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トレジャーハント2日目-3

「ごらあああああああ犬塚(いぬづか)てめええええ!俺たちの景品がかかってるんだぞ!最後まで戦えやああああ!」

「うるせええええ!相性が悪いんだよ!大体、お前らがもっと粘ればこっちの次弾が間に合ってたんだよ!」

「せめて根性見せろって言ってんだよアニオタがよお!」

「んだとこのナルシストがあ!」


あっさりリタイアをした犬塚(いぬづか)と、その様子に激怒した雉瀬(きじせ)が取っ組み合いをしている。

さっきまでいいチームワークだったのに、結局こうなるのか。


その様子を遠巻きに眺めていたら、デバイスが振動した。

『決闘の決着を確認。規定の景品が移動します』

デバイスの画面にはテストの点数を含む3バカの景品が加算されていた。

思わぬ戦いだったけど、これで目標の半分のテストの点数が手に入った。


「くそ、変態のくせにやるじゃねえか・・・。もう少しこっちに条件を有利にしても良かったか・・・」


渾身の水魔法を食らい倒れていた猿堂(えんどう)が悔しそうな表情をしながら起き上がる。


「負けたくせに口だけは達者だな。あと、提示された条件より厳しかったら多分受けなかったからな」


正直、思惑通り短期決戦で終わらせられたのは運が良かった部分もある。


結果は圧勝だったとはいえ、犬塚(いぬづか)の大火球の狙いがもう少し正確だったら、雉瀬(きじせ)がこちらの牽制に油断せず躱していたら、結果は逆転していてもおかしくはなかった。


「3人ともただのバカだと思ってたけど、成長出来るバカだったんだな」

「結局バカってところは変わらねえのかよ!」


すまん、お前らを素直に褒めるのはなんか嫌だわ。


「しかし、遅延弾(ディレイショット)・・・凄い魔法だった。ネーミングもなかなかだ」


遅延弾(ディレイショット)のネーミングの良さが分かるとは、雉瀬(きじせ)よりかは猿堂(えんどう)の方がセンスがあるようだ。


「しかし、どういう原理なんだ?授業では聞いたことが無いぞ?」

「原理はわからんけどできた」

「なんだそれ?」

「魔法なんて原理がほとんど解明されてないんだし、そんなもんだろ」

「まあ、確かにそうか」


納得の表情で猿堂(えんどう)が頷く。

そもそも魔法を使うために必要な魔素ですらなんなのか正確に分かっていないのだ。

魔法を送らせて発動するくらいの発見なんて今後いくらでも出てくるだろうし、そもそも魔法を送らせて発動させるテクニックが世界の何処かではすでに発見されている可能性だってある。


今はそんな話より、本題に入りたい。


「そんなことり、聞きたいことがある」

「・・・なんだ?」

「僕の場所を教えた人がいると思うんだけど、誰?」

「っ!・・・なんの話だ?」


いま、一瞬だけど驚いた表情をしたってことは、予想が当たったかな。

聞かれることが予想外だったのだろう、平静を装っているがいつもの感じが無い。

僕が感じていた違和感は正しかったかな。


「お前らは山岳エリア方向のスタート地点に居なかった。つまり別のスタート地点に行っていたはず」

「・・・それで?」

「別のスタート地点に行った先で僕たちのスタート地点を知って、こっちに向かってきたんじゃないか?」

「・・・考えすぎだ」

「・・・考えすぎ、ねえ」


最初から違和感があった。

僕とレオが目指したこの山岳エリアはスタート位置からかなり離れていて、トレジャーハントの探索場所として選択するには面倒な場所ということだ。

山岳エリアは景品の獲得が見込めるという考えをしないとまず来ることはない。

なのに、3バカは別のスタート位置から僕の居場所にたどり着いたということは、後から誰かに聞いたということになる。


つまり、僕とレオの会話を誰かが聞いていて、それを3バカに流した可能性が高い。


別にそれ自体には問題は無いけど、猿堂(えんどう)の口から誰が教えたのか出てこないし、しかも隠そうとしていることが問題だ。

誰かに聞いたということをわざわざ隠す必要はないはずだ。

なら、なんとか口を割らせるしかないか。


「上位景品、つまりテストの点数と3000円券以外の全部の景品を返そう。だからお前らに情報を渡したやつの名前を教えてほしい」

「いや、それは・・・」


返事を聞き終える前にデバイスを操作して、先ほどの勝負で手に入れた景品を全て返した。

ちょっと強引なやり方だけど、簡単に手に入る景品ならこの後いくらでも集められる。

それよりも今は、この得体の知れない情報提供者の正体が知りたい。

観念したような表情の猿堂(えんどう)の口から出た言葉は、意外なものだった。


「悪い、誰に聞いたかという話は教えられねえ。・・・そういう条件での勝負だった」


そういう条件での勝負?

このレクリエーションで勝負と言ったら、トレジャーハントの景品を賭けて戦う決闘システムしかないだろう。

つまり。


「・・・お前らもしかして、決闘システムで負けた、のか?」


こくりと、猿堂(えんどう)が頷いた。


「さっきお前とやったルールと、全く同じルールでな・・・」


この3人は弱くない。

いま話している猿堂(えんどう)も模擬魔法戦でクラス代表の一人だったんだ。

それを倒せるなら相当な実力者ということが分かる。


「俺たちもその時まで知らなかったんだが、決闘システムで賭けられるものは景品だけじゃなくて、条件も賭けられるんだ。言わば契約のような」


そんな使い方があったのか。


「で、お前らが受けた条件は?」

「それも言えない。条件は細かく設定されていたが、決闘で賭けられたものや対戦相手の名前は一切言えないんだ。破った場合、学校側からペナルティがあるらしい」

「・・・そうか」


支給されたデバイスのシステムでの契約している以上、学校側にこの会話が筒抜けになっているのだろう。

残念だけどこれまでだな。

猿堂(えんどう)たちに接触してきた人物は気になるけど、ここまで用意周到な人物に契約を課されてしまっている以上、これ以上は情報が出てこないだろう。


「とりあえず、こっちから出せる情報が無いから、さっき送ってもらった景品は返そう」

「いや、分かったこともあるし、受け取ってくれ」


お風呂場でのひと悶着は僕も悪かったし、これで清算させてくれ。


「・・・こういうサッパリとしたところが女子に人気なのか?」


猿堂(えんどう)がぶつぶつ言っているが、なんて言ったのか聞こえなかった。

よくわかんないけどまあいいか。

結構時間食っちゃったし、そろそろ探索を再開するか。


「もう行くのか?」

「うん、探索を進めないと」


背を向け歩き出そうとしたところに、雉瀬(きじせ)犬塚(いぬづか)の喚き声が聞こえてきた。


「ぐぬぬぬぬぬぬ」

「がるるるるるる」


まだ取っ組み合いをやってたのかあの二人。

ヒートアップしすぎて景品返してやったことにまだ気づいていないみたいだ。

お互い距離を取ったと思ったら、全力で魔素を集めている。


「くらええええ!これがお前の腐った根性を叩き直す水の拳だ!!!」

「お前の腐った顔面を焼き払う火球だああああ!」

「ちょっ、お前ら・・・」


どうやらただの取っ組み合いが、行くところまで行ってしまったらしい。

お互いの全力の魔法が放たれた。

雉瀬(きじせ)が拳に纏った水魔法と、犬塚(いぬづか)の火の球魔法がぶつかり合い、辺りに水や火の粉が降り注いだ。


「おいおい、山岳エリアとはいえあまり勢いよくやると森の方に魔法が・・・」


と、言ったそばから火の粉が一つ、森の方に飛んで行った。


「ぷぎゃあ!」

「え!なんの声?」


火の粉が舞った方向から、なんか動物みたいな声が聞こえたような。

茂みの方に目を凝らすと、おそらく全長2メートルは超えているであろう、巨大なイノシシが出てきた。

額が焦げ煙が燻っていることから、どうやら火の粉が直撃したらしい。


「・・・へー、この世界にもイノシシっているんだー」


突然の出来事に頭が真っ白になって変な感想が出てきてしまった。

イノシシのことはよくわからないが、なんか怒っているような気がする。

鼻息荒いし、前足を蹴る素振りをして今にも走ってきそうだし。


「おい!おかしなこと言ってないで、逃げるぞ五十嵐(いがらし)!」


しまった、呆けている場合じゃない。

明らかにあれはこちらに敵意を出している。

その瞬間、全力の魔法を撃った直後で息切れしている雉瀬(きじせ)犬塚(いぬづか)の方に走り出した。


「ちょ、ちょっと待・・・ぐはあ!」

「魔法を使いすぎて体が・・・ぐふう!」

「き、雉瀬(きじせ)ー!犬塚(いぬづか)ー!」


先ほどまで賑やかだった二人は一撃で吹っ飛ばされ、地面で白目をむいて伸びている。

体内魔素で衝撃吸収していたから無事だとは思うけど、あの様子ではしばらくは動けないだろう。


「ぷぎいいい!」

「おい、あいつこっちに来そうだぞ!」

「マジか!?」


2人を吹き飛ばしたのも束の間、巨大イノシシがこちらを見据え前足を蹴りだした。

どうやら標的は猿堂(えんどう)らしい。


「クソ!絶対避けてやる!」


そう意気込みながら風魔法を身に纏い、巨大イノシシの突進を見据える。

だが、まずい。

そこは先ほど決闘で地面がぬかるんでいる。

しかもただぬかるんでいる訳ではなく、僕のぬるぬるする水魔法でぬかるんでいるから、それはもう途轍(とてつ)もなく滑る。

はやく伝えなくては!


猿堂(えんどう)、足元がぬかるんでるから気を付け・・・」


と、言った瞬間に猿堂(えんどう)が横っ飛びのモーションに入る。

案の定、僕の水魔法に足を取られ滑って転んだ。


「な、なにい!足元が・・・ぐふうううっ!」

「え、猿堂(えんどう)ー!」


注意が間に合わなかった。

気が付いたときには猿堂(えんどう)が空中を錐揉みしながら地面に叩きつけられていた。

大分やばい落ち方したけど、風魔法を纏っていたし大丈夫だと信じよう。

それよりも、自分の心配をしなくては。


「ぷぎいぃ・・・」


瞬く間に3人を葬った巨大イノシシが、こちらを見据えてきた。

ここの周辺には障害物がない上に地面がぬかるんでいて、あまりにも不利過ぎる。

僕くらいの魔法の威力では突進を何とか出来るか怪しいし、ここは逃げるしかない。


「水弾!そして戦略的撤退!」

「ぷぎ!」


水弾が巨大イノシシの顔面に命中し怯んだ隙に森林エリアの方向に駆けだした。


「ぷぎいいいいいい!」

「やばい、めっちゃ切れてる!」


さっきの水弾でさらに焚き付けてしまったらしい。


「色々考えなきゃいけないことがあるのに、どうしてこうなった!」


キレる巨大イノシシとのチェイスが始まった。

ブクマ、評価、感想もらえたら嬉しいですー。


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