オッズ
「よおシュウ、魔素の取り込みは順調か?」
「おはようレオ。魔素の取り込みが上手くいきすぎて体が軽いくらいだよ」
魔素の取り込みは至って順調。
数日前より体が軽いのがはっきりわかる。
「なら良いが、その割には元気がなさそうだな」
「分かってて聞いてるだろ。全然魔法を撃ってないからフラストレーションが溜まってるんだよ」
「3日前のチーム練習では散々撃ってただろ」
「ここ2日間は撃ってないんだよ」
レオが呆れた顔をする。
「ったく、どんだけ魔法が好きなんだよ」
「僕はみんなが魔法の練習を毎日しないのが不思議でしょうがないよ」
僕からしてみたらこんな超常的な力が存在するのに、その練習に明け暮れる方が少数って意味が分からない。
「今日はもう対戦表が公開される日なんだ。やれることはやっといてくれよ」
「分かってるよ」
いよいよ明後日に控えた模擬魔法戦の対戦表が公開される。
碧水蒔高校に入って初めての模擬魔法戦は10クラスある中の4クラスで行われる。
実力的に厳しいと判断した6クラスが辞退という形だ。
逆に言えば参加を表明した4クラスは勝機があると判断して参加しているので実力はあるということだ。
そんなことを考えながら校門に差し掛かると、校門を抜けてすぐのところに人だかりが出来ていた。
人だかりの真ん中には巨大な電光掲示板が設置されている。
なんか告知でもあったのか?
「ねえレオ、今日って対戦表の公開される以外でなにかあったっけ?」
「いや、俺も分からねえ」
様子を伺っていると、後ろから声をかけられた。
「おはよう秀介とレオ君。・・・ってこれなんの集まり?」
「おはよう悠君。僕たちも今来たばかりだからわかんないや」
3人で掲示板に近づいてみる。
周囲にいる生徒たちからは一種の熱気が感じられる。
赤い髪をオールバックにした、どこか軽薄そうな雰囲気を出している生徒が電光掲示板の前で演説をしていた。
「さあさあ、1年の対戦表が公開されたよー!注目は総合成績学年1位でほぼAランクの実力と言ってもいい蒼天院 新がいる1組と、1年の最初の試験でBランクを5人も出した10組だ!賭けはお手持ちのスマホから!張った張った!!」
赤髪の男がセンスを片手に民衆を煽る。
これって、僕たちの模擬魔法戦の結果が賭けられてるのか?!
「ちょ、ちょっとレオ、こんな賭け事っていいの?」
「・・・教師が止めてないってことは黙認されてるんだろ。自由度の高い学校っていうのは分かっていたが、まさか賭け事が許可されているなんてな」
「でもこれ、よく見たらお金じゃなくて食券とか購買部の割引券が賭けられてるみたいだね」
悠君が指さす方を見ると『ポイント交換所はこちら』と書いてある。
そこには食券や割引券と引き換えにポイントを取得している生徒の列が出来ていた。
並んでいる生徒は1年生だけではなく、上級生の姿もかなり多い。
「おいシュウ見てみろよ。10組が1番人気らしいぜ」
レオが見ていた方の掲示板には
1番人気 1年10組 1.4倍
2番人気 1年1組 2.0倍
3番人気 1年5組 5.1倍
4番人気 1年7組 6.3倍
と写されていた。
「1.4倍って、10枚食券賭けて当てても14枚にしかならないってこと?そんなに僕たちのクラスって人気を集めてるの?」
「どうやら外野は俺たち10組と蒼天院が率いる1組でほぼ決着するとみてるみたいだな」
「そのようだな、幸薄き白雲 悠のクラスメイトよ!!」
突然会話に乱入してきた男はもちろん。
「おはよう新君。今日も元気だね」
突然の乱入者にも動じる様子を見せず、悠君が挨拶をした。
「もちろんだ!何せ我がライバルである白雲 悠と戦える日が近づいているのだ!血が昂るというものだ!」
蒼天院家の御曹司は朝でもお構いなしにテンションが高いみたいだ。
相変わらず銀髪に青のメッシュが入ったウェーブの髪に、改造された学校指定のブレザーをマントのようにして身にまとっている。
掲示板を見ていた蒼天院がニヒルな笑みを浮かべている。
「しかし、このオッズには些か疑問だな。我がライバルの白雲 悠がいるとはいえ、この私が所属するクラスに2倍のオッズが付くとはな」
「全くです。このような俗世の些事など気にする必要はないかと」
蒼天院 新の背後から、お団子頭で眼鏡をかけた女子生徒が現れた。
出てきたタイミング的に蒼天院の関係者だろう。
彼女の制服も秘書が着るようなスーツのように改造されていた。
「新様の輝かしい御威光はこのような低俗な数字で表されるなどありえません!!」
「そうだなリンよ!模擬魔法戦の結果で我が威光を示してやろうぞ!」
「その通りです!新様!」
「はーっはっはっは!!!」
高笑いを上げながら二人は校舎内に消えていった。
なんか面倒くさいのが増えた・・・
「彼女は新君の従者のリンさんだよ。新君と同じクラスに編入しているんだ」
「・・・そうなんだ」
あの勢いで来られてもマイペースな悠君は大物だな。
あの一瞬で僕はどっと疲れたよ。
レオを見ると僕と同じく疲れた顔をしている。
蒼天院 新だけでもおなか一杯なのに、その従者もいるとなると面倒くささも2倍だ。
模擬魔法戦が始まる前から少し気が重くなってしまった。
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