決勝戦6
いまだ暴れている心臓を落ち着ける為にゆっくりと深呼吸をした。
焦りは敵だと自分に言い聞かせ、頭を鎮める
白雲も呼吸を整え、口を開いた。
「とてつもない魔力の集まりを感じて急いで来たんだけど、間一髪だったね。」
「ああ、助かった。・・・しかし、なんてやつだ」
辺りには氷柱が立ち並び、先ほどの様相とは一変していた。
蒼天院の一撃で危うく試合終了になりかけていたが、白雲のとっさの助けにより窮地を脱することができた。
蒼天院が嬉しそうに笑みを浮かべながら拍手をしている。
「ふっふっふ、素晴らしいタイミングだったな。白雲 悠よ・・・。高所の理に固執し、助けるのが少しでも遅れていればチェックメイトだった・・・。流石の状況判断だ!それでこそ我がライバルよ!」
この上から目線の態度も虚飾ではないことが氷漬けになったフィールドが物語っている。
近くにいたリンの体内魔素を半分と逃げ遅れた相手のチームメイトを巻き込みんだとはいえ、10組は2名の仲間を失っていた。
先ほどまで人数有利でことを進めていた身としては、好ましいとは言えない状況だった。
「リンよ、まだやれるな?」
「もちろんです、新様!」
さらに言うと、先ほどまでいた2人よりもあのリンという従者1人の方が実力的に上だろう。
直撃コースから外れていたとはいえ、蒼天院の魔法を近距離で往なすのは簡単ではないだろう。
蒼天院の決め台詞に興奮して流していた鼻血が冷気で凍り、顔に張り付いているという間抜け極まりない姿だが油断はできない。
再度蒼天院からの一撃を警戒して距離をとる。
「それでどうする?一撃に賭けるのが現実的だと思うけど」
白雲が案を出してきた。
この状況になってしまっては、玉砕覚悟の一撃に賭けるのも悪くはない。
持久戦を挑んでも、白雲が倒された瞬間にバランスが崩れ成す術なくやられるだろう。
俺たち二人の全力で勝率は2割・・・いや1割くらいと見た方が良いだろう。
流石に分が悪すぎる。
賭けるなら今の全力ではなく、もう1人の力を信じて全力をぶつけたい。
「シュウが四津を倒して、加勢に来ることに賭ける」
白雲が少し苦い表情をする。
「もちろん秀介が来てくれるのは理想だけど、それでも・・・正直厳しいと思うよ」
白雲の考えは当然だ。
まずシュウが格上である四津を倒すのが難しいという点と、そもそもシュウが加勢に来て3人で立ち向かったとしても勝率は高くないだろう。
なら状況がこれ以上悪くなる前に一撃に賭けるのが最善に見える。
しかし相手もそんなことは見え透いているだろう。
実力差を実感した窮鼠は猫に一撃を入れる為に立ち向かうだろうと。
俺が同じ立場だったら、間違いなくそう考える。
そして相手の賭けに無慈悲な一撃を与えるだろう。
だからこそ、俺はその思考を利用してやる。
「俺に策がある。とてもシンプルだ・・・聞いてくれ」
作戦は、本当に単純なものだった。
相手に通用するのだろうか?
そもそもそんなことで状況が好転するのだろうか?
そんな不安を振り払うように力強く頷いた。
そんな2人の様子を蒼天院 新は何をするわけでもなく、ただ見ていた。
それは油断でもなければ驕りでもない。
蒼天院の人間は困難や障害を己の力で切り拓き続け、繁栄を重ねてきた。
立ちはだかる者は自身の力で薙ぎ倒す。
その力に恐れ、今では殆どの者が戦わずに頭を垂れる。
それこそがこの世界で君臨し続ける蒼天院財閥の方途だと信じている。
そんな蒼天院の力を恐れずに現れた2人に、心の中で感謝と敬意を表した。
「愚かですね。力の差が分からないとは」
「・・・リン、私を失望させるなよ。覚悟を持って立ちはだかる者に、愚かという言葉は相応しいとは到底思えないな」
「っ!大変失礼致しました!」
自らの失言にすぐさま頭を下げる。
「よい。それより油断するな。何か手を打ってくる-------!」
突如フィールドに大風が吹き荒ぶ。
蒼天院の声は白雲が発生させた竜巻と砂塵に飲まれ、かき消えた。




