トレジャーハント2日目-4
毎日投稿です(大嘘)
「ぬおおおおおおおおお!あんのイノシシ!いつまで追ってくるつもりだあああああ!」
山岳エリアと森林エリアの境目。
なぜ僕は巨大イノシシに終われているのだろうか。
所詮野生動物、魔法で攻撃すれば驚いて追い払えると思ったが、追い払うどころか怒りくるって勢いが増す始末。
木や岩を障害物にして距離を稼いだり、魔法で怯ませたりしてはいるものの、直線になったら距離を詰められるということを繰り返していた。
幸い模擬魔法戦の後から体内に魔素を積極的に取り込んでいたので、体力はまだまだ持つ。
だけど、少しでも油断したら3バカのように突進されて終わりだ。
というか、碧水蒔ハイランドはリゾート施設だし、こんな巨大イノシシいて良いのか?
キャンプ場に戻ったらクレーム入れてやる!
「ぷごおおおおお!」
「危ねええええ!」
背後に殺気を感じ、咄嗟に横っ飛びで木の裏に隠れると横を巨大イノシシが通り過ぎる。
躱されたことにより意気消沈するわけでもなく、Uターンしてまたこちらに突進してくる。
非常に困ったことになった。
野生生物というのはここまでしつこいのか。
しかもこの巨大イノシシ、動きこそ直線的だが切り返してくるのが早く、障害物の多い森の中でも器用に距離を詰めてくる。
猪突猛進、という言葉はこの巨大イノシシには当てはまらないらしい。
このままだとジリ貧だ。
あまり時間を掛けすぎてもトレジャーハントする体力も無くなってしまう。
「早めに何とかしないと・・・・・・そうだ!」
幸いここは森林エリアと山岳エリアの境目。
平面的なチェイスがダメなら、イノシシがおおよそ登れないような高所に行こう。
ここは人が来ないような悪路。
その分起伏があり人が登れてイノシシが登れなさそうな岩場くらいあるはず。
「・・・!あの小さな崖なら丁度いいかも?」
木々の間から山の方を見ると、おあつらえ向きに3メートルほどの高さの崖があった。
岩盤はでこぼこしていて上手くクライミングすれば登れそうだ。
よし、方針は決まった。
次の突進で森林エリアを離脱して、崖に一直線だ。
「ぷぎいいいい!」
早速突進してきたな。
一旦呼吸を整えて、遅延弾をセット。
相手の突進に合わせて、すれ違いざまに水弾を放つ。
「くらえ、水弾!さらに遅延弾を起動!」
「ぷぎい!」
すれ違いざまに水弾が命中し、一瞬巨大イノシシが怯んだ。
さらにディレイショットを起動して時間を稼ぎ、山岳エリアに駆ける。
「ぷ、ぷ、ぷぎゃあああああ!」
巨大イノシシが咆哮を上げ、怒り狂っている。
「少し位ダメージ食らってくれよ・・・!」
いくら追われながらで威力が出ないとはいえ、自分の魔法の威力のなさに悲しくなるな。
林間学校が終わったら、威力を上げる練習を絶対しよう。
威力が弱かったとはいえ、距離を離すことは出来た。
目の前の3メートルほどの山肌を登る。
後ろから地面を蹴る音と、鳴き声がどんどん近づいてくる。
「間にあっ・・・・・た!!」
「ぶぎゃ!」
間一髪、突進が当たる直前でのぼり切る事ができ、巨大イノシシが岩盤に頭をぶつけた。
この高さでは、四足歩行生物は登ってこれまい。
下の方では巨大イノシシがぷぎぷぎと鳴きながらこちらを睨んでいた。
まったく、手間取らせおって。
「所詮四足歩行動物。ここまでは来れないだろ!」
「ぷぷううううううぎいいいいいい!」
地団駄を踏みながら凄い怒ってる様はまるで人間みたいだ。
・・・動物のくせに感情表現が豊かだ。
とはいえ、いくら怒ったところでここまでは来れまい。
そしてしばらくぷぎぷぎしていたら、崖から離れて行った。
「・・・・・・諦めたか?はあ、とんだ災難だった」
野生動物の執着怖すぎる。
「しかし、変なところまで来ちゃったな・・・」
山岳エリアであることは間違い無いのだが、無我夢中で走り続けていたから場所が分からない。
現在地を探ろうと、ポケットからスマホを取り出した。
「げ、画面割れて反応しないし・・・」
どうやら逃げる途中で割ってしまったらしい。
どうしたもんか。
一旦トレジャーハントは置いといて、なんとかしてレオにコンタクトを取らないと。
とりあえず案内板のあるところまで歩いて行けば何とかなるか。
そんなことを考えていたら、崖下の方からドドドと音が聞こえてきた。
「この音は・・・」
先ほどまでさんざん聞いていた音がどんどん近づいてくる。
崖下の方を振り返ると、先程の巨大イノシシが突進してきていた。
「いや、まさかね・・・」
いくら巨大なイノシシとはいえ3メートルほどもある高さの崖を飛び越えるなんてそんなわけ。
「ぷぎいいいいいいい!」
ドンッ、という音とともに巨体が宙に舞った。
「ぷううううぎいいいいい!」
「ええ・・・嘘でしょ・・・」
見事に空に跳ねた巨体は、僕と同じ高さまで届いてしまった。
驚愕する僕に、巨大イノシシはドヤ顔をしているような気がする。
「第二ラウンドってやつですかね・・・?」
「ぷぎぎ」
そうだ、と言わんばかりに巨大イノシシが頷いた。
「うおおおお!水弾くらえええ!」
とっさに水弾を放ち、当たったかどうかの確認もせずにその場から離れる。
最悪である。
先程は障害物の多い森の中だから何とか逃げられたが、山岳エリアではそうはいかない。
ただただ悪い足場に開けた視界、狭い道幅と何から何まで悪条件だ。
僅かにある岩や魔法を駆使して間一髪逃げ続けるが、このままでは突進を喰らうのは時間の問題だ。
「くっ、万事休すか・・・!」
このままだと巨大イノシシの突進をくらい、崖下に真っ逆さまだ。
いくら体内魔素があるとはいえ、ケガで済むかどうかは分からない。
「いっそのこと、突進をいなして崖下に突き落とすか?」
このイノシシは明らかに普通ではないし、いっそここで駆除した方が他の生徒の為にもなるんじゃないか?
タイミングを見誤ったら崖下に真っ逆さまだけど、ここは緩やかな傾斜のもとに建設された碧水蒔ハイランド。
体内魔素で強化された肉体なら何とかなる・・・はず。
「やるか、やられるか・・・・やってやる!」
覚悟を決め、崖を背にしてイノシシを迎え撃つ体制を取る。
背後には杭にロープがまかれている簡易的な手すりがあるが、巨大イノシシの突進には無力だろう。
つまり、上手く避けられたらイノシシは崖下へ。
ダメだったら僕が崖下に落ちるというシンプルな状態だ。
「ぷぎいいいい!」
呼吸を整える暇もなく、すでに目前まで迫っていた。
「当たってくれよ!」
巨大イノシシの目に向けて、水弾を放つ。
勢いは殺さずに、あくまで目くらましになる程度に。
「ぷ!」
良し、上手いこと命中した。
後は当たる寸前に全力で躱す!
躱そうとした瞬間、体重を預けていた背中の杭から感覚が無くなった。
「・・・は?」
あれ、さっきまでイノシシを見ていたのに、空が見えるんだけど。
これ、崖下に落ちてないか?
「ちょっとおおおおお!何でえええええ!」
自分が落ちていると気づいたときには、体のどこにも地面に触れている感覚がなくなっていた。
「え、欠陥工事?!ちょ、碧水蒔財閥さんんんん!」
イノシシといい、すぐに緩む手すりといい、財閥のくせに手を抜くなんて!
戻ったら、絶対に、ぜぇったいに、クレーム入れてやる!
「って、そんなこと考えてる場合じゃない!」
いくら体内魔素で強化されているとはいえ、背中から落ちたら洒落にならない。
万が一、頭から落ちたら、死・・・・。
「いやだあああ!こんなのでまた死にたくないいいい!」
落ちていく視界の端に、木が映る。
つまりもうすぐ地面に叩きつけられることを意味する。
そしてすぐに、背中と足に柔らかな衝撃が走った。
・・・あれ?思ったより痛くない。
というか、誰かに支えられてる?
「・・・・・・君は一体なぜ、崖から落ちて来たんだい?」
目を開くと、麦わら帽子を被った困り顔の山田 壱郎君にお姫様抱っこの体勢で受け止められていた。




