注目の主
教室に向かう道中、蒼天院の騒がしさに気を取られて初戦の相手がどのクラスか見るのを忘れていたことに気づいた。
「悠君、初戦の相手ってどのクラスだった?」
「あはは、新君の勢いにやられて見てなかったでしょ?初戦は7組だったよ」
7組か。
どんなやつがいるのか全然わからないな。
「レオー、7組ってどんなクラスなの?戦力とか特徴とか」
こういうことは大体レオが知っているだろう。
「7組は正直そこまで警戒する必要はねえな。Bランクが2人でCランクが3人だ。注意としては総合成績5位の大島がいるくらいだな」
さすがの情報網だ。
僕のクラスの10組は、総合成績2位の悠君と6位のレオがいる。
さらに言えばBランクも5人揃っているから戦力差が明らかだ。
いくら5位がいるとはいえ負ける確率はかなり低そうだ。
「ちなみに大島は火魔法を発現している。もう1人のBランクのやつも火魔法を発現していたはずだからチームとしての単純な火力はあるな」
あくび混じりに話すレオの表情は退屈そうだ。
こんな顔をするってことは、レオの中ではまず負けることがないと結論付いているのだろう。
「じゃあ残りの1組と5組の方はどっちが勝ち上がると思う?」
「99%の確率で1組だろうな」
随分と大きく出たな
「その理由は?」
「戦力差がありすぎる。1組は学年1位の蒼天院含むBランクが3人のCランクが2人。対する5組はBランクが2人のCランクが3人だ」
「蒼天院の実力がほぼAランクっていう前評判が正しければ負けないってことね」
「そういうことだ。蒼天院が欠席なんてことが無い限り負けることはないだろうな」
結局は蒼天院率いる1組と、僕がいる10組の戦いになるってことか。
話していたら教室の前まで来ていた。
・・・なんか中が騒がしいな。
嫌な予感がしつつも扉を開けると、猿堂、雉瀬、犬塚の3バカが取っ組み合っていた。
「模擬魔法戦の最後の枠は、Bランクの猿堂様に決まってんだよ!」
「バランスが良いだけでBランクに滑り込んだ奴は黙ってろ!圧倒的スピードを持つ雉瀬様こそ最後の枠にふさわしい!」
「今のメンバーをよく見ろよ、パワーが足りてねえだろうが!つまりこの10組の最後のピースは犬塚様が適性だ!」
影下君が立候補したから、残りの枠が1人になり醜い争いが起こっているのか。
3人とも服や髪が荒れている。
無駄に長い時間争ってたんだろうな。
あ、やべ目が合った。
「おはよう五十嵐くぅん!模擬魔法戦の最後の枠は『Bランク』のこの猿堂に決まっているよなあ!」
「俺様と練習試合をしたお前なら、雉瀬がふさわしいと分るよなあ!」
「パワーが足りない!パワーが足りないよなあ!」
クソ、面倒くさい奴らに絡まれた。
こいつらも何で朝からそんなに元気なんだ。
蒼天院と言い、3バカと言い、今日は変なのによく絡まれるな。
「そんなに出たいの?理由は?」
理由くらいは聞いてやろう。
「ああ、ぜひ出たいんだ」
「もちろん理由は決まっている」
「模擬魔法戦で活躍して」
「「「女子にモテたいんだ・・・!」」」
どうせそんなことだろうと思ったよ。
まあメンバーや作戦を決めているのはレオだし、僕からは何もできないんだけどね。
横目でレオになんとかしろとアイコンタクトを送る。
「猿堂でもう提出したぞ」
「いよっしゃああああああ!」
「「くっそおおおおおお!」」
あっさりとした宣告に、歓喜の雄たけびと悲嘆の叫びが響き渡る。
「無駄に夢を見やがってこのカスどもが!今後は分を弁えて身の丈に合った生き方をするんだなあ!」
本当に仲が良いのか疑問になるほどの煽りだな。
「かくなる上は毒を盛るしかない・・・」
「放課後、理科室で劇薬を調合しよう・・・」
そんなことを言っているからお前ら3人はモテないんじゃないのか?
これ以上関わってもロクなことにならなそうだし、無視して席に着こう。
自分の席に移動すると、隣の席の埜上さんとクラスの女子二人がいた。
埜上さんがこっちに気付いた。
「あ、いがちゃんおはよー。模擬魔法戦頑張ってねー♪」
「おはよう埜上さん。優勝できるように頑張るよ」
すると隣にいた長身の黒髪ロングの女の子と、ちんまい黒髪ショートの女の子も話しかけてきた。
「五十嵐君、応援してるよ~」
「わ、私も応援してます・・・」
「あ、ありがとう、頑張るよ!」
埜上さん以外の女子に初めて話しかけられた。
ハレンチナンパスケベ野郎というねつ造された噂が立ってからクラスの女子からは村八分にされていたが、ようやく噂が消えてくれたか・・・!
「私10組の優勝に食券30枚も賭けたから、負けたら一か月ひもじい生活になっちゃうんだからね~」
「あ、そういうことですか・・・」
ただの賭け対象として応援されただけだった。
しょんぼり。
「わ、私は賭けてないですけど応援してます・・・」
「ごめんごめん、別に賭けとか関係なしに応援してるからね!」
表情に出てしまっていたのか慰められてしまった。
うーん、話しかけられたは良いがクラスの女子と交流がなさ過ぎて二人の名前が分からん。
えっと確か魔法演習試験の時にいた気がするんだけど・・・
「席に着け、朝礼を始める」
良いタイミングで刺島先生が来てくれた。
全く名前が出てこなかった。
後で埜上さんから名前を聞いておこう。
しかし、今まで話しかけられる気配すらなかったけど、急に話しかけられたな。
僕が思っているより模擬魔法戦の代表に選ばれるのは注目度が高いのかもしれない。
もともとやる気は高かったけど、さらに出てきたぞ!
この調子で過去の噂を消し去ろう!
模擬魔法戦はもうすぐだ。
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