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そとにでてみた

オタクに優しいギャルは地球上に一人は存在していてほしい

「まだ引っ越してきたばかりで、この辺に何があるのかわからないですよね・・・。今日は時間があるので、このあたりを案内しましょうか?」


というロリっ子の好意に甘えて、近くを案内してもらった。


僕がいた部屋はアパートだった。

外に出て階段を下りアパートを見る。やや年季が入った様相はどこにでもあるような普通のアパートだ。

ロリに案内されるまま道を歩く。

舗装(ほそう)された道路で車が信号待ちをしていたり、カラスと猫が喧嘩していたり、主婦が井戸端会議で主人の愚痴を言い合っている。


(これ元居た世界と何が違うんだ?)


交通機関や動物、はたまた人間の様相まで元居た世界と変わらない。

外に出た方が異世界感なくなっていくってどういうことだよ。


「この辺りはコンビニやスーパーが近いのであるので意外に便利なんですよ。向こうの通りにはホームセンターもあるので、大体なんでも揃いますよ」

「・・・へぇ、そうんなんだ」


コンビニ、スーパー、ホームセンター。ここ数分の異世界感、ほぼ0だな・・・


大通りに入り少し歩いたところで看板に大きく「8」と書かれた建物についた。


「セブン・・・いやエイトか・・・」


こういう細かいところも似ているのか。

まぁ、今更驚きはしない。

この感じだと店内も大体一緒だろう。


部屋を出た際に感じていたワクワクは消え失せているが、落胆してもしょうがない。

とりあえずロリっ子にお礼は言っておかないと。


「ごめんね、案内してもらっちゃって」

「ごめんねじゃなくて、ありがとう、ですよ♪それに私の方が『お姉さん』なので、気を使わなくていいんですよ」

「・・・・・・ん?」


今なんて言った?お姉さん?このロリが?

どう見ても小学生にしか見えないんだけど。

もしかして揶揄(からか)われている?


「そういえば、今おいくつなんですか・・・?」


女性に年を聞くのはマナー違反だが、一応確認しておくことにした。


「私ですか?来月で23歳になりますよ」

「・・・っ、そうなんですね」


まさかの8つ上。

正直5つ下くらいだと思ってた。

目の前の少女にしか見えないお姉さんをじっと見てみるが、ギリギリ中学生に見えるかどうかである。


「あの・・・?」


しまった。またじっと見つめてしまっていた。

目の前のロリ・・・お姉さんが顔を赤らめていた。


「あ、すいません、いまお金を下ろしてきます!」


居たたまれなくなって、コンビニに逃げ込んだ。


自動ドアが開くと心地よい暖気が感じられた。


「いらっしゃっせー」


店内では愛想のよさそうなギャルっぽい店員が来店の挨拶をしながら品出しをしていた。

見た目とは違いテキパキとした動きで雑誌類の入れ替えをしている。

その背後を通り、ATMへ向かう。


「そういえば暗証番号知らないな。元の世界で使ってた番号入れてみるか・・・あ、合ってた」


残高はかなり潤沢にありそこそこ贅沢しても3年くらいは暮らせそうな金額が入っていた。

とはいえこの世界の金銭感覚が元居た世界と同じとも限らないし、慎重に使うべきだろう。


操作しながら、またこの世界について考える。


外の様子も元の世界とあまり変わらない。いや、全く変わらないと言っていいだろう。

このコンビニも名前こそ「エイト」と呼ばれているが、店内ではお弁当や飲み物、日用品も揃っていて、雑誌などの娯楽品もあれば公共料金の支払いもできるみたいだ。

店名以外で何が違うのか、探すのが難しいくらいだ。


当初の目的である家賃と当面の生活費を下ろして、店内を物色する。

小腹が空いたなと思いお弁当や飲み物を買い物かごに入れ、ついでになにか情報になるものは無いかと雑誌コーナーをうろついていた。

大量に積まれている少年漫画雑誌を発見し、読んでみる。


「お、流石に載っている漫画は全部知らないな」


王道そうなタイトルの漫画がたくさん載っているが、その全てが知らないものだった。


(漫画好きな僕としては全てが新鮮なものばかりだからこれは素直に嬉しい)


惜しむらくは転移前に好きだった漫画の続きが読めなくなったことだが、新しい出会いを大事にしようと切り替えた。

せっかくなので少年漫画雑誌もカゴに入れレジに向かおうとしたとき、なんとなく品出しをしているギャルに注意が行った。

その手に持っている本に、思考が停止した。


「生活に役立つ魔法20選」


は?魔法の本?こんなところに?


ふと我に返り、勢いよく手に取った。

勢いあまってギャルの手ごと取ってしまった。

突然手を取られたギャルが目を白黒させている。


「え?なになになに?ナンパ?あーしそういうの困るし、てか仕事中だしぃ・・・」


なにか言っているが、全然頭に入ってこない。

びっくりさせて申し訳ないが今はそれどころじゃない。


「すいません!ちょっとその本見せてもらってもいい?」

「え、ああこの本読みたかったってこと?はあ、びっくりしたし・・・はい、どーぞ」


少し落ち着いた様子のギャルから本を受け取り確認してみる。


(中は見れないか・・・!)


立ち読み防止用のシュリンクがあり中が見れない。

仕方なく見える範囲で本を観察しようと裏面を見ると「碧水蒔(へきすいじ)高等学校基礎魔法科監修」と書かれていた。

魔法科ということは、教えている学校が存在するのか!

思わぬ情報にテンションが上がる。しかし表紙だけではこれだけしか情報が読み取れない。

半ば奪い取るように本を手に取り、ギャルにお礼を言った。


「ありがとう!おかげでこの世界に希望が見えたよ!」

「そんなにこの本欲しかったのぉ!?それともやっぱりナンパだったり・・・?」


何故かもごもごしているギャルを尻目に、意気揚々とレジに向かって会計を済ませた。

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