トレジャーハント2日目-7
「さすが、この国が誇る観光名所になるだけあって、いい景色だな」
「そうだねー・・・」
「あんまり景色とか興味なかったが、ここまでの絶景だと来てよかったなってなるな」
「そうだねー・・・」
「なんだ?テンション低いじゃねえか」
「いや、景色はすごく良いよ。こんな絶景なかなかお目にかかれないし」
「じゃあ何で微妙な顔してんだ?」
「うん、それはね」
「なんで、この絶景に、巨大なクリーチャーがいるんだ!!!」
視線の先には、碧水時ハイランドが生み出したカルガモのクリーチャー、もといマスコットである『ガモッピー』がいる。
その目は相変わらず焦点が合っておらず、不安感を掻き立てられる。
「本当にびっくりしたよ!ふと顔を上げた時にあの巨大な顔がこっちを見てた時は心臓が冷たくなったよ!」
20mはゆうに超えているその姿はマスコットではなく、だいだらぼっちとかの妖怪と肩を並べていると思う。
「知らないのか?この長い道のりを歩みきった者だけが出会える『祝福のガモッピー』だが?」
「呪いの間違いだと思うんだけど?!」
このどこを見ているのか分からない焦点のズレた目。
不安になるほど傾いた首。
開いたクチバシから出てる真紫の長い舌が見た目の悪さを増長させている。
この奇々怪々としたカルガモのゆるキャラのどこに祝福の要素があるのか教えて欲しい。
「女どもがなんでこいつを好きなのか分からなかったが、こうしてみると趣があっていいじゃねえか」
「この世界の人の感性狂ってるよ!」
少なくとも元居た世界では、化け物の傍らで景色を堪能することに趣というものは存在しない。
「中は展望台として作られているから入れるらしいぞ。クチバシの中からみる景色はまた一見の価値があるそうだ」
「無駄に凝った作りだね・・・」
正直全くと行っていいほど入りたく無いが、上位景品がある確率が非常に高いので渋々中に入った。
中には螺旋階段があり、それが展望台まで続いていた。
展望台となっているクチバシの中からは、僕たちが来た道を高みから見通す事ができた。
「通ってきた時には気づかなかったが、いい景色じゃねえか。どうだ、お前も少しはテンション上がって来たんじゃないか?」
「そうだね、巨人に捕食された気分だよ」
ガモッピーの口の中から見ていなければ間違いなく絶景だっただろう。
何故か口の中が無駄にリアルに作られていて、手に届く位置にある舌に触ったら少し柔らかくて気分が頗る悪い。
「おいノリ悪いな。中間テストがやばいのは分かるが、せっかくの観光スポットなんだ。もう少しテンション上げたらどうだ?」
「まあそれもあるんだけど」
案の定というか、道中で手に入った景品にテストの点数は一つもなかった。
代わりに下位景品の食券だったり上位景品の3000円金券バンバン見つかったのは不幸中の幸いか。
先ほどまで不機嫌だったレオがご機嫌なのはそういうことだ。
「しかし、とうとう点数景品を回収しているやつに出会わなかったな」
現在地点は僕とレオが最終目的地に設定していた『希望の峠』である。
つまり、ここに来るまで点数景品を獲得出来なかったし、回収者をしばいて景品をぶんどることも出来なかった。
「はあ・・・。結局、初日と3バカから巻き上げた15点だけか・・・」
「お前、社会科以外は普通に勉強できるんだろ?だったら、残りの15点くらい普通に取れるだろ?」
「ぐぅ・・・」
普通だったら取れるだろうが、僕はこの世界の歴史や社会情勢など一切知らないから厳しい。
残りの15点を、知らない国の知らない歴史の事柄を答えなければならないのだ。
それには時間が足りるか微妙すぎるし、そもそもテストは今回で終わらないのだ。
次回以降の分も、予備として取っておきたい。
「まあいいや。とりあえず探索しようぜ」
そう言うとレオが辺りを探索し始めたので、僕も探索を開始した。
探索すること十分。
「うーん、見つからないねー」
珍しく、景品が見つからなかった。
「碧水蒔高原の一大観光スポットだ。景品を置かないってことは無いと思うんだがな」
レオの言う通り、今まで探索した観光スポットでは必ず景品が見つかっていたので無い可能性は薄いはず。
途中足踏みしてしまったとはいえ、僕たちより先に回収されてしまった線も薄いだろう。
「もしかしたら下の方にあったのかな?」
「・・・うーん、注意していたが、見逃したか?」
せっかく長い階段を上って来たのに、無駄足だったか。
肉体的にも精神的にも少し来るものがあるな。
「ゴメン、ちょっと休憩するね」
せっかくだし、景色でも見ながら休憩しようかな。
ガモッピーの嘴の方に移動して柵に背中を預けるように座り込む。
ぼーっと景色を見ていた時に、なんとなく嘴と舌の間に違和感を覚えた。
「あれ、なんかある?」
目を凝らしてみると、おそらく景品キューブのように見える。
「レオ、もしかしてアレかな?」
「ん、どれだ・・・。あー、そうっぽいな」
灯台下暗しというかなんというか、展望台から見えるガモッピーの嘴の裏にめちゃめちゃ目立たない様にキューブが設置されていた。
「あんな目立たないところにあるとは珍しいな」
「ていうか柵の外側だし、見つけさせる気が全くないよね、これ」
ここにあると当たりをつけていたから見つけられたものの、なんとなく探索に来た人は絶対見つけられないだろう。
キューブから景品を回収しようと柵の外側に出たところで、デバイスが振動した。
「あれ、これミッションタイプだ」
「じゃあ上位景品確定だな」
ミッション内容を確認するためにデバイスを確認する。
画面には『凄い衝撃をキューブに与えよう』と表示された。
「へー、こんなミッションもあるんだー。強い衝撃ねえ、どうしようか・・・ってレオ!?」
一瞬の迷いも無しに、レオが嘴から外にキューブを投げ捨てた。
少しの間の後に、カーンという音がした。
「魔法使って壊すとか面倒臭えだろ」
「いやまあそうだけども、せめて下に人がいないか確認しようよ」
少なくとも僕たちの魔法の練習の為に存在するミッションなのに、魔法を試そうともせず一瞬でポイ捨てはどうかと思う。
「おら、とっとと下に降りて景品貰うぞ」
「・・・・・・レオって、はぐれメタルとか好きそうだよね」
「俺の好きな言葉は効率だ」
レオは全くブレないから、もはや清々しいまであるな。




