質問に答えて欲しいんだがな?」

「そりゃ、散歩してたらここまで来ただけやで」

「キャンプ地からどれだけ離れてると思ってんだ?」

「こんくらいの距離は散歩と変わらんて。さては運動苦手やな?」


元々こういう性格なのか、あるいはわざとかは分からないが、まともに話をしようとしている感じではない。


宗悟(そうご)。お前のそういう人を食ったような態度が誤解をされると何度言ったら分かる?」

「いいいだだだだだ!!み、耳はやめてえ・・・!」


山田(やまだ)君がピアスだらけの芦屋(あしや)君の耳を思いっきり引っ張った。

昨日も見たが、バチバチの不良のような人物が生徒会長のような風貌の人物に折檻されている光景は違和感が凄い。

・・・いや、ある意味合っているのか?


「さて、五十嵐(いがらし) 秀介(しゅうすけ)金剛(こんごう) 怜雄(れお)。話がある。お前たちは10組がクラスレート1位なったことの立役者として、同級生ながら尊敬をしている。簡単に出来ることではないし、称賛せざるを得ない」

「ぐおおおおおぉぉぉぉおおおぉぉぉ・・・・・・!」

「・・・あの、耳離してあげたら?」


何事もなかったように山田(やまだ)君が話を始めようとしてるけど、耳引っ張りっぱなしだよ。

うめき声で話が耳に入って来ない。


「私の所属する6組について話は聞いた事あるか?他のクラスと比べるとやや特殊な環境で、成績Cランク以上が3人しか居ない、言わば弱小クラスだ」

「ほんまザコいでー。この夏休み目前のこの時期で、水鉄砲とかそよ風レベルの魔法しか使えんやつがおるくらいや。笑えるよなああああ耳が痛いいいいい!!」

「いちいち余計な事を喋るな」


せっかく開放されたのにまた耳を引っ張られてる。


「あの、話が進まないんで、山田くんだけ喋ってもらっていい?僕の堪え性のない友人がいつ爆発するか分からないんで」


山田君が居住まいを正し、改めてこちらに視線を向けてきた。


「つまり、私のクラスは他のクラスからとても舐められてるんだ」

「えーと、舐められているっていうのはつまり?」

「要は、よそのクラスから陰口やイジメがあったってことや」

「!・・・なるほどね」


僕のクラスは至って平和だから無縁だったけど、よそのクラスではイジメがあったのか。

それにしても、散々怒られた後に何事もなく話し始めたな、芦屋(あしや)君。

肝が据わっているというかなんというか、たくましいなあ。


「で、何が言いてえ?同情でもしてほしいのか?それとも、ウチのクラスの誰かがちょっかいでも掛けてきたから落とし前でもつけに来たのか?」

「ふふ、まあ落ち着け金剛(こんごう) 怜雄(れお)。特に厄介な連中については先ほど解決したし、君たちのクラスから何かされたという話は出ていない」


僕のクラスからは何もされていないのは、普通に良かった。


「じゃあ、俺たちに絡んできた理由はなんだ?結論ファーストで言え。会話の基本だろうが」

「ああすまない。こちらの事情を知って貰えた方がより理解してもらえると思ったんだ。・・・私たちの目的はトレジャーハントで上位を独占することだ」


ピロリ!ピロリ!


瞬間、4人のデバイスが同時に振動した。

この音は学校側から連絡があったときの音だったかな?


「おっ、丁度中間発表の時間やな。見てみい」


芦屋(あしや)君がデバイスを確認して、薄く笑みを浮かべた。


「これは・・・!?」


1位と2位は昨日と変わらず僕とレオだった。

しかし、3位以下が異様な状況になっていた。


「3位から10位まで全員6組?!」

「どういうことだ?昨日まで誰も居なかっただろ!?5組の大島、7組の中山はどうした?!」


これにはレオも驚きの声を上げた。

大島や中山は模擬魔法戦ではあまりいいところが無かったが、魔法総合成績では10位以内に入っていた上位者だ。

警戒していた人物だったが、まさかランキング外まで飛ばされているとは思いもしなかった。


「景品分配の機能が上手く隠れ蓑になってくれてなあ。おかげで今、この時までお前らに姿を捉えられずに済んだわ」


そうか。獲得時の景品をクラス全員で分けておけばランキングに入りっこない。

なんせ獲得した景品を30人に分けるんだから。


「なるほどね。その後に景品をランキングに入れるように振り分ければ、誰にも警戒されずに上位独占って訳か」

「そういうことや」


連合の存在は四津(よつ)から聞いてたのにこの局面まで姿を捉えられなかったのはそういうことか。


「不正は一切してないで。・・・壱郎(いちろう)は天才なんや。それも並の天才やないで。この国で最難関の五劫大学ですら余裕でパス出来るレベルや」

「とはいえ苦労した。最大限景品を獲得出来るように、チーム編成や行動ルートの設定と修正。おかげで得点景品の場所を特定するのに時間が掛かってしまった」

「・・・やっぱり、得点景品は君たちが独占したんだね」


2人が現れた時から嫌な予感はしていたが、得点景品を独占したのは6組か。


「そうだ。初日はひたすら上位景品の場所の情報を集め続け配置の検証をし、特定に成功した。後は人海戦術で回収したという訳だ」


僕たちが2人分のルートを作成するのにかなり時間がかかったのに、30人分作って景品を回収したのか。

言うのは簡単だけど、それに結果が伴っているのが恐ろしい。


「なるほど。後は俺たちを決闘システムで倒せば上位独占って訳か」

「せや。そこにお前らの名前はいらん。おったら、勝利の価値が霞んでまう」


山田君が頷く。


「6組が目指すのは誰がどう見ても分かるような完全勝利だ。模擬魔法戦優勝の立役者であり、さらにトレジャーハントで上位にいる君たちを倒せば、誰もが納得するはずだ」


あくまで狙いは僕たちという訳か。

しかし、それなら僕たちだって黙ってはいないぞ。


「っち、ずいぶんな自信じゃねえか・・・!」


レオも同じ気持ちだったのだろう。

言葉からは凄みを感じられる。

レオ、言ってやれ!


「お前らも噂で聞いた事あるだろうが、シュウはただのスケベじゃねえぞ。魔法に関しては間違いなく学年でもピカイチのセンスを持っているスケベだ。スケベだったらなんとかなると思ってるんだったら勘違いだぜ」

「その噂はレオが広めた捏造だろ!」


会話の1ターンでスケベって3回も言うのは僕を貶している以外の何物でもない。


「知っているさ。だが、私と宗悟(そうご)も強い」

「その知っているっていうのは、僕の強さを知ってるってことだよね?そうだよね?」


こっちの声が聞こえていないかのごとく山田君とレオが向かい合っている。

なんでさっきまで普通に会話していたのに、急に無視するんだ。


「まあ落ち込むなや。俺もスケベやで」


ポンッ、と肩に手を置いて慰められた。


「僕はスケベじゃないっ・・・!」


一般的男子学生と同じくらいだ。

・・・多分。


「それで、決闘に賭ける景品はどうする?」

「君たちが集めた景品と、同数の景品を賭けよう」


つまり、勝った場合は単純に手に入れた景品が2倍になるということか。

思わぬチャンスに、レオの目の色が変わった。


「いいのか、クラス全員で仲良く手に入れた景品をそんなに賭けてよお?」

「もとより、そういう計画で行くとみんなには伝えてある。問題は無い」

「なら遠慮なく貰うと言いたいとこだが・・・」


レオがこちらを見据えてきた。


「シュウ、受けるか?」


レオが聞いてきたが、決まっている。


「もちろん決闘に参加するよ」


そもそも点数得点の大半を独占されてしまった以上、僕には選択肢が無い。

もしかしたら、僕の選択肢を潰すために点数得点の回収をしたのかもしれない。


「ルールは2対2のチーム戦だ。お互いのチームから片方を代表者として選出して、代表者が戦闘不能になったら負けでどうだ?」


話を聞いてレオが少し考えている。


「・・・シンプルだな。戦闘不能の条件は?」

「体内魔素が3割を切ったら戦闘不能としよう」


体内魔素は魔法に対する抵抗力になる以上、減りすぎると大ケガにつながる可能性があるから、それくらいが妥当か。

少し考えた後に、レオが口を開いた。

その口角が少し上がっていたのは気のせいではないだろう。


「いいだろう、その条件でやろうぜ」


どうやら、勝算が高いと見たんだろう。

自信がありそうだ。


「・・・いい返事だ」

「・・・その自信、打ち砕いたる」


途端に山田君と芦屋(あしや)君の魔素が急激に高まるのを感じた。

それも、かなりの強さだ。

芦屋(あしや)君は学年4位だったからある程度強いのは予想していた。

ただ、山田君はさっきイノシシを追い払った時よりも圧倒的に強く、芦屋(あしや)くんと並んでも遜色がない。


(さっきは、実力を隠してたってことか・・・!!)


苦戦の予感を確かに感じた。


「おいシュウ、集中しろ。こいつら、思ってたよりやりそうだぞ」

「分かってるよ」


精神を落ち着かせ、周囲の魔素を体内に取り込む。

色々あって万全の状態とは言えないが、戦えるはず。

覚悟を決めて相手を見据える。


「準備万端と言った訳だな。・・・よし」


始まるか。


と思ったが、突如二人の魔素が霧散した。


「では、勝負は明日だ!!」

「・・・は?」


ここまで盛り上げておいて明日なの?

僕の体内魔素が大分減っちゃってるから正直助かるといえば助かるけども。


・・・はっ!


もしかして、僕たちの魔素が減っていることに気付いて明日にしようとしているのか?

あくまでフェアな対戦を望んでいるのかもしれない。


「山田君、もしかして・・・・・・」


声を掛けると、山田君が真剣な表情で頷いた。


「山菜を適切に保存しなくてはいけないからな。早くキャンプ場に戻らなくては」

「あ、そういうこと・・・」


全然違ったわ。

じゃあなんでさっき魔素を高めたんだよ。


結局、2人はそのまますたこらとキャンプ場に引き返していった。


「えっと、レオ、とりあえず探索したら帰ろうか」

「・・・俺あいつら嫌いだわ」


散々勿体ぶった挙句やる気を削がれたレオの眉間には、探索中常に眉間にしわが寄っていた。

結局その後は何事もなく、キャンプ場に戻って一日を終えた。

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