わだかまり
刺島先生が教壇に立ち、朝礼が始まる。
「まずは開催が明後日に控えている模擬魔法戦についてだ」
早速来たか。
今日の連絡内容によって作戦を固めたり練り直したりする必要が出てくるからしっかり聞こう。
「模擬魔法戦にはいくつかのルールが存在するのはみな知っているだろう。今年の1年の模擬魔法戦のルールは・・・『王取合戦』に決定した」
よし、レオの読みが当たった!
このルールを軸に練習を進めていたから嬉しい展開だ!
「ルールは至ってシンプルだ。5対5のチーム戦。代表に選ばれた5人のうち1人を王として設定する。勝利条件は相手の王の体内魔素を1/3以下にすること。また悪質な時間稼ぎを防止するために10秒以上場外に出た場合、その時点でその選手は即退場になる」
つまり相手の王を魔法で集中攻撃して体内魔素を削ればオッケー。
逆にこっちの王を倒されないように守る必要がある。
攻守の割り振りがかなり大事になってくるルールだ。
「質問です。王以外の選手の体内魔素が1/3以下になったらどうなるんですか?」
「その場合は当該選手は退場になるが試合は続行だ。体内魔素は魔法耐性を得るための重要なファクターだ。模擬魔法戦はあくまでスポーツ。ケガをするリスクは極力減らさせてもらう」
当たり前だが安全第一ってことか。
僕も戦闘途中で体内魔素が切れて火魔法で直火焼きなんて御免だ。
「試合は第1演習場で行われる。1年生全員が試合を観戦するから、あまり恥ずかしい試合はしないよう気を引き締めることだ」
刺島先生が少し悪そうな笑みを浮かべる。
活躍すればヒーロー。
無様に負けたら学年の笑いものって感じか。
僕の噂を完全に消すために活躍したいところだ。
ところなのだが、いかんせん練習した作戦が汚すぎるんだよなあ。
あまり気が乗らないが勝つためだ。
「それでは質問が無ければ朝礼を終わりにする」
朝礼が終わり、レオと悠君で集まる。
「レオの予想大当たりだったね」
「ああ、これで残る問題は1組だけだな」
「1組をなんとかできれば優勝できそうだね」
初戦の7組は単純に戦力差があるし、チームで練習した作戦もある。
となると、残りの憂いは1組だけだ。
「そういえば白雲は蒼天院と付き合い長いんだろ?どんなやつなんだ?」
少しでも情報が欲しいと言った感じでレオが悠君に質問した。
腕を組み、悠君が考えている。
「新君は水魔法を発現しているよ。魔法に関してはそれ以外はあまり知らないかな。小学生のの頃から頭は良いし運動もできるし優等生って感じだったよ。後は中学生になってから変な喋り方をするようになったね」
どうやらあの喋り方はちゃんと中二病らしい。
「子供の頃から仲良かったんだ?」
「恥ずかしい話、僕は友達って呼べる人は新君だけだったんだ。だからよく一緒に遊んでいたんだ」
意外だ。
今の悠君はクラスの誰とでも話しているし、人気者と言ってもいいくらいだ。
「後知っていることは・・・・・・感情的になるとちょっとやり過ぎちゃうことがある、かな」
そう語る悠君が少し悲しそうな顔をした気がした。
キーンコーンカーンコーン。
「うーす、授業を始めるぞー」
社会の松岡先生が教室に入ってきて、話はそこで終わった。
一瞬、悠君が何か言いたそうな顔をしていたけど、結局何も言わずに席に戻った。
席に着き、先ほどの会話を思い出す。
・・・悠君の言い方、違和感があったな
『よく一緒に遊んでいた』
『魔法に関してはよく知らない』
同じ学校に通っていて仲も良かったのに、魔法に関してはよく知らない。
この世界に魔素が発見されたのが2年前。
タイミング的に魔法に関して知らないのはおかしい気がする。
そういえば、蒼天院が初めて教室に来た時に言ってたっけ。
『大ケガをしたと聞いた時にはどうなる事かと思ったが、息災そうで何よりだ』
悠君が大ケガをしていた事と関係があるのだろうか。
そして最後に言っていたこと。
『感情的になるとちょっとやり過ぎちゃうことがある、かな』
あの飄々としている蒼天院が感情的になる出来事が起こったということだろうか。
二人の会話を聞いていても、お互いに悪い感情を持っている感じはしない。
むしろ親友っていう雰囲気を感じる時すらある。
でもぎこちなさを感じる時もある。
他人の過去を詮索する気はないけど、一瞬見せた悠君の顔が少し心に残ってしまった。
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