有力生徒
「よっしゃ来いやああ五十嵐いいい!!!」
「声だけはいっちょ前だなああ!!猿堂!!!」
ここまでの成績は2対2の同点。
先ほど猿堂のシュートを防いだのでここで決めれば僕の勝ちだ。
「猿堂おおお!!絶対止めろよおお!」
「これ以上そいつを目立たせるなあああ!!」
雉瀬と犬塚が外野から騒いでいる。
この二人はすでに倒しているので猿堂を倒せば3バカは制覇だ。
自身のプライドを守るためにも、ここは絶対外せない。
右か、左か。
覚悟は決まった!
「行くぞおおおお!!猿堂!」
「うおおおお!!!」
僕の決断はゴールの右端ギリギリを突いたシュート。
猿堂も反応しているがその距離は間に合わない!
猿堂の健闘虚しく、僕の渾身の蹴りで放たれたサッカーボールはゴールネットに突き刺さった。
同時に観戦していたクラスメイト達から歓声が上がったので、観客たちに向け勝利の拳を高々に上げた。
「いいぞー五十嵐ー!」
「いがちゃんサッカー上手いー!」
オーディエンスの歓声が心地よいなあ!
「見たか3バカども!PK対決は僕の圧勝だ!」
「くっそおおおお!!!」
悔しさのあまり猿堂が地面に拳を打ち付けている。
身の程を知ったか、猿堂。
「何やってんだ猿堂おおお!!!」
「また五十嵐が目立ったじゃねえかああ!!!」
雉瀬と犬塚が汚いヤジを飛ばしているが、それすらも心地よい。
気分よくコテージの方に戻るとレオが呆れた顔で迎えてくれた。
「はあ・・・シュウ、お前何やってんだ?」
「何って、PK対決だけど?」
碧水蒔ハイランドの名物、高級食材のバーベキューに舌鼓を打った後、レクリエーションまで時間があったので散歩をしていると、3バカが僕の最近の活躍を妬み絡んできたのかPK対決を挑んできた。
同じく暇をしていた10組のクラスメイトが集まり、僕対3バカの構図ができあがった訳だが、プレッシャーを跳ね除け僕の勝利という結果になった。
「僕の負ける様をクラスメイトに見せつける作戦だったみたいだけど、何を隠そう小学校3年生までサッカークラブに入っていたからね。素人には負けないよ」
「・・・こいつと組んだの、失敗だったか」
レオが僕と組んだことを後悔しているみたいだ。
ちょっと3バカと悪乗りしただけじゃないか。
そんな諦めの表情をしないでよ。
そろそろレオに怒られそうだし、真面目にレクリエーションの話をしようと思った時、近くの草むらからガサゴソと物音がした。
なんか動物でもいるのかと思い視線をやる。
そこには両手に草を大量に抱えた男子生徒がいた。
・・・なんで草?
「ふう。これだけあれば3日は持つな・・・ん?」
「・・・あ、どうも」
視線が合った。
おそらく山菜を集めていたのであろうこの男子生徒は、七三分けの髪型に四角い眼鏡をかけ、一見すると真面目な印象を受ける。
しかし何故、林間学校に来てまで山菜を取っているんだ。
「君は、五十嵐 秀介君かな?」
「えっと、なんで僕の名前を?」
どうやら向こうはこっちのことを知っているらしいが、僕は見たこともない。
「君は模擬魔法戦で優勝の決定打を打った人間だ。1年で知らない生徒はいないよ」
「あ、なるほどそういう事か」
どうやら向こうが一方的に知っていただけみたいだ。
というか、僕って1年生の間で有名になってたんだ。
嬉しくてちょっとムズムズする。
「優勝だけにはとどまらず、同じクラスの女子を水魔法でぬるぬるにして悦に浸る鬼畜とも聞いている」
「その話は僕のアンチが流したねつ造だ。二度と真に受けないように」
クソ。まだその噂が残ってやがったか。
ぬるぬるにしてしまったのは事故だし、断じて悦になど浸っていない。
「おっと、自己紹介がまだだったな。私は山田 壱郎。6組に所属している。」
「えっと、五十嵐 秀介です」
鯱張った雰囲気を醸し出しているが、両手に山菜を大量に抱えているためギャップが凄い。
やや固い印象を受ける言葉遣いだが、なんとなく悪い奴ではなさそうだ。
「模擬魔法戦は感動したよ。本当は私も出たかったが、出場できる人数が足りなくてね。観客席で君たちの有志を羨ましく思っていたんだよ」
「それは、残念だったね・・・」
模擬魔法戦はCランク以上が5人集まらなくては出場資格が得られない。
10組は魔法経験者が偶然集まりなんの問題もなく出場できたが、そもそもスタートラインにすら立てないこともある。
「なに、悪いことばかりでもない。試合を見たクラスメイト達が、次の学校行事では絶対に優勝するぞと一丸になることが出来たからな」
どうやら僕たちの試合は他のクラスにいい影響を与えたらしい。
もしかしたら次の模擬魔法戦では戦えることになるのかもしれない。
なんとなく話し込んでいると、こちらに向かってくる人影に気付いた。
切れ長の目に髪を後ろに結んだマンバンヘアに、耳にいくつも空いたピアスは確かな威圧感を感じる。
山田君とは違い、第一印象ではあまり素行が良さそな感じがしない。
「おい壱郎。こんなとこで何やっとるん?」
山田君のクラスメイトか。
傍から見たらヤンキーに絡まれる真面目な生徒だが、山田君の表情は至って自然体なのでそうではないらしい。
「宗悟か。なに、山菜を取っていたら10組の方まで来てしまっただけだ」
「10組・・・?おっ、有名人がおるやん」
鋭さを増した目がこちらに向いた。
こちらを値踏みをするような視線だ。
「芦屋 宗悟って言いますー。よろしくなぁ」
胡散臭い奴オーラが凄い。
返事を言い淀んでいると、山田君が芦屋君に蹴りを入れた。
そんなことして山田君、大丈夫?と思ったが、芦屋君は苦笑いをしている。
「宗悟。お前はその格好と喋り方が相手に威圧感を与えると何度言ったらわかるんだ。すまない、悪い奴ではないんだ」
「いてて、普通に喋ってるだけなんやけどなあ・・・」
どうやらこの二人、見た目こそ正反対だが仲が良いみたいだ。
見た目や言動はとにかく胡散臭いが、そこまで悪い奴ではないのかもしれない。
「騒がせてしまったね。では私たちはクラスに戻るとするよ」
「うん、じゃあね」
迎えに来た芦屋君と一緒に山田君が6組に帰っていった。
「壱郎、お前林間学校に来てまで山菜取ってんのかい。んなことせんでもトレジャーハントで儲けられんのになあ」
「空き時間が勿体なかったからな。時は金なりだ」
「貧乏性やなー。ほら、半分持ったるから、とっとと帰るでー」
遠くに聞こえる二人のやり取りは長年の付き合いみたいなものを感じる。
うーん、結局あの二人がどんな人なのか分からなくなっちゃったな。
終始だんまりだったレオに印象を聞こうと思い振り向くと、何か考え事をしていた。
「レオ、どうしたの?」
「シュウ、事前に調べた有力生徒の情報、覚えているか」
「林間学校前に調べたやつだよね?・・・うーん、正直そこまで覚えてないかな」
するとスマホを取り出し、事前にまとめていた生徒の情報の一つを見せてきた。
そこには先ほど去っていった、胡散臭い格好の男が写っていた。
「芦屋 宗悟。総合成績学年4位だ。ムカつくことに成績だけで見れば、俺たちより上だ」




