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御曹司がきた

心の中の男子高校生を呼び覚まして書いてます。

遊んで魔法の練習をしてを繰り返していたら4月になっていた。

今日は待ちに待った魔法科への入学式だ。


「五十嵐さーん、準備はできてますかー?」


萌生(めい)さんが様子を見に来てくれたみたいだ。

入学までの間、お米や野菜を分けてくれたり、料理を作ってくれたりとあまりの面倒見の良さにすっかり甘えてしまっている。


「あっ、ネクタイ曲がってますよ!ハンカチやティッシュは忘れてないですかー?持ち物にちゃんと名前を書きましたか?」


こっちが返事をする前に背伸びをしてネクタイを直してくれている。

最近の萌生さんはお母さんみたいだ。

僕ってそんなにだらしなく見えるのだろうか?


すると下の階からレオもやってきた。


「おはようさん。さすがに今日はちゃんと起きたか」

「おはようレオ。さすがに今日は寝坊しないよ」

「それくらいの常識はあって安心したぜ」


二人とも僕をなんだと思っているんだ。


「まだ時間に余裕があるが、一応早めに出ようぜ」


入学初日で何があるか分からないし余裕を持って行動するのは賛成だ。


「そうだね。あ、ネクタイありがとうございます」

「第一印象は大事なので、注意してくださいね♪」


ネクタイを直してくれた萌生(めい)さんの後ろでレオが難しい顔をしてこっちを見ていた。

・・・どうやら僕のロリコン疑惑は完全に晴れていないみたいだ。

違うよ、ちょっと萌生(めい)さんの面倒見がいいだけだよ。


鞄の最終チェックし、外に出る。


「それじゃあ、行ってきます!」

「はい、行ってらっしゃい」


萌生さんを尻目に、意気揚々と学校に向かった。



碧水蒔(へきすいじ)高等学校までは徒歩で約30分。

歩きながら学校に着いてからの予定をレオと確認した。


「まずは学校についたら校門にクラス割の張り出しがある。そんで教室に行ったら学校の説明と備品が支給されて今日のところは解散って流れらしい。」

「初日だし、結構あっさりだね」

「だな。ダラダラするのは性に合わねえし、そんくらいが丁度いい」


大通りを抜け、やや勾配のある坂を上ると、その先に碧水蒔(へきすいじ)高等学校の校舎が見えてきた。

3年前に新設されたこの高校は碧水蒔(へきすいじ)財閥の財力を惜しげもなく使い、遠目で見てもかなり巨大な建物だということが分かる。


学校に近づきにつれ、人が増えてきた。

そのほとんどが新入生だろう。みんな制服がピカピカだ。


「結構多いね。何人くらいだろう」

「今年は各クラス30人で10クラス。去年は5クラスだったらしい」


1年で倍か。それだけ魔法が注目されてるってことか。


校門前には人だかりが出来ていた。

僕の身長ではギリギリクラス割が見えない。


「レオー、見えるー?」

「ちょっと待ってろ。・・・お!同じクラスだな、10組だ!」

「本当?良かったー!」


この学校にレオ以外の知り合いがいないので正直安心した。

人がどんどん増えてくるので早めに教室に向かおうと思ったその時。


辺りのざわめきが止んだ。


後ろを振り返ると校門の前に黒塗りの高級車が止まっていた。しかも3台も。

車から黒服が4人も降りてきて、僕より少し小さめの身長の坊ちゃんヘアーの男の子が降りてきた。

穏やかな表情からは優しそうな雰囲気が、歩様や佇まいから気品を感じ取れるくらい存在感がある。


あまりの仰々しさに、校門の周りに集まった人たちがみんな無言になった。

黒服達が掲示板の前までどんどん進んでいく。


「10組か。よし、向かうぞ」


黒服の1人がそう言うと、そのまま校舎に向かっていった。


・・・何だったんだ今の。なんか同じクラスみたいだったし。


「ねぇレオ、今の何?」

「知らねえのか?あれは白雲(はくうん)財閥の御曹司だよ。ここ碧水蒔(へきすいじ)高校を作った財閥とライバル関係にある」


財閥がどんどん出てくるな。


「ライバル関係なのにここに入学したの?」

「さあな、金持ちの考えることはわからねえよ。ただ、相当過保護に育てられてるって有名だぜ。」


レオはあまり興味がないみたいだ。

なんとなく校舎に向かう黒服達を見ていたら、(くだん)の御曹司がこけた。


黒服達に緊張が走ったのがこちらからでもわかった。


「坊ちゃんんん!大丈夫ですかああ!!!」


先頭を歩いていた黒服が大袈裟に騒ぎ出した。

あまりの剣幕に周囲の人も驚いている。


「大丈夫、ちょっと段差に(つまづ)いただけだから」


顔を抑えながら御曹司が立ち上がる。


碧水蒔(へきすいじ)いい!新設された学校と聞いていたが、いい加減な工事をしおって!!!」

「いや、大丈夫だって・・・これくらい・・・」

碧水蒔(へきすいじ)高校の責任者に連絡をしろ!至急対策を取らせるのだ!」

「はっ!」


黒服の一人がスマホで誰かに連絡を取り始めた。

その様子は真剣そのものだ。


「えっ何が起きたの?転んだだけじゃないの?」

「だから言っただろ、過保護で有名だって。昔、デパートの階段から落ちて大けがした時には、デパートの所有権を奪い取って更地にしたらしいぜ」

「いや、過保護ってレベルじゃないよ・・・」

「更地にしたっていうのはあくまで噂だけどな」


噂と言うが、転んだだけで今の喧騒だと本当の可能性も否定できない。

僕たち、あれと同じクラスになるの?

今後の学生生活に一抹の不安を感じた。

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