トレジャーハント1日目-3
方針を変更し、上位景品一点に狙いを絞り森林エリアを移動する。
トレッキングコースを少し外れたところに、渓流の水を利用した噴水が存在し、そこに景品があると当たりを付けた。
その噴水を中心に木々がぽっかりと無くなっていて広場のようになっていることから、噴水広場と呼ばれているらしい。
トレッキングコースから外れないと行けないことから、初めて来た人が見逃すことが多く、やや穴場との情報だ。
僕たちも初めてくるが、散々情報を集めていたせいで、迷わずに目的地に向かえている。
そういえば、せっかくのリゾート施設での林間学校なのに、ずっと走り回ってて観光らしいことしてないなー、と思いレオに話を振ってみた。
「噴水広場って、夕方に来ると木漏れ日から漏れる夕日の光が凄い奇麗みたいだよ。カップルに人気のスポットなんだって」
ただの雑談のつもりだったが、レオの顔がしかめっ面に変わる。
「そうなのか?・・・・・・なんでそんな話をいまするんだ?お前まさか俺のことを?!」
「なんでそうなるんだよ!観光らしいことしてなかったから、ちょっとでも気分を味わおうと思っただけだよ!」
「なんだそういうことかよ、ビビらせんなよ。別に自然なんか見ても得することなんかねえだろ」
「はー、レオは損得ばっかで心が貧しいねー」
分かってはいた事だけど、レオは観光とかするくらいだったらお金を集めるタイプだから興味が無いらしい。
景品の設置場所を予測するために一緒に調べたのに、今の話も知らないみたいだったし。
「レオはもう少しお金以外に目を向けた方がいいんじゃない?」
「俺からしてみたら、金に興味があまりないお前の方がちょっと変だと思うぜ」
別に興味が無い訳ではないけど、転移したときも貰った天使貯金があるから、とは言えないな。
3年以上不自由なく暮らせるお金を貰っていると言ったら、お金大好きのレオにボコボコにされそうだしね。
まあ、そもそも転移者と言っても信じてもらえないだろうけど。
他愛のない話をしながら噴水広場に向かっていたその道中、不意に手首のデバイスが振動した。
「レオ、ちょっと待って。いまデバイスが振動した」
「ああ、俺のデバイスもだ」
画面を確認すると、『ミッション』の文字が表示されていた。
「これって、特定の場所で発生するっていうミッションだよね?こんな何もないところで発生するんだね」
周りには特に目印になるようなものが全くない、ただの道だ。
「キューブ型の景品も適当なところに置いてあるし、ミッションも案外適当な場所にあるのかもな」
デバイスを操作し、ミッションの内容を確認してみた。
初のミッションだったが、内容は拍子抜けの物だった。
「『木の上に存在する的に魔法を放て。制限時間1分』・・・それだけ?」
「・・・的は、あれだな」
レオの指さす先には、弓道で使うような的が高さ5メートルほどの木の上に設置されていた。
別に高さもそんなにないし、簡単すぎる。
本当に当てるだけでいいのだろうか?
手を軽く振って、水弾を飛ばしてみる。
的に命中すると同時に、ミッションクリアの文字がデバイスに浮かび上がる。
そして景品獲得の文字も表示された。
「3000円金券だ。・・・こんなので貰えるの?」
「・・・まあ、冷静に考えたらこの学校に入るまで魔法使ったこと無い奴が大半だし、この難易度でも結構難しい方かもな」
「あー、確かに」
言われてみたらその通りである。
模擬魔法戦で魔法が上手い人と戦ってきたせいで忘れていたが、大半の生徒はレベルが低い。
水弾を遠くに飛ばすだけでも精一杯だろう。
僕としては手ごたえがないのでちょっと残念だ。
「何にせよ、上位景品を手に入れられたのはでかい。このままスポットを回っていこうぜ」
「そうだね」
個人的にはもう少し手ごたえがあった方が魔法を気持ちよく使えて楽しいのだけれども。
テストの点数も早めに集めたいところだし、気持ちを切り替えてトレジャーハントに集中しよう。
そしてとっとと点数を集めて、悠君たちと遊ぼう。
友人たちと遊ぶことを目標に意気込み、風水広場に向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
一方、グランピングエリア。
ここにはトレジャーハントに参加しないで、純粋にリゾートを楽しんでいる者たちが集まっている。
とはいえ、トレジャーハントの景品が思ったよりも豪華だったこともあり、残っているのはごく一部の生徒だけだ。
白雲 悠はその一人で、友人の蒼天院 新と一緒に、パラソルの下で森林浴をしながら読書をしたりして、優雅にくつろいでいた。
近くには川が流れており、時折流れてくる涼しい風が心地よい。
「たまにはこういうのも悪くないな。我がライバル白雲 悠よ!」
何故かビーチチェアに寝そべっている友人が、トロピカルジュースを飲みながら顔を向けてきた。
「そうだねー。この学校は賑やかだから、たまにはこういうのも悪くないね」
「ふふふ、そうだな」
何か含みのある表情だ。
長い付き合いだから、きっと僕の心中を察して、それでいて何も言わないでくれたのだろう。
本音を言うと、秀介たちと一緒にトレジャーハントをしたかったが、断念した。
残念だが、この足では長距離の移動はままならない。
普段の派手な言動で誤解されがちだけど、こういう優しい一面を皆に知ってほしいと思う。
「魂の休息にはうってつけの領域だな。蒼天院の血に神秘の力が満ちていくのを感じるな・・・」
そんな優しい僕の友人はたまに何を言っているのか分からなくなるが、本人は至って満足そうなので良しとしよう。
どういう意味なのか、気にはなるけど。
ふと、最近新君のライバルに認定された秀介の顔が過る。
秀介はどういう意味なのか分かっていることが多いみたいだし、後で教えてもらおう。
中二病という現象を理解していない白雲 悠は、中二病の過去を掘り返すという事がいかに惨いことかを知らなかった。




