決勝戦7
話のキリが良いので明日は今まで上げた話の誤字脱字とか、伝わりにくい個所とかを修正するので次の投稿は明後日になるかも。多分。
もちろん修正だけで話の内容は変わらないです。
(この風魔法はダメージを与えようとして放ったものではないみたいだな・・・)
目路が塞がれ風が荒れ狂う轟音の渦中でも蒼天院 新は冷静だった。
視界を覆いつくすほどのこの砂塵は、明らかにフィールドから巻き上がった量ではない。
となると金剛 怜雄の土魔法によって生成された砂と見て間違いない。
この吹き荒ぶ竜巻の中ではリンに声が届かず、満足な連携が取れない。
視界も悪く、魔素の感知も少し難しくなり、奇襲をかけやすい。
なるほど、考えれば考えるほど理にかなっている。
これを私の真の力を見た後の、数秒の間に考え実行したとなるとその知恵と胆力はかなりの物だ。
力ではなく、頭脳で対抗というわけか。
我が永遠のライバル、白雲 悠のみではなく新たに表れた強者に心が躍る。
(・・・何か来ているな!?)
高揚を感じたのも束の間、前方から強い魔素を感じ、眼前に氷の盾を展開する。
盾には、自身の顔の高さと同じ位置に石の礫が突き刺さっていた。
(容赦の無さも素晴らしいぞ!)
急所への攻撃はたとえ相手が強者であっても躊躇いを生むのが人間というものだ。
金剛にはそれが感じられない。
攻撃一つで、勝ちへの執念が見て取れる。
称賛をしているその間にも、急所を狙った礫が襲い掛かってくる。
「だが、ここまでだな。賢しきものよ」
楽しいひと時だったが、時期に終わりを迎えるだろう。
視界を、聴覚を、更には連携を封じた素晴らしい策だが力が足りていない。
礫は盾に止められ、有効打にはなりえない。
白雲 悠の竜巻も勢いが落ち始めている。
ならここは堅実に耐えの一手を打たせてもらおう。
視界が晴れた時、力を出し切った2人では太刀打ちできないだろう。
蒼天院の予想通り、十数秒後には竜巻もが止んでいた。
傍らで片膝をついていたリンに手を差し伸べる。
「リンよ、無事か?」
「な、なんとか耐えられました。しかし、もうあまり持ちません・・・」
今の攻撃でただでさえ半分ほどしかなかった体内魔素を削られたらしい。
モニターの表示はリタイアギリギリといったところだった。
「新様。私の身より、相手に注意を!」
先ほどまで正面にいた位置に金剛と白雲がいない。
急いで辺りを見渡すと、自身の両サイド5メートルほどの位置に挟み撃ちするかのように移動していた。
(これが本命だったか?!)
先ほどまでの竜巻は絶好の位置を確保するための一手だという事か。
しかもこちらが状況の把握に僅かに時間を掛けた隙に、かなりの魔素を集めたみたいだ。
2人からは間違いなく今日で一番の魔素を感じる。
すぐさま魔素を集め、迎え撃つ体制を取る。
(私の魔法が強力とは言っても、じっくり準備した魔法と咄嗟に撃った魔法では威力に大きく差がでるのは当然だ。だが、そんな不完全な状態でも勝つのは私だ!)
「新君、行くよ!」
「賭けに勝った!蒼天院覚悟しろ!」
「ふっ、来るが良い!」
辺りの物を切り裂きながら進む鋭い風の魔法と、地面を抉りながら進む強勢ない岩の魔法が蒼天院に襲い掛かる。
左手を白雲に、右手を金剛に向ける。
「行くぞ!絶対零度の世界!」
一撃で猿堂と影下を葬った魔法が不完全な状態で両の手から解き放たれる。
ふざけた技名とは裏腹に圧倒的な威力を誇っていた氷柱の魔法だが、今回は違う。
白雲とレオが放った魔法に、ジリジリと押し負けている。
(流石に不完全の状態で2人はきついか!?だが、先ほどの魔法はやり過ぎたみたいだな、白雲 悠よ!)
蒼天院の弱点である防御力の無さであれば、どちらかが掠っただけでも致命的だろう。
そんな敗北が襲い掛かるかの様な状況でも、彼に流れる蒼天院の血は勝利を手にするために躰を駆け巡り最善の一手を打つ。
「リン!金剛の魔法にお前の全力を放て!」
「了解しました、新様!」
そしてこの様な窮地に立たされていても、主を絶対だと信じ命令を待つものがいた。
足りなかった魔法の威力をリンの放った魔法が補い、本来の蒼天院と相違ない力を発揮する。
文字通り全力をぶつけたリンが魔法を放った瞬間に体内魔素が基準値を下回り、ブザーとともにリタイアの文字がモニターに浮かぶ。
「ぐっ!クッソおおおお!!!」
レオがさらに魔素を注ぎ込むも、魔法は見る間に勢いを殺されていく。
最後の抵抗も虚しく、後には氷漬けになった岩だけが残された。
残るは白雲の風魔法だけだったが。
「先ほどの竜巻で力を使いすぎたな?これでは私には届かないぞ?」
「っ!見抜いていたんだね・・・」
この状況を作り出すために放った魔法で力を使いすぎ、蒼天院に届く前に消えてしまった。
『うおおおおおおおお!!』
『蒼天院強すぎだろ!』
集中していて聞こえなかった観客の声に気付く。
会場の声が消ええなくなるまで追い詰められていたのかと、蒼天院は今更になって気づいた。
地を揺らすほどの歓声に酔いしれながらも、この試合を終わらせる為に蒼天院が体をゆっくりと金剛の方に向け視線を動かした瞬間、気が付いた。
リンが、唇を噛み締め目を逸らしていたことに。
リタイアした選手は、即退場しその試合には係わることができなくなる。
言葉で選手にコンタクトすることも、ジェスチャーで指示をすることも全て禁止されている。
つまり、リンにとって目を背けなくてはいけない出来事が起きているという事だ。
猛烈な悪寒が、背筋に走った。
反射的に自分の背後に氷の盾を張った。
直後、盾に重い衝撃が走り、ヒビが入る。
「いくら蒼天院君が相手でも、慌てて張った盾程度には負けはしない!」
そこには腕に水魔法を纏い拳を突き立てる五十嵐がいた。
「お前は、五十嵐 秀介?!何故ここにいる?!四津はどうした?!」
「とっくに倒したよ!」
(倒しただと?!四津は総合成績学年9位だぞ!それを倒したのか?いや、そこじゃない。いつ倒したんだ?!)
通常、リタイア者が出た場合はブザーが鳴りモニターに表示される。
(戦闘中だ。モニターに気付かないことはありえるが、ブザーを聞き逃すことは有り得ない!)
イレギュラーな事態に思考が高速で回る。
会場機器の故障すら脳裏に過りだしたが、蒼天院は気付いた。
(・・・いや、あの瞬間、白雲の竜巻の中にいた時だけは、外界と遮断されていた!つまり、賭けに勝ったと言った金剛 怜雄の言葉は挟み撃ちの状況を作ったことではなく、私たちに気取られることなく五十嵐が四津を倒したということか!!)
思惑に気付いた時にはもう遅かった。
反射的に張った盾では、全力を込めた一撃を受け止めるには脆過ぎた。
盾に入った亀裂から、水が溢れ出す。
「終わりだ蒼天院!」
「私は蒼天院 新だ!蒼天院の者として、高等部での初戦が敗北などあってはならない・・・!!」
蒼天院が有りっ丈を込めるが勢いは止まらない。
盾には穴が開き、拳が目前まで迫っていた。
全てを察した蒼天院の表情に笑みが浮かぶ。
「・・・流石、我がライバルの友人達だ!完敗である!」
やがて耐え切れなくなった盾は音を立てて崩壊し、蒼天院の顔面に水魔法を纏った拳が突き刺さった。
蒼天院が倒れると同時に、ブザーが響き渡る。
「1組の王の魔素が規定の数値を割ったため、試合終了!10組の勝利だ!」
刺島先生の勝利を告げる声とともに会場は拍手と歓声と歓喜に包まれ、初めての模擬魔法戦が終了した。
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