一方そのころ3
「んー、さいっこーにおいしー♪」
「さすが碧水蒔!フードコートとは思えないくらいおいしー♪」
「チ、チーズケーキも食べようかな・・・」
花の女子3人組が夢中になるくらい、このフードコートのデザートは美味しい。
本当かどうかは分からないが、海外から一流のパティシエを呼びつけたという噂も聞くくらいだ。
それにしても叶野さんは本当によく食べるな。
僕よりも小さいのに僕より食べてる。
「む、これ以上は食べ過ぎになってしまうな・・・。リンよ、余った大福はお前にやろう」
「は!ありがとうございます!・・・・・・じゅるる、新様から頂いだた大福・・・じゅるるる・・・・」
新君から貰った大福を食べているリンさんはとても嬉しそうだが、何故だろう、少し怖い。
せっかくキリッとした顔が、涎が垂れている笑みで台無しだ。
幸い、女子3人組はケーキに夢中で気づいていないみたいだ。
「・・・おいおい、大丈夫なのかあいつ?」
影下君がとても不安げな表情で彼女を見ていた。
「ま、まあリンさんは新君の前だといつもあんな感じだから大丈夫・・・多分・・・」
リンさんとは中学時代から面識があるが、年々何かが壊れている気がする。
新君が特に気にしていないみたいだから、大丈夫、だと思う。
そんな様子を眺めていた時、ふとフードコートの入り口の方に視線をやると数人の生徒が店員と話しているのが見えた。
男子生徒3人と女子生徒1人の4人組だ。
なんの気もなしに見ていたら、先頭に立っていた男子生徒の声が聞こえてきた。
「ああ、すいません。食事をしに来たわけじゃないんです。すぐに出て行きますから・・・・・・。おい、どのへんだ?」
そういうとそのグループのもう一人の男子生徒がタブレットを操作しながら辺りを見渡している。
「ちょっとまって。お店の中だと座標が分かりにくくて・・・・・・」
難しい顔をしながらタブレットとにらめっこしていたが、入口横のにあった『ガモッピー』の立て看板を調べ始めた。
おもむろに立て看板をひっくり返したその時に、男子生徒が声を上げた。
「多分、この辺に・・・・・あった!」
あった、って、もしかしてトレジャーハントの景品を見つけたってこと?
まるで場所が分かり切っていたかのような、ピンポイントでの捜索だったけど。
しかも、お店にある立て看板をひっくり返して見付けるという、普通だったら間違いなく見付からない位置の景品を手に入れていた。
その様子を見ていた新君が口を開いた。
「6組の者だな。魔法成績は最下位と噂されているクラスだが・・・。どうやらあのクラスにも切れ者がいるらしい」
「今のって、トレジャーハントの景品を見つけたんだよね。すごいね、あんなところの景品見付けるなんて」
新君が腕を組みながら、にやりと意味深な笑みを浮かべた。
「今の者たちはどうやら景品の位置が分かっているらしいな。先ほど『ネイチャーコースター』に乗っていた時にも景品を見つけていた」
「新君、動体視力すごいね」
ジェットコースターに乗りながら視界に移っている人の動きを追えるのは凄すぎる。
「ふふふ。これは我がライバルの動向が気になるところだな」
「あっ!もしかして、昼食を食べる前に気になってた秀介のことって、今の人たちのこと?」
「そうだ。テーマパークを探索しているときに6組で構成された他のグループも確認している。つまり、クラス単位での行動だろう。ふっふっふ、いくら我がライバルと言えども勝つのは難しいだろうな。やはり、碧水蒔高校に来て正解だったな」
そう語る新君の表情は楽しげだ。
蒼天院の一族は強者を好む。
力だけではなく、智謀を巡らせ戦うような者を特に。
きっと、この作戦を組み立てた6組のリーダーと秀介たちのトレジャーハント対決の行方が気になってしょうがないのだろう。
突然、そんな彼の表情に陰りが差した。
その視線の先には、先ほどの4人組の後方に、素行のよろしくなさそうな3人組の男子生徒たちがいた。
各々のニヤついた笑みには他人を見下しているかのような、そんな様相が覗える。
その様子に気づいたリンさんが口を開いた。
「あれは、先日6組の生徒に対していじめを起こして厳重注意をされた3人組ですね。退学も検討されていたみたいですが、証拠不十分で謹慎で済んだみたいですね」
「ふむ。たしか、先程の4人は6組所属だったな」
あまり当たってほしくない予想が、頭を巡る。
「新君、あれってどう思う?」
腕を組み、少し考えるような素振りをする。
「ふむ。いじめの被害クラスと、その実行犯3人組。十中八九、そういうことだろう」
どうやら同じ意見みたいだ。
おそらく、因縁を付けようとしているか、景品をカツアゲしようとしているか、もしかしたら景品をピンポイントで探し当てているのを見て場所の法則を聞き出すつもりか。
あるいは、その全てかもしれない。
新君の表情がさらに険しくなる。
普段はあまり見せることのない、確かな苛立ちを感じる。
「・・・いつの世も我利我利の亡者がいるのは嘆かわしいことだな。不愉快極まりない」
「・・・僕は先生に伝えてくるよ」
席を立とうとした僕を、新君が手で制した。
「まあ待て。碧水蒔も馬鹿ではない。問題を起こした者たちを野放しにはしないだろう」
「でも、先生たちもずっと様子を見て回れるわけじゃないよ」
その間になにかあっては意味がない。
「そうだな。だから、リンを行かせよう」
「リンさんを?」
横にいるリンさんに視線をやると、キリッとした佇まいでそこにいた。
先程新君から大福を貰っておかしくなっていた人物と同一人物とは思えない。
「なるべく穏便に・・・。ただし、あまり目に余るようであれば、碧水蒔高校流に対処してやれ」
背筋に冷たいものが走る。
先ほどまでテーマパークの遊具にはしゃいでいたとは思えない圧だ。
「かしこまりました」
恭しく一礼をしたの後、リンさんが颯爽と駆けて行った。




