決勝戦4
四津君が放つ空気弾を相殺しながら考える。
四津君は風魔法主体で戦うタイプではなくて、補助として使用し身体能力を向上させ近接戦闘を仕掛けてくるタイプと予想している。
まだ数回しか魔法を使ったところを見たこと無いが、確率は高い。
まず空気弾が僕の魔法で相殺できるレベルだという事と、7組と戦った時に身体能力を生かした戦い方をしていた事。
フィジカルに頼った相手なら、僕の水魔法に対処するのは難しい。
近接戦闘を主体にする以上、足元が滑る状況は嫌だろうからね。
「なんだかんだ僕の水魔法、汎用性高いかもなあ」
初めて魔法を発現させたときは大外れを引いたと思ってたけど、普通の水魔法だったらできないことも多い。
「何言ってんだ、魔法ってのは汎用性が高いもんだろ?」
独り言のつもりだったけど、四津君が反応してきた。
実は水と土の二属性発現していることは言えないし、適当に流しておこう。
「なんでもないよ。こっちの話」
「なんだそりゃ?」
何言ってんだと言いたげな表情の四津君が距離を詰めてくる。
「おっと、そうはさせないよ」
後ろに引きつつ、四津君の足に水魔法を放つ。
よく滑る僕の水魔法に足を取られ、勢いがつかないみたいだ。
流石の四津君も一旦停止する。
「おいおい、どうなってんだ?お前が単独で放った魔法がぬるぬるするってことは性質変化しているってことだよな?」
「どうだろうね?」
本当は水と土の複合だけど、一般的には二属性発現者は見つかってないから混乱するだろう。
「教えてくれてもいいだろ?せっかく同じ学年になったんだ。仲良くやろうぜ」
「仲良くするのは構わないけど、試合が終わってからね」
「そうピリピリするなって。ピースフルにいこうぜ」
まあどのみち僕の魔法については教えられないけど。
「俺のメンバー見てみろって。蒼天院は唯我独尊。リンはそんな蒼天院にしか興味なし。残りは協調性に欠けるときたもんだ。嫌になっちゃうよほんと」
随分と溜まってるみたいだ。
まあメンツが大分濃そうだから、わからなくもない。
「五十嵐は加勢に行かなくていいのか?もうリンが到着していると思うぞ?」
「それはこっちのセリフだよ。悠君も戦いに向かってるみたいだし、そっちの方が戦力的に厳しいと思うけど」
先ほどまで高台にいた悠君は既にいない。
僕が1対1を選択したことを見て、王たちの戦いに向かったのだろう。
つまり向こうは、4対3になっているわけだ。
もちろん、本音としては向こうに駆け付けたいけど。
「確かに人数では負けているな。本当なら向こうに合流する予定だったが・・・」
「だったが?」
帽子を上げ、四津君が鋭い目でこちらを見る。
「お前は得体が知れなさすぎる。もしお前が本当に性質変化しているレベルの魔法使いなら、俺一人で足止めしている今のこの時間は値千金ってわけだ。そうじゃないにしろ、イレギュラーな要素は潰しておきたいだろ?」
僕のことを思った以上に警戒してくれているみたいだ。
実際は性質変化するほど魔法を使い込んではいないけど、向こうから見たら僕は相当不気味らしい。
僕自身はまだ魔法を使い始めて3か月程度の人間なんだけどね。
その膨れ上がった警戒心を利用できないだろうか?
考えを巡らせていたその時、またしても歓声が上がる。
モニターを見た四津君が困ったような声を出す。
「こりゃ参ったね」
モニターには蒼天院に付いていたもう一人がリタイアになったことを知らせていた。
さらに、リンさんの体内魔素も半分くらいまで削られている。
「これは勝ったんじゃないか・・・え?!」
高揚感を感じたのも束の間、今度は影下君と猿堂のリタイアを告げる表示が出ていた。
学年で一番の体内魔素を誇る影下君がやられたのか・・・!
体内魔素と防御力は比例する。
つまり影下君はそう簡単にはやられることはない。
そんな彼がやられたってことは、結構きついんじゃないか?
猿堂もバカとはいえBランクだ。
そう簡単にはやられないはずだ。
「ふう、こっちも覚悟を決めた方が良さそうだな」
四津君が体制を低くし突撃の構えをとる。
突如として動き出した状況に、危機感を感じたみたいだ。
「同感だね」
最低限足止め、やれそうなら倒すくらいに考えていたが、止めだ。
ここは加勢に向かう方が良さそうだ。
僕も迎え撃つために、自分に出来る限界まで周囲の魔素を集める。
次の一手が勝負だ。
「行くぞ!」
四津君の周囲の魔素が巨大に膨れ上がり、風魔法が爆発する。
その勢いで四津君が突撃してきた。
影下君の速さだけを追求した感じとは違い、確かな攻撃性を感じる。
ここが勝負だ。
水弾を四津君に放つ。
四津は突撃する前に、考えていた。
(相手は性質変化するレベルだ。正面からぶつかったらまず俺が負ける)
そこで一つ策を張った。
全力を模した突撃はその実、一度方向を変えられるくらいの勢いに調整したのだ。
(初手の軌道に合わせて魔法を撃ってこい!)
いくら五十嵐の魔法発生速度が速かろうが、対して集中をしていない魔法など勢いでゴリ押せる。
四津の予想通り、目の前に水弾が飛んできた。
(よし!軌道を修正して、俺の勝ちだ!)
溜め込んでいた魔素を開放し、自身の軌道を捻じ曲げる。
ここ一番で最高の魔法コントロールができたことに内心で自身を褒め称える。
「もら・・・っ!??」
そして五十嵐に接触する刹那。
巨大な水弾に飲み込まれた。
四津は突如目の前に発現した魔法に、理解が追い付かない。
(なんでだ?!五十嵐の魔法はスカしただろ!)
「グッ!うおおおおおお・・・!」
一度は耐えた物の、水弾の勢いに押され吹き飛ばされた。
四津君が仰向けになり、フィールド上部のモニターを確認している。
自身のリタイアを確認して、ため息をついている。
賭けだったけど何とかなったな。
「あーあ。強すぎでしょ。あのスピードであの威力がでるかね・・・」
寝っ転がりながら四津君がぼやいている。
「四津君、僕を警戒しすぎたんだよ。気づいていないみたいだけど一発目は全く威力が出ていない魔法だったんだよ」
「何!?」
四津君が僕を必要以上に警戒したので、一つ罠を張った。
かなり威力の弱いスピード重視の魔法で一度けん制した。
そしたら、軌道を変えるという荒業でこちらとの距離を詰めてきて少し焦った。
「お前、じゃあ俺が最初から全力で正面切って突撃してきたらどうするつもりだったんだ?」
「・・・最初から全力で来られたら、どうなってたか分からなかったよ」
けん制という工程を挟んでいたから、魔法が間に合ったかどうかは微妙だ。
四津君がまた溜め息をついた。
「策に溺れて自滅したか・・・。まあなんだかんだ楽しかったぜ」
「・・・そうだね」
そう言うと四津君はダルそうに体を起き上がらせ、場外に出て行った。
危ない戦いだったけど何とかなってよかった・・・
疲れた体を叱責し、レオ達のもとに向かった。




