到着した
都会を出て、田畑を抜け、起伏のある山道を進む。
碧水蒔ハイランドは標高800m前後に位置する
碧水蒔財閥が保有する高原と森林とテーマパークの総称で、広さは100万ヘクタールにも及ぶ国内最大級の高原だ。
そこそこ高い標高に位置するため、バス移動はしんどそうだなと思っていたが意外にも穏やかな道中だった。
田舎道の割には綺麗に整備された道が続いており、高原をリゾート地として運用するにあたり力を入れているのだろう。
途中のインターチェンジで休憩を取ったとはいえ、3時間以上にも及ぶバス移動に最初は騒がしかった車内も今は落ち着いている。
かく言う僕も今では夢と現実を行ったり来たりしている。
そんな虚ろな意識の中、バスが停止する気配を感じて目を覚ます。
車内を見渡すと半分以上が眠りについていたが、僕と同じく目を覚ます人がちらほらいた。
「起きている者は寝ている者を起こしてくれ。目的地に到着したぞ」
刺島先生のよく通る声を聞きながら伸びをし体をほぐす。
息を大きく吸い込むとぼやけていた視界が徐々に晴れてきた。
隣で寝ていたレオを起こし、車外に出る。
閉塞された空間に居たので外に出た時の解放感が心地よい。
「凄いな。大自然って感じだ」
思わず語彙を失い、月なみな言葉を口から紡いでしまうくらい、目の前の見渡す限りの草原と深い緑色の森林は圧倒的だった。
視界の遥か先には川も流れていて、自然に包まれているような感覚だ。
そして後方には僕たちが宿泊するグランピングの施設と、巨大なテーマパークがある。
本来ならミスマッチと思える自然とテーマパークの組み合わせだが、テーマパークが上手く自然と調和していてなかなか趣がある。
そんなところも子供連れの家族に人気の所以なのだろう。
先ほどまで寝惚け眼だったレオも圧巻の自然に息をのんでいる。
「ここ最近はレクリエーションの為にずっと調べてたが、実物を見ると全然違えな」
「だね。正直調べ過ぎて感動が薄れそうだなって思ってたけどそんなことなかったね」
レクリエーションでテストの点数を稼ぐことに全力を尽くし、名物スポットはもちろん秘所まで調べつくしていたけど林間学校も普通に楽しめそうだ。
辺りを見渡していると、グランピングの施設の方から声が聞こえた。
「心躍らせているようだな、我がライバルの五十嵐 秀介と金剛 怜雄!」
この特徴的に喋り方は一人しかいない。
「おはよう新君とリンさん。なんで施設の方から?」
青いメッシュの入った髪型に、夏使用になり薄手になったマントを羽織って蒼天院 新君が現れた。
隣には慎ましやかにお辞儀をするリンさんもいる。
まだどのクラスもバスから降りている段階だというのに、新君はグランピングの施設の方からやってきた。
「バスの移動は好まなくてな。私は一足先に自家用ジェットで来させてもらった」
バスで移動できる程度の距離で自家用ジェットを使うなと思ったが、住んでる世界が違うからしょうがないかと頭を切り替えた。
「それより聞いたぞ。この地に眠る宝 を狙っているそうだな?」
「眠っているというか、先生たちが置いただけだけどね」
中二病が入っているせいで無駄に壮大な言い回しになってるな。
「我がライバルたちだ。さぞ 絢爛 な 宝を持ち帰ってくる予定なのだろう?」
「今回の景品で一番価値があるの、3000円の金券だからね」
絢爛と言える景品は存在しないよ・・・
多分興味が無さ過ぎて先生の話ちゃんと聞いてないんだろう。
「宝には興味が無いが、我がライバルに相応しい活躍を期待しているぞ」
「うん、頑張るよ」
応援してくれるのは素直に嬉しいのでお礼を言っておく。
ちなみにレオは新君がとても苦手なので、隣でずっと渋い顔をしている。
「さて、私はこの地に満ち満ちている神秘の力で体を浸し、魂を休めるとしよう」
「森林浴でゆっくりするってことね」
「では、さらばだ。ライバルたちよ」
新君は後ろ手に手を振り、リンさんと共に颯爽とグランピングの施設の方に戻っていった。
去っていく後姿を見てレオがため息をつく。
「はあ。お前よくあいつとちゃんと会話できるな。俺には何を言ってるのか分からん」
「・・・いや、まあ、なんとなく、フィーリング的な?」
普通の人なら何を言っているのか分からないだろうが、中二病を患っていた時期があったからなんとなく分かってしまう。
僕の黒歴史の一つだ。
「ま、まあまあ、そんなことより早速グランピングの方に向かうみたいだよ!行こう行こう!」
「まあいいか。腹も減ったしな」
この後はお昼ご飯でクラスごとにバーベキューをすることになっている。
予定ではその後からは自由時間で、テーマパークで遊ぶもよし、自然の中でゆっくりするもよし、レクリエーションに参加してトレジャーハントをするもよしと、生徒たちの自主性に任せられている。
僕たちはトレジャーハント組だから、しっかり食べて英気を養いたいところだ。
バスから出てきた生徒で駐車場がごった返す中、足早にグランピング施設に向かった。
いよいよ二泊三日の林間学校が始まる。




