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トレジャーハント2日目-6

競馬の予想してたら1ヵ月終わってた

仮に連絡も無しに待ち合わせに1時間遅れる人がいるとしたら、相当なズボラか、何か事故や事件が起きてやむを得ず連絡が出来なかった人だけだろう。

僕はもちろん後者なのだが、待ち合わせをした人間がファミレスで15分待たされただけで貧乏ゆすりが止まらなくなるような、ドが付くほどの短期な男なので気が滅入ってしまう。


「いや、きっと話せば解ってもらえるはず。3バカに決闘を挑まれて、巨大イノシシに追いかけられて、崖から落ちたといえばきっと・・・・・・殴られるだろうなあ・・・・・・」


冷静に考えて意味が分からなさすぎるな。

なんだよ、巨大イノシシって。

荷物が重くて立ち往生していたおばあさんを助けていたという言い訳くらい、信じて貰える可能性が低い気がする。


遠目に見える合流地点では岩場に腰掛けているヤンキー、もとい友人の金剛(こんごう) レオ見て、諦めのため息がでた。


しょうがない、一発くらいは殴られよう。

遅れたのは事実だし、諦めよう。

そう思いレオとの距離を詰めた時、気が付いた。


「あれ、意外に落ち着いてそう?」


正直もっと不機嫌が表情に出てるのかなと思ってたけど、全然そんな気配はない。

まだ友人としての日は長くはないが、あれはそんなに怒ってないと思う。


ちょっとレオに対して凶暴なイメージを抱きすぎていたかもしれない。

「いやー、ごめん、ちょっと道が混んでてさー」

「ならしょうがないか。って山道が混んでるわけあるかーい。ははは」

くらいで落ち着いちゃったりするのかも。


若干希望的観測が入りすぎている気がしなくもないが、これ以上時間を掛けても遅れた事実はなくならないし、行ってみよう。


「い、いやーちょっと道が・・・・」

「まずは関節を極めて、次に背骨を・・・」


よし、一旦引き返そう。

幸いこっちの声は聞こえなかったみたいだ。

どうやら怒っていないのではなくて、怒りの臨界点を超えて逆に冷静に見えるやつだ。

どうやって僕を破壊するかを考えている。


一旦引き返して対策を立てようと思い引き返そうと振り返った瞬間、背後に魔素が急激に集まっていることに気付いた。


これは絶対ヤバい!


「死ねええええええ!!」

「食らうかああああ!!」


殺気を感じ、咄嗟に水弾を放ち軌道をずらす。

僕の顔面すれすれを、礫が飛んで行った。


「っちいい、外したか!」

「落ち着いてレオ!礫を顔面に飛ばすのは殺意のある攻撃だよ!」


追撃に備えて水弾を生成する。

そこで、からかっているようなレオの表情に気付いた。

やっぱり、そんなに怒ってなかったらしい。

なんて性格が悪いんだ。


「さて、冗談はさておき、何があった?」

「いま、顔面への投石を冗談って言った?」


戦国時代でも採用されていた、歴とした攻撃方法なんだけど。

まあそれは一旦置いといて、レオはなぜだか僕の身に色々あったことを知っているみたいだ。


「お前の動きがおかしかったのはデバイスのGPS機能で把握してる。なにか妨害でもあったか?」

「ああそっか、このデバイスにそんな機能ついてたね」


すっかり忘れてたけど、遭難防止でGPS機能がついてるって言ってた気がする。

それで僕の動きが変なことに気付いて、遅れても怒ってなかったのか。

マジで助かった。


「妨害ってわけじゃないんだけど、ちょっと不運な事故があって」

「なんだ?話してみろ」


自分でも意味分からない目にあったと自覚があるから、少し言いにくいな。


「実は、猿堂たちと決闘して、その後に巨大イノシシに追いかけられて崖から落ちちゃっ・・・その手に握っている岩をしまうんだレオ。本当なんだ」


まだ話の途中だと言うのに、土魔法でこぶし大の岩を生成していた。

気持ちは分かるけども。


「なんだ、冗談でも言ってるのかと思ったぜ」

「仮に冗談だったとしても、人に岩を投げようとしないでよ・・・」


今後のレオとの付き合いを少し考えなければ、そのうち本当に怪我をするかもしれない。


「まあこれも冗談だ。お前も妨害にあってるんじゃないかと思ったんだがな」

「『お前も妨害』って、穏やかじゃないね」


その口ぶりからすると、どうやらレオは何かしらの妨害を受けていたのだろうか。


「直接的なものじゃねえ。・・・お前、景品のテストの点数何個取った?」


テストの点数?

あれ、そういえば1個も取ってない。


「今日は1個も・・・まさか、レオも?」


レオが頷く。


「俺も1個も取れてねえ」

「そ、そんな・・・・・・」


いくらテストの点数が上位の景品に設定されているとはいえ、2人で探索して今日0個はおかしい。

このまま終わってしまったら、僕の夏休みは社会科のテストの点数は赤点まっしぐらだ。

今からこの世界の歴史を勉強して試験を挑むのはまず不可能だし、本当にまずい。

憐れむような表情のレオが、僕の肩に手を置いた。


「まあしょうがねえな。残念だが、お前の夏休みは補修で決まりだ」

「いやだああ!!」


異世界に転生して初めての夏休みが補修なんて嫌すぎる。

しかも、補習として全く知識の無いこの世界の社会史を学び続けるのはかなり辛い。

・・・そうだ!


「交換システムがある!持ってる人から交換すれば良いんだ!」

「それも手の一つだが、難しいと思うぞ」

「え、どうして?」


少し真剣な表情になったレオが話しだした。


「俺なりに仮説を立ててみたんだが、この点数の手に入りにくさの原因で可能性が高そうなのは2つ。1つ目は単純に手に入りにくい場所にあるということ。上位景品になるにつれ、獲得数が減っているから間違い無いだろう」

「10個景品を見つけても1個くらいしか見つからないからね」


それは初日の時点で分かっていたことだ。


「2つ目は、テストの点数の位置を完璧に特定した人物がいる可能性だ」

「それなら見つからないのは納得できるけど・・・」


筋は通ってるけど、どうなんだろう。


「仮に特定されていたとして、こんなに見つからないことってあるの?」


僕たちは事前に現地の情報を手に入れるだけ手に入れて、景品の場所をある程度特定している。

そんな僕たちより、優位に事を運んでいることになる。


ついてでた疑問に、レオが頷き、答えた。


「特定した情報を複数人で共有すれば可能だな」

「確かに、食券や金券と違って単独で沢山集めててもそんなに意味なさそうだしね」


なんか変な方向に話が進んできてしまっている。


「ここまで見つからないと一部の生徒が独占しているのはおかしい話じゃない。まああくまで可能性の話だがな」


そうはいうけども、レオが話すってことは結構可能性が高いと思ってるってことだろう。

レオは現実的なことしか言わないからな。


「なんだ、この話を聞いても意外に冷静じゃねえか」

「まあ、騒いだところで解決しないからね」


僕の夏休みがかかってるから冷静にもなる。


「それでどうするシュウ?テストの点数に関してはお前の問題だから、今後の立ち回りについてはお前が決めろ」

「・・・そんなの決まってる」

「ほう、どうするつもりだ?」

「とりあえず、予定通り山岳エリアを探索する。そして・・・」

「そして?」


テストの景品がただ単に取得が難しいというだけなら、この後の探索で見つかる可能性はある・・・はず。

そして問題は、一部生徒が独占している場合だ。

その場合だったらやる事は一つ。


「そして・・・、独占してそうな奴を見つけ次第、ボコボコにして景品を奪う!!」

「・・・・・・お前、やっぱり滅茶苦茶焦ってるだろ」

「冷静だよ。冷静に、夏休みを満喫したいと思ってるだけだよ」


僕の夏休みを妨げるものは、何人たりとも許さない。

ただそれだけだ。


「可能性の話って言ってんのに。やっぱりペア組む相手間違えたか・・・」


遠い目をしている友人を尻目に、探索を再開した。

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