トレジャーハント2日目-2
3バカとの勝負。
レオには悪いけど、この勝負は引かないほうがいい気がしたからやらせてもらおう。
負けて景品持ってかれたら、レオに土下座だな。
まあ、初めから負けるつもりで戦うつもりはないけどね。
さて。猿堂、雉瀬、犬塚か。
直接やりあったのは水魔法使いの雉瀬のみ。
僕と同じで魔法の発生速度が速いスピードタイプ。
僕の魔法発生速度よりは遅いが、油断はできない。
火魔法使いの犬塚は魔法の発生は遅いが、威力はあるハードパンチャータイプ。
一撃があるので要注意ではあるが、逆に攻撃の間隔が遅く戦闘に絡む時間は少ないだろう。
そして一番警戒しなくてはいけないのが、風魔法使いの猿堂だ。
この中では唯一、僕と同じBランク魔法使い。
ギリギリBランクで模擬魔法戦では良いとこ無しで終わったが、蒼天院 新君の規格外の魔法でやられただけで、代表に選ばれるほどの実力はある。
実戦形式の練習もある程度こなしていたし、攻撃防御スピードとバランスが良い。
実力が安定している猿堂が主力として戦って雉瀬がサポート、犬塚がフィニッシャー。
うーん、こいつらいつも喧嘩してるけどチームとしての相性良さそうだな。
とりあえず雉瀬と猿堂に魔法を連打されて長引いて、犬塚にとどめを刺されるとかいう展開は避けたいな。
となると短期決戦を狙うのがベターかな。
多分今回のルールだと相手に魔法を2,3発当てれば倒せるはず。
僕の魔法の威力が高ければ1発で倒せるんだろうけど、まあしょうがない。
逆にこっちは攻撃をくらうことが出来るということも念頭に置いておこう。
この後の探索することも考えると、体力と体内魔素は温存しておきたいし、犬塚以外の攻撃なら3発までは許容の範囲内としよう。
・・・うん、ある程度まとまったかな。
戦闘前に頭の中でのシミュレーションを終え、3人に向き直ると、デバイスの画面から機械的な声でカウントダウンが開始された。
『ゴー、ヨン、サン・・・』
3バカの表情はいつもより真剣だ。
初日のトレジャーハントの成果がかかってるからな。
多分、僕も似たような表情をしてしまっているんだろうな。
『ニー、イチ・・・』
魔素を引き寄せ、初撃の準備をする。
『ゼロ!』
戦闘開始の合図とともに、僕と魔法と3バカの魔法がぶつかり合う。
「まあ、3対1なんで初撃は絶対負けるんだけどね!」
魔法を放った瞬間に大きくその場から離れる。
そもそも魔法の威力に自信はない上に3対1なので、同時に魔法を放ったら当然負ける。
3バカの魔法が僕の魔法を容易く飲み込み、ほとんどそのままの勢いで僕が元居た場所に風の刃や水弾、そして大火球が降り注ぐ。
「うわっ、火が消えないし!」
山岳地帯で土が剝き出しの地面なのにしばらく燃えたままだった。
威力だけなら犬塚はやっぱり脅威だ。
今の一撃で分かったけど、3人とも思ったより上達してるし、油断したらすぐに負けるな、これ。
「雉瀬、詰めるぞ!」
「オッケー!犬塚は後方からでかいの頼むぞ!」
「任せろ!」
すかさず2人が距離を詰め、犬塚が後方で魔素を溜めている。
「こんなの付き合ってられないな!」
後方で集中している犬塚から距離を取りつつ、この場で唯一の遮蔽である岩陰に隠れる。
「逃がすか!猿堂は逆側から回ってくれ!」
「了解!」
一緒に突進してきた2人が距離を取ったってことは、挟み撃ちを狙ってるってことかな。
「とりあえず削っておかないと話にならないか」
岩陰から一瞬ピークし、超速で水弾を生成し放つ。
「しまっ・・・ぐっ!」
当たればラッキー程度のけん制気味に放った魔法だったが、避け損ねた雉瀬に1発当たった。
「気を付けろ雉瀬!あいつの魔法発生速度はイカれてるんだ!姿が見えてから避けるんだと間に合わねえぞ!」
「くそっ!五十嵐の野郎、また早くなってやがる!」
やっぱり一撃だけだと倒すことはできなかったか。
さっきよりも慎重に距離を詰めてるし、もうラッキーパンチはないだろうな。
ただ雉瀬の焦り具合から見て、あと1発で倒せそうだな。
「お前ら当たるなよ!」
「?!」
魔法を生成し終えた犬塚が声を上げ、大火球を飛ばしてきた。
「くっ、離れるしかないかっ!」
距離を取ったことで威力が削られているとはいえ、当たるわけにはいかない。
慌てて離れてすぐに、岩の周辺を火が覆いつくした。
「ナイスだ犬塚!」
「正面からやり合うぞ!」
この隙を見逃してくれるわけないか!
風を纏った猿堂がかなり距離を詰め、その逆側から雉瀬の水弾が飛んでくる。
猿堂の拳にそこそこの密度の風が集まっている。
これは当たるとまずいかな。
「くらえ!暴風拳!」
「なんだその技名は!名前負けにもほどがあるだろ!ていうかなんで技に名前を付けてるんだよ!」
何故か技名を叫びながら殴りかかってきた猿堂の拳を避けつつ、雉瀬の水弾をこちらの水弾で相殺する。
新君といい、魔法に技名つけるの流行ってるのか?
しかし、予想していた動きではあるけど、こうも絶え間なく攻撃をされると魔法が上手く生成できなくてきついなこれ。
いくら僕の魔法発生速度が神速だと言っても、それは集中しているときの話だ。
攻撃され続ければどうしても集中力が切れ遅くなってしまうし、威力も低くなってしまう。
完全に僕の対策をしている動きだ。
しょうがない。
3バカに使うつもりはなかったけど、やるしかないか。
魔法練習が楽しすぎてずっとやってたら出来るようになったあの魔法を。
まずは突っ込んでくる猿堂から距離を放さないと。
「うおおおおお暴風拳!」
「くらえ水弾!」
「なに!」
今まで雉瀬の魔法に割いていたリソースを猿堂に使い、カウンター気味に水弾を当てる。
もちろん、風を纏っている猿堂には大きいダメージは与えられないが、距離離れた。
直後、雉瀬の水魔法が肩や腕に直撃した。
「ぐっ!いってー・・・」
これは体内魔素が1割くらい削られたかな。
雉瀬の魔法威力が低いからこれくらいで済んだか。
しかし、痛みに怯んでる場合じゃない。
集中力を極限まで上げ、魔法をセットする。
「よし!行けるぞ猿堂!」
「ああ、今が勝負!」
攻撃が命中したのをきっかけに、もう一度2人で距離を詰めてきた。
よし、狙い通り。
このタイミングなら、犬塚の魔法はまだ間に合わない。
ここで決める!
「もらった!」
「覚悟だ五十嵐!」
全身に風を纏った猿堂の拳と、雉瀬の水弾が迫る。
「くらえ・・・!遅延弾!」
「なにっ?!」
瞬間、猿堂に5発の水弾が襲い掛かる。
いくら風を纏っているとはいえ、5発同時の水弾には耐えられるはずもなく、猿堂のデバイスから体内魔素が設定した数値いかになったことを告げるアラームが鳴り響く。
その様子を見ていた雉瀬が狼狽している。
「う、嘘だろ!」
ふふふ、驚いたか。
いつものように魔法の練習していたら、魔法が発生する瞬間を遅らせられることに気付いて、これ上手く利用したら同時にたくさん攻撃出来るんじゃね?と思って密かに練習していたのだ!
正直自分でも原理が良く分かってないけど、なんか使えるから良し!
どうやらあまりの衝撃に攻撃された猿堂も見ていた雉瀬も驚きを隠せないようだ。
「あんなに技名を付けることをバカにしておいてちゃっかりつけているだと・・・!しかも遅延弾って・・・ウソだろ・・・」
「そっちかよ!カッコいいだろ!」
「ぐふっ!」
技名に難癖をつけようとしていた雉瀬に5発の遅延弾を叩きこんでやると、雉瀬のデバイスからもアラームが鳴り響いた。
・・・暴風拳よりはカッコいいだろ!
「まあ、いいや。それより犬塚。あと一人だけどどうする?」
「・・・リタイアします」
いくら犬塚の魔法が強力でも、それは時間を掛ければの話。
スピードを重視しようとすれば並みの生徒以下の魔法になってしまう。
速さがある僕との相性も最悪なのでソロになっては結果が見えている。
思ったより苦戦したが、予定通り短期決戦で勝利を飾ることが出来た。




