王取合戦1
時間が過ぎ、今日は待ちに待った模擬魔法戦本番だ。
僕、レオ、悠君、影下君、猿堂の代表5人は控室から試合会場に足を運んでいた。
「お前たちの出番だ。勝ち負けも当然大事だが、何よりも自分の力を出し切って悔いの残らないように!」
途中、様子を見に来てくれた刺島先生が激励をしてくれた。
普段は厳しい印象だけど、ちゃんと生徒思いなんだよな。
僕たちの試合はトーナメントの一戦目。
文字通り開幕戦だ。
試合場に続く手前のドアの前でレオが立ち止まる。
「初戦の7組だが、予定通りの作戦で行く。いいな」
みんな目を合わせ頷いた。
「にしても金剛、本当に可能なのか?」
代表に選ばれた後に作戦を聞かされた猿堂はまだ半信半疑といった感じだった。
「問題ない。影下のフィジカルなら問題なくやれる」
ふと隣を見ると影下君が不安そうな顔をしている。
これはちょっと話をしておこう。
「影下君、調子はどう?」
「こういう表舞台に立ったことないから緊張はしてる。でも俺が頼りにされてるんだ。全力でやれることをやるさ!」
以前の校舎裏で話した時のような自信のなさそうな目ではなく、覚悟が決まった目だ。
作戦のキーは影下君だからプレッシャーは感じているだろうけど、大丈夫そうだ。
ふと、レオが思い切ったようにみんなの前に手を出した。
まさか、あれか?
みんなで手を合わせてエイエイオーってやつか?
こんな似合わないことをするなんてまさか!?
「レオ、どうしたんだ!体調が悪いのに何で言わなかったんだ?!・・・いやお前、さては偽物か?!」
いつもダラダラして協調性が無いレオがこんなことするなんて体調不良か偽物以外ありえない!
「うるせえな!!!・・・チームとして、結束力はあった方が良いだろ!」
金髪ソフトモヒカンの180㎝もある見た目ヤンキーのレオは顔を少し赤くしていた。
なんか、意外だな。
みんなも少し驚いていたみたいだが、笑いながら手を重ねた。
レオが息を大きく吸い、
「お前ら!絶対勝つぞ!」
「「「 オー!!!! 」」」
みんな気合十分だ!
扉を開け、試合会場に入った。
『オオオオオオオオオオオ!!』
『10組出てきたぞおおおおおお!!』
『お前らに賭けたんだから絶対勝てよおおお!!!』
試合会場は予想していたよりもとてつもない熱気だった。
試合会場である第二魔法演習場はドーム型の野球場のような見た目で、観客席に囲まれる中に試合スペースがある。
その中心にいる僕たちを地鳴りのような歓声が包む。
中央の巨大なモニターにはそんな僕たちの姿が映し出されていた。
これで試合を詳細に観戦できるようにしているのか。
『オオオオオオオオオオオオオオオ!!』
また大きな歓声が上がった。
『7組頑張れええええ!!』
『大島あああああ、お前ならやれる!』
総合成績5位の大島率いる7組が来たみたいだ。
ウルフカットの爽やかな男がこちらに来て握手を求めてきた。
「君が代表の金剛君だね?僕は7組の代表の大島だ。正々堂々、悔いの残らない試合をしよう」
「ああ、正々堂々やろうぜ」
固く握手を交わす。
正々堂々か。
レオのやつ、わざと強調したな。
「それでは試合を始める。お互いの選手は所定の位置に着くように」
指示された場所に移動しながらフィールドを確認する。
広さは25メートル四方。
中央にある3メートルほどの高台は試合を俯瞰で見れるようになるから重要な立ち位置になる。
フィールドの至る所にある遮蔽物は、普通なら奇襲とかを警戒しなければいけないだろう。
でも今回は関係ない。
「それではカウントダウンを始める」
一度深呼吸をして、練習した自分の動きを脳内でイメージする。
大丈夫、行ける!
「3!2!1!始め!!!」
『うおおおおおおおおおおおおお!!!』
『10組頑張れーーー!!』
『7組負けるなーーーー!!』
会場の熱気が、歓声となって爆発した。
「行くぞ!遅れるなよ!」
「了解!」
僕たちは5人揃いながら、サイドを大回りするように敵陣に突っ込んだ。
『おい、あいつら何やってんだ?!』
『それは無茶だろう!』
『いや、戦力差が大きいからありなのかもしれないぞ!』
僕たちの初動を見てみんな驚いてるな。
それもそうだろう。
なにせ王であるレオも含めて全員で突撃を始めたのだから。
まずこのルールを聞いたときに思うことは、王を安全な場所に置いておくことだろう。
なにせ王がやられたらどれだけ元気が有り余ってても敗北になるのだから。
それを逆手に取る。
「なに!全員で動いているのか?」
「悪いね大島君!速攻で終わらせてもらうよ!」
「くっ!前線組、引き返せ!田辺、金剛を集中的に狙うぞ!」
大島君の号令で中央高台を取りに行った3人が急いで引き返してくる。
向こうは覚悟を決めて総力戦って感じだろう。
こっちにその気はないけどね!
「大島!今戻る・・・!ぐっ!」
戻ろうとする3人に空気弾が命中する。
「ごめんね、戻らせないよ!」
「くそ、邪魔をするな!」
この3人は悠君と猿堂の風魔法組で押さえてもらう。
大島君とその側近の周りに魔素が集まり始める。
でも遅い!
「あとは側近を僕が引き受ければ!」
「な、早い!」
僕の水弾が大島君を守っていた側近の田辺君に命中し怯む。
そして大島君の目の前まで肉薄していた影下君の姿がブレる。
「もらった」
「なんっ!??」
刹那。
大島君と影下君の姿が消えた。
おそらく7組は全員何が起きたのか分からないだろう。
きっと大島君も。
「大島!?どこだ!」
怯んでいた田辺君が慌てて姿を探している。
「これで終わりだ!!」
「!?」
レオが土魔法で放った3メートルはあろう巨大な岩が、フィールドの遥か後方に突き刺さった。
「ぼ、暴発か?いったい何を・・・?!」
「悪いがこれで俺たちの勝ちだ」
「ば、馬鹿を言うな!モニターを見てみろ!大島の体内魔素はほとんど削られていない!」
ピピー!!
審判のホイッスルの音が響く。
終わったか。
「判定により、勝者10組!」
突然の審判の試合終了宣言に、7組の選手だけでなく、会場でさえ戸惑いが広がっている。
『どういうことだ!?』
『まだ試合は終わってねえだろ!』
田辺君が声を荒げる。
「ふざけるな!大島の魔素はまだほとんど削られてすらいないんだぞ!誤審だ!」
「そうだな。だが、大島はルール違反を犯して退場になったんだ」
「た、退場?まさか!?」
側近がレオの放った岩に駆け寄る。
正確には、入場扉の前に刺さっている岩の前に。
「お、大島?!そこにいるのか?!」
「ぐ、すまない、影下が突撃してきて、体に衝撃が走ったと思った次の瞬間にはここに連れてこられていたんだ・・・」
大島君の力ない声が扉の向こうから聞こえる。
「10秒以上場外にいた選手は失格。これを利用させてもらった」
「な、なんだよそれ・・・フィールドからここまで20メートル以上あるんだぞ!」
「影下は体内魔素保有量が学年一位だ。瞬間的になら、肉眼で捉えるのが難しいくらいのスピードで動ける」
本来なら場外に出て時間稼ぎをするのを防ぐために存在しているルールだが、影下君のフィジカルでそれを強引に行ったのだ。
ようやく事態を把握した観客席にに再び熱気が戻る。
『すげええええ!全然見えなかったぜ?!』
『10組圧倒的じゃねえか!!』
『これはもう優勝間違いねえだろ!』
「ぐ・・・くそおおおおおおお!!!」
7組は今、猛烈に悔しいだろう。
ロクに魔法を繰り出す暇もなく勝負が終わったのだから。
こちらの動きが刺さって崩壊したとはいえ、7組は戦略的に動いていたように見える。
きっと僕たちみたいに練習をしていたんだろう。
「おい、五十嵐!」
突然、田辺君が僕に近づいてきた。
「お前の水魔法、早くて本当に驚いた。優勝しろよ」
「うん、ありがとう、頑張るよ!」
握手を交わす。
想像できないくらいの悔しさを押し殺しているんだろう。
震えている手の感触がしばらく手に残っていた。
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