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男湯

「いだだだだだ!もう耳離してってー!」

「何か行動を起こすときは、先に言えと言っただろう?」


宗悟(そうご)が10組のロッジに向かったと聞き、何か騒ぎを起こしていなかと様子を見に行ったら、案の定、ひと悶着を起こしていた。

しかし、ただ単に絡みに行った訳ではなく、そうした方が有利に事を進められると判断したのだろう。


中学時代からの友人であるこの男は、見た目に反して完全な不良という訳ではない。


人を食ったような態度と、素行の良くなさそうな見た目も相まってよく騒ぎの渦中にいるだけだ。

せめて不良のような恰好を改めてれば騒ぎが起きにくくなると進言したこともあったが、ポリシーに反すると受け入れはしなかった。

本人も面倒ごとを楽しんでいる節があるので、見た目や行動の矯正はとうの昔にあきらめた。


ただ、大事な場面では合理的かつ計算的に物事を進めるという点に関しては、かなり評価している。

その頭脳は、勝負ごとに対して異様なまでに発揮されるということを知っている。

今回の作戦を提案したのはこの男だが、細かい調整はすべて自分がやっていたので、唐突に行動されると作戦にずれが出る可能性がある。


6組のロッジまで引っ張っていた耳を放す。


「いたたた・・・もうちょっと手加減してよ」


流石に大人しくなった宗悟(そうご)に向き直り、目を見る。


「・・・勝てるのだろうな?宗悟(そうご)


芦屋(あしや) 宗悟(そうご)という男に対する疑念からではなく、信頼しているからこその、ただの確認の言葉。

へらへらしていた相貌が引き締まり、眼光に鋭い光が奔る。


「任せろ。・・・トップ取りに行くぞ。壱郎(いちろう)


先ほどまでのふざけた態度とは変わり、情熱すら感じさせてくれる。

こういうところがあるから、嫌いにはなれない。


「良し、ならまずはこのトレジャーハント、完勝するぞ」


勝負は明日。

情報は揃っている。

後は、夜に発表される景品の獲得ランキングがどうなっているかだ。

それで、今回の作戦が上手く行っているのかの答え合わせだ。

久しく感じていなかった高揚を押さえつつ、宗悟(そうご)とともにロッジの一室に戻った。





山田(やまだ)君と芦屋(あしや)君が去ったあと、今日の疲れを癒すために(ゆう)君と共に大浴場へ向かった。

ちなみにレオはとっとと先に行ってしまったので、後を追いかける形になった。

大浴場はテーマパークに隣接されているホテルにあり、収容人数500人とその名に恥じぬ大きさで有名だ。

グランピングの利用者にも開放されており、碧水蒔(へきすいじ)ハイランドの人気の一端を担っている。

しかも林間学校中は一般のお客さんがいないので、泳げるほどスペースが有り余っていて、もはや温水プール状態だ。

そんな大浴場の更衣室。


「なんか、みんな結構ボロボロだね」


(ゆう)君の発言に周りを見てみると、みんなボロボロだったり疲れた表情をしている。


「トレジャーハント、みんな全力でやってるみたいだね。・・・まあ僕も人のこと言えないけど」


森林エリアを探索したため、服にが付いてしまっている。


「いいなー、僕も行きたかったなー」

(ゆう)君、別に景品いらないんじゃない?」

「・・・秀介(しゅうすけ)は分かってないなー」


(ゆう)君がちょっと拗ねたような表情をする。


秀介(しゅうすけ)たちと一緒に行きたかったの!」

「! あー、なるほどそういうことか」


今更ながら自身の失言に気が付いた。

景品が欲しいんじゃなくて、一緒にトレジャーハントをしたかったのか。

(ゆう)君は足が良くないらしいので、参加したくても出来なかったんだった。


「ごめんね(ゆう)君。明日は夕方までには切り上げる予定だから、終わったら一緒にテーマパークで遊ぼう。だから機嫌を直してよ」

「うーん、どうしようかな」


しかし、(ゆう)君は中世的な顔立ちをしているから、拗ねた顔が・・・少しかわいいと思ってしまった。

普段はしっかりしているし、魔法の腕前も凄まじいが、こういうギャップをたまに見せてくるからたまに性別を忘れてしまいそうになる。

・・・いかんいかん、(ゆう)君は男だ。


せっかくお風呂にいるんだし、ここはひとつ裸の付き合いということで軽く接触してみよう。

そしたら若干バグりそうな僕の頭も、(ゆう)君を男として認識するだろう。


まだ少し拗ねている(ゆう)君のわき腹を、指でつついてみた。

軽いいたずらのつもりだったが予想外の反応が返ってきた。


「ひゃうんっ!」


ぷにぷにとした感触に、可愛らしい悲鳴が聞こえてきた。


秀介(しゅうすけ)!何して・・・本当に何してるの?!」

「大丈夫!ちょっと頭がバグりそうになっただけだから!」


平静を保つために、気が付いたらロッカーに頭を打ち付けていた。

まさかこんな強力なカウンターが飛んでくるとは思わなかった。


落ち着け。

僕は普通に女の子が好きなんだ。

おっぱいが好きだし、お尻も大好きだ。

いくら(ゆう)君の反応が可愛らしいとはいえ、あくまで男。

変な感情を抱くんじゃないぞ、僕。


「良し、じゃあお風呂に入ろうか」

「う、うん。そうだね・・・」


突然の奇行に(ゆう)君が引いている気がするが、気にしないでおこう。

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