トレジャーハント2日目-1
「見つけたぜ・・・五十嵐・・・」
「・・・一体何の用だ?」
目の前には、昨日風呂場でひと悶着あった3バカが目の前にいた。
怒りを押し込めたような表情の3人に、ややひりついた空気が流れる。
先頭に立っていた猿堂がこちらに指を向け、口を開いた。
「桜もとうに散り、春の陽気が過ぎ去って、梅雨も明けた。今では少し暑いくらいだな・・・。それなのに、お前の頭は春のまんまみたいだな・・・」
「何言ってんだ?」
夏の熱さと温泉で頭が湯だったのか?
「ふん、鈍いな・・・。つまり、俺たちがお前の春を終わらせに来たって言ってんだよ!」
「・・・本当に何言ってんだ?」
ダメだ、全然分からない。
よりによってレオと別れた後に来るなんてタイミングが悪すぎる。
やけに好戦的な3バカに頭を抱えつつ、先ほどまで順調だった道中を思い返した。
レオとコテージを出立し、スタート地点に着いてすぐに2日目のトレジャーハントがスタートした。
初日よりもやや人数が多かったものの、ライバルになりそうな実力者もおらず、最短最速でルートで山岳エリアに到着することが出来た。
予想よりも好調なスタートに、レオもご機嫌だった。
「俺たちが山岳エリアに一番乗りだな。スタートにいた連中は、昨日俺たちが探索した森林エリアに行ったみたいだし、これは山岳エリアの景品荒らせるぞ」
「昨日で山岳エリアに到着した人はいないだろうし、これは期待できるね」
初動だけで言えば昨日より良いと言いっていいだろう。
これで上位景品であるテストの点数と3000円金券が多く手に入れば言う事なしだ。
やや荒れ始めた道を進んでいくと、道中のかなり目立つ位置に白い景品キューブが落ちており、景品を獲得しつつ奥へと進んでいった。
やがて三又に分かれた分岐が現れ、それぞれが山の方に進んでいた。
「ここが分かれ道で間違いないな。じゃあ予定通り、ここからは分かれるぞ」
「オッケー。僕が右でレオが左だったよね」
「ああ、それで間違いない」
「じゃあ、お互い頑張ろう!」
レオと軽く拳を合わせ、それぞれの道に進んだ。
僕の目標は二人で合計30点の点数で、現在は6点分とまだまだ足りない。
フィールド存在するテストの点数は3点が300個だから、頑張れば出来ない量じゃないはずだ。
決意を新たに、意気揚々と歩を進めた。
山岳エリアとはいえ、結局は碧水蒔ハイランド内であり、ある程度整備されているのでやや道が悪いくらいで普通の山道と比べると大したことはなかった。
傾斜も非常に緩やかで、山というよりは少し道の悪い丘を登っているような感覚だ。
景色も開けているので、森林エリアと比べると景品キューブも非常に発見しやすい。
順調に景品を獲得していったが、やはり上位景品にはありつけていなかった。
自分の位置を確認するために、一旦休憩を取ろうと近くにあった岩に腰かけた。
「うーん、昨日の時点でテストの点数と3000円金券は獲得が難しいのは分かっていたけど、ここまで集まらないとはなー」
もう少し簡単にしてくれてもいいのに。
学校側が大量の景品を用意した割には上位景品が見つからないので、真面目に勉強しろというメッセージを感じざるを得ないな。
とは言ってもこの世界の社会科の知識が皆無の僕にとっては、このトレジャーハントで点数を獲得しないと夏休みが消滅する可能性があるので引くに引けない。
「上位景品がありそうなスポットはまだたくさんあるし、先を急ごう」
あまりもたもたしていると、後続に追いつかれる可能性もあるしね。
立ち上がった瞬間、自身の来た道から駆け足のような音が聞こえた。
まさか、もう追いつかれたのか?
「見つけたぞ!五十嵐!」
そう危惧したところで、例の3バカに追いつかれたのだ。
---そして冒頭に戻る。
「俺たちは、お前の春を終わらせに来た・・・!」
一体なんのことを言っているのだろう。
春、という事は色恋の比喩表現をしているのだろうが、彼女も出来ていなければ今朝に関してはクラスの女子から怯えられ距離を置かれる始末。
自分で言ってて悲しくなるほど浮ついた話がないのだ。
「なんの話をしてるのか分からないけど、多分お前らの勘違いだぞ」
「とぼけるなよ五十嵐・・・。お前が埜上さんや佐野さんといい感じになってたよなあ・・・」
なるほど、他と比べると交流のある埜上さんグループの話か。
だがちょっと待ってほしい。
「埜上さんは誰に対しても明るく接してくれるだろ。お前らみたいなゴ・・・バカみたいなやつらでも普通に話してるだろ」
「いまゴミって言いかけてバカって言い直したならお前結構酷いぞ」
つい口が滑ってしまった。
何も答えずにいたら、今度は雉瀬が口を開いた。
「まあ、埜上さんは10組の天使だからな。ギリギリ許してやろう。だが、佐野さんに関しては許せねえ!」
「そうだ!あんな黒髪清楚な人、滅多にいないのに、なんでお前と仲が良いんだ!」
雉瀬の発言に、犬塚も同調した。
佐野さんが清楚・・・?
あのBLに対して異常なまでの執着を見せる佐野さんが?
そうか、こいつらはあのBLに命を捧げた本性を知らないのか。
「お前らよく聞け。佐野さんは、現実を捻じ曲げてまで男同士の絡みを妄想するやばい人だ。清楚とは真逆の人なんだ」
佐野さんには申し訳ないが、ここは本性を伝えさせてもらおう。
「佐野さんはいつも教室で優雅に読書してる大人しめな人だろ!」
「そうだ!あんな清楚な見た目をしている人がBL好きなわけないだろ」
「残念ながら本当だ」
案の定、現実を直視してくれなかったか。
教室で読んでいる本は間違いなくBL小説だろう。賭けてもいい。
「佐野さんだけじゃねえ。お前は白雲ともイチャイチャしてるよなあ!」
「それは本当にちょっと待て」
何を言い出すかと思ったら、男である悠君を引き合いに出してきた。
「冷静になれ。悠君は男だぞ?」
「ああ、確かに白雲は男だ。だが、たまにそこら辺の女子を上回る可愛さを見せる時があるからなあ」
「それは確かにそう」
悠君には申し訳ないが、一部の隙も無く反論することが出来ない。
だがまあ分かった。
とにかくこいつらはモテなさ過ぎて、普通に異性と会話しているだけの僕ですら許せないのだろう。
面倒臭いことこの上ないが、今の状態で引き下がるような話の分かる奴らではない。
それに、昨日の風呂場での事件はこちらにも非がある。
一応、相手の要求くらいは聞いておこう。
「それで、お前らの要求は何なんだ?」
「・・・俺たちの要求は一つ。手持ちの景品全てを賭けての決闘だ!」
こいつら、よりによって決闘システムを利用しに来たのか。
だが、決闘システムはお互いの同意が必要だ。
僕が乗る理由もない。
「悪いが、レオと分配する約束なんだ。決闘はしないよ」
きっぱりと断ったが、何故か3人は不敵な笑みを浮かべている。
「ときに五十嵐。お前がテストの点数をかき集めようとしているって話は本当か?」
「?!」
なぜこいつらがそれを知ってるんだ?!
一体どこから漏れたんだ。
「その表情、図星だな」
「だとしたら、どうなんだ?」
三人がそれぞれデバイスをこちらに見せてきた。
映っていたのは景品獲得画面。
その中に、テストの点数の獲得数がそれぞれ1つずつ表示されていた。
「俺たちはそれぞれ1つずつ、つまり9点分の点数を獲得している。お前はのどから手が出るほど欲しいんじゃないか?」
「・・・なるほどね」
今回はなかなか本気らしい。
ここまでこっちの情報を手に入れているとは思わなかった。
こちらとしても、景品は多いに越したことはない。
負けた時のリスクはでかいが、聞きたいこともできた。
やる価値はある。
「ルール次第では受けてもいい」
宣言を聞き、3人が不敵に笑う。
「いい根性だな五十嵐」
「それで、決闘の内容はどうするんだ?そっちは3人だし、あまりこっちが不利だと流石に受けられないぞ」
「安心しろ。なるべく公平になるように、考えてある」
猿堂がデバイスを操作すると、体内魔素の表示画面に移行した。
「ルールはデバイスの魔素計測機能を使った1対3の模擬魔法戦だ。もちろんハンデは付ける。こっちはお前の体内魔素を5割削ったら勝ち。そっちは俺たちの体内魔素をそれぞれ10%削ったら勝ち。簡単だろ?」
「10%削られたやつは即退場になるのか」
「もちろん。じゃないと1人は逃げ回って二人で戦い続けるっていう戦法ができてしまうからな」
良く考えてある。
確かにこのルールなら、人数差があっても対等くらいの戦いになりそうだ。
10%程度なら1発魔法がクリーンヒットすれば削れる量だから、1人をしっかり狙うことが出来れば人数差はそこまで響かないだろう。
頭の中で、戦闘をシミュレーションする。
・・・うん、悪くない勝率になりそうだ。
「分かった、受けよう」
「オッケーだ。じゃあデバイスから決闘を受理してくれ」
デバイスには先ほど説明されたルールと、受託するか否かの選択が表示されていた。
3人から距離を取り、受託するを選択した。




