王取合戦3
1組対5組の試合を観戦するために観客席に来た。
「前の方の席空いてないねー」
「大分盛り上がってたみたいだからしょうがねえな。モニターもあるし後ろの方でも問題ねえだろ」
ここは我慢するしかないか。
「いがちゃーーーん!こっちこっちーーー!!」
埜上さんがすごい手を振ってきている。
「前の席開けておいたよー!!」
「ほんと?ありがとう助かるよ」
「はい、となりどーぞ」
丁度5人分取っておいてくれたみたいだ。
しかも最前列。
「この席どうしたの?」
「えへへ、クラスのみんなで代表の席確保しようって声賭けたんだ」
よく見たら最前列の周り、10組のクラスメイトで集まってるみたいだ。
「マジか、みんなありがとう」
これは本当にありがたい。
ここなら試合の様子がかなり分かりやすい。
「なに、良いってことよ。それよりノド乾いてないか?飲み物買ってきてやるよ」
「10組の代表には頑張ってもらいたいからな。・・・マジで」
「ああ、優勝する確率を少しでも上げられるならこれくらいお安い御用さ」
こんなに献身的に応援されるなんて、思ってもなかった。
これは間違いないな。
こいつら、とんでもないレベルで賭けてるな。
10組の男子はことごとくクズが集まってるから普通こんなことしない。
始まる前まで代表選手の暗殺を企てていた雉瀬と犬塚まで一緒になって応援しているのは不自然すぎる。
カマかけてみるか。
「いやー、実はさっき控室でふざけて遊んでたら足首ひねっちゃってさー。試合に影響が出るかもしれん」
「何ふざけてんだ五十嵐いいいいいいい!」
「3か月分の食券賭けてるんだぞ!どうしてくれんだてめえ!」
手のひら返すの早すぎだろ。
「もちろん嘘だぞ」
「全く、五十嵐はお茶目だなー」
「ははは、あまり驚かせないでくれよー」
先ほどの鬼気迫る態度から一転、温和な感じになる。
こいつら腹立つな。
「いがちゃん、始まるみたいだよ!」
フィールドをみると、1組と5組が入場していた。
お互いのクラスはすでにスタート位置についている。
『ウオオオオオオオオオオオオ!!!』
さっきは試合に集中していて気にする暇があまりなかったけど、観客席にいるとより熱気を感じられる。
そういえば、5組についてよく知らないな。
「ねえレオ、5組ってどんな選手がいるの?」
「5組は総合成績10位の中山がいるが、それ以外は大した事ねえな。前も言ったが、戦力差がありすぎだ」
「なるほどねー」
視線の先にはポニーテールが良く似合っている活発そうな女の子がいた。
総合成績10位の実力者がいてもレオの中では1組の勝利が揺るがないみたいだ。
「それではカウントダウンを始める」
審判が前に出る。
「3!2!1!始め!!!」
試合が始まると、再度歓声が上がる。
王は蒼天院君と中山さんみたいだ。
「お互い初動は中央高台を取りに行ったね」
「この遮蔽が多いステージでは高台を取れれば一方的に相手の位置を把握できる。当然の選択だな」
どうやら先ほどの僕たちとは違い、搦手無しの正攻法通しの戦いになりそうだ。
お互いのチームは3名ずつ中央を目指している。
「ん?あいつ、なにやろうとしてるんだ?」
1組の帽子をかぶった男子生徒が高台の足元で停止する。
すると突然風が吹き荒れて、3メートルもある高台にジャンプで直接登った。
「風魔法でジャンプの補助をしたみたい。あの一瞬で、凄い精度だよ」
同じ風魔法の使い手の悠君が言うならかなり凄そうだ。
「あいつはBランクの四津 国光だ。総合成績は9位だが高い魔法の操作性を有している。ハゲを帽子で隠しているらしい」
「・・・最後の情報はいらなかったかな」
あまり人のそういうところは触れないであげてほしい。
「蒼天院の大将、高台取ったぞー」
「ご苦労だ四津よ!さてと、高所の理はこちらの手の内だ。後は上からの情報を頼りに各個撃破するとしよう!」
これで5組は隠れたりすることが難しくなったな。
「みんな!中央は諦めて!場所がばれちゃうからなるべく固まって!」
中山さんの号令で散らばっていった人たちも引き返してきて密集形態をとる。
息はバッチリみたいだ。
しかし、高台を取られていることが不利ということは変わりない。
「大将ー!お相手二時の方向で密集してる。まとめて叩けるぞ!」
「なるほど。なら早く終わらせるとしようか」
高台を取った四津君以外は蒼天院君に合流し敵陣に踏み込んだ。
「蒼天院も出るんだね」
「俺たちは作戦を組んでいたが、なんの目的もなしに王が直接出るのは負け筋を作るようなもんだぞ」
王がやられれば勝負はそこで終了。
それを考えるなら、王はなるべく自陣にいるべきだろう。
「直接来るなら好都合!みんな集中攻撃!」
「分かった!」
中山さんの号令で5組は一斉に魔法を放つ。
風魔法、土魔法、火魔法が蒼天院君に襲い掛かる。
しかし。
「総員、迎え撃つぞ!」
「わかりました!」
1組も魔法で対抗する。
「なに?!1組は全員水魔法の使い手なのか?!」
迎え撃った4人からはすべて水魔法を放っていた。
「つまり最初に中央を取った四津君が風だから、風1水4ってことか」
「どういうつもりだ?さすがにバランスが悪すぎるだろ」
お互いの魔法がぶつかり合い、選手の頭上に大雨のように水が降り注ぐ。
魔法が相殺したことで、5組の中山さんが激をとばす。
「みんな!力を合わせれば相殺できることが分かったわ!ランクさはあってもチャンスがある!」
「クックック、残念だがもうチャンスはなくなったぞ?」
「なに?!」
「この蒼天院 新の力を見誤ったな?」
蒼天院君は攻撃が相殺されたのに自信満々の笑みを浮かべている。
「負け惜しみかしら?総合成績1位はまぐれだったんじゃないの?」
「ふふふ、まだ気付いていないのかな?君たちの体内魔素、どんどん減っているぞ?」
「えっ?!」
モニターを見ると、5組の選手の体内魔素が全員残り2/3ほどになっていた。
「な、なぜ?!水を被っただけでダメージなんて全く受けていないのに!」
「中山さん!あ、足元が!」
「・・・!なにこれ!?」
5組の選手の足元が凍り付いていた。
「これって、もしかして・・・!」
「私の水魔法の性質変化だ。私の水魔法は温度を氷点下まで下げることができる」
性質変化。
水、土、火、風という元々も魔法から文字通り性質が変化すること。
魔法の使い手によって細かく変わるが、蒼天院君のは温度が氷点下まで下がるみたいだ。
性質変化を起こしている人は、まだほとんどいないと聞いたことがある。
「う、嘘でしょ?こんなの1年で出来るレベルじゃないわ!これがBランクなんてありえない!」
「な、中山さん、足がもう動かないよ!」
5組の選手の足元は凍り付き、身動きが取れなくなっていた。
その間にも体が凍り付いて体内魔素がどんどん失われている。
「私の火魔法で溶かすわ!」
「悪いが、それはさせられないな」
先ほどまで高台にいた四津君がすでに5組の背後に回っていた。
「クックック、チェックメイト。というやつだ!」
「なんて強さなの・・・」
ピピー!
審判のホイッスルの音が響き渡る。
「5組の王の体内魔素が1/3を割ったため、1組の勝利です!」
『強すぎだろ!』
『これは10組やばいんじゃないか?』
『能力で言ったら圧倒的に1組だな』
周囲からの歓声とともに、観客からの話し声が耳に届く。
クラスメイト達が不安そうな顔をしている。
横にいるレオの顔も苦しい表情をしていた。
これは結構ピンチかも?
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