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ブレイクタイム

コテージ内は1クラス分の生徒が入ってもある程度スペースに余裕があり、一般的なキャンプ場のコテージよりかなり大きい造りになっている。

食事を取るためのスペースと、昨日は埜上(のがみ)さんたちがカレーを作っていたキッチン。

談話室にはソファーや机などの人工物が設置されているが、質素な色合いと素材の柔らかさだったり、窓からは高原の景色が広がっていたりと、自然との調和を乱さないように配慮されている。

もちろん宿泊施設として利用できるように、二階には寝室がある。

今回は巨大テントで就寝しているが、こちらで寝泊まりするのも楽しそうだ。


昨日はトレジャーハントに出向いており、コテージには夕飯の時に足を踏み入れただけだったが、改めて見渡すとさすが高級リゾート施設と言った感じだ。


そんなコテージ内の談話室。

トレジャーハント開始までレオと(ゆう)君となんとなく集まっていた。

シーリングファンからの微風が心地よい中、レオが思い出したかのように話を切り出した。


「そういえば、ランキングは見たか?」

「景品の獲得数のやつ?昨日はごたごたしてたからまだ見てないや」


事前に連絡があったがお風呂場での騒ぎですっかり忘れていた。

まあそもそも上位を狙っている訳ではないから、そこまで興味もなかったけど。


「景品獲得数のランキングは、俺たち二人が1位と2位だったぜ。しかも3位以下には結構差があったぜ」

「そうなんだ。じゃあ森林エリアを回ったのは正解だったね」


狙っている訳ではなかったが、結果トップだったみたいだ。

僕たちほど今回のトレジャーハントに全力を出している人の方が珍しいということか。

手首のデバイスを操作して、ランキングを確認してみる。

景品獲得数上位10位以内が一覧で表示された。


「聞いたことある名前の人がちらほらいるね。えっと、四津(よつ)君に、7組の大島君と5組の中山さんもいるね。あ、猿堂(えんどう)が10位にいる」


昨日は噴水広場で相まみえた四津(よつ)君はもちろん、王取合戦で戦った7組の大島君と田辺君や、(あらた)君のクラスと戦った5組の中山さんの名前もあった。

しかも3バカの一角の猿堂(えんどう)がランクインしている。

普段はバカばっかりしているから忘れがちだけど、一応実力はあるんだよな。


「模擬魔法戦に出たメンツは総合成績上位に入る実力者が大半だったし、当然だな。むしろ少ねえくらいじゃねえか?」


上位10人のうち模擬魔法戦に参加した生徒は、先ほど名前を挙げた4人にレオと僕を加えて6人。

総合成績上位に入れる実力のある人は、一般生徒とかなり実力が離れているので確かに少ないかもしれない。

しかも四津(よつ)君は昨日でトレジャーハントは切り上げるって言ってたし、さらに減るかもしれない。

まあ、せっかくリゾート施設に来ているのにトレジャーハントだけしかしていない僕たちの方が変なのだろう。

今後の展望を考えつつランキングを確認していると、あることに気付いた。


「そういえば、山田(やまだ)君と芦屋(あしや)君の名前がないね」


山田(やまだ)君の実力は分からないが、芦屋(あしや)君は総合成績学年4位と紛れもない上位の成績だ。

猿堂(えんどう)がランクインしているくらいだし、やる気がありそうだった芦屋(あしや)君の名前が無いのは少し不思議である。

レオもそのことには気づいていて、理由を考えていたのだろう。

先ほどまで雑談をしていた時よりか、少しだけ真剣な表情になる。


「まあ、悪いスタート位置を選んで景品を獲得できなかった線が濃厚だろう。実際は分からねえがな」


実力があるのに獲得数が少ないという事は、運が悪かったという風にレオは結論付けたみたいだ。

芦屋(あしや)君の景品獲得数が少ない理由を「運」としたということは、実力に関しては疑っていないレオの心慮が伺える。

つまり、まだ警戒すべきで同じエリアの探索を避けたいという事だろう。

今日の行動について、一度話しておいた方が良いかもしれない。


「今日のルートはどうする?」

「予定通り山岳ルートを中心に回る。仮にエリアが被った時の為に昨日ルートの修正候補をいくつか考えておいた。お前にも地図データを送っておく」


レオがスマホを弄ると僕のスマホがすぐに振動した。

送られて来た地図データには、ルートの修正案がいくつも記されていた。

既に先も考えていたとは、さすがレオ。

お金が絡むと先読みの力が凄い。


「ねえ怜雄(れお)、僕にもそのデータ頂戴?」


トレジャーハントの話になってからずっと喋っていなかった(ゆう)君がおもむろに口を開いた。


「いいけど、白雲(はくうん)も参加すんのか?」

「しないけど、ちょっとでも気分を味わいたくて」


そう言った(ゆう)君は少し寂しそうに見えた。

やっぱり、足が悪くなければ参加したかったんだな。

もちろん一緒に探索できるなら僕もしたかったけど、無理をして足をさらに悪くしてしまう可能性もあるのでそういう訳にもいかない。


秀介(しゅうすけ)


不意に(ゆう)君から声を掛けられた。


「僕のことは気にしなくていいから、ちゃんとテストの点数取らないとね」

「・・・知ってたの?」

「そりゃ、あれだけ社会科の授業中に難しそうな顔してたらね」


どうやら僕がトレジャーハントに必死な理由は察されていたみたいだ。

ちょっと恥ずかしい。


「夏休みは一緒に遊びたいんだから、補修になんてならないでよね」

「分かった。頑張るよ」


そうだ。

この林間学校で遊べなくても、夏休みで目一杯遊べばいい。

レオが立ち上がり、軽くストレッチを始めた。


「時間だな。そろそろ行くぞ」

「オッケー。じゃあ行ってくるよ!」

「行ってらっしゃい!」


僕の平穏な夏休みの為に、トレジャーハント2日目が始まる。

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